山階鳥類研究所研究報告
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30 巻 , 1 号
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  • 佐藤 文男, 百瀬 邦和, 鶴見 みや古, 平岡 考, 三田村 あまね, 馬場 孝雄
    1998 年 30 巻 1 号 p. 1-21_1
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    現在,伊豆諸島鳥島で繁殖するアホウドリは約170つがいであるが,営巣地が不安定な地形にあるため繁殖率が低下している。本研究はアホウドリの個体数回復を促進させるために,より安定した場所に新しい営巣地を作ることを目的に行なった。
    予備調査として,1991年11月に鳥島燕崎のアホウドリ営巣地でデコイ10体と音声を用いてアホウドリを新営巣地で繁殖させるための誘致調査を行い,アホウドリがデコイと鳴き声に反応し,近づくことを確認した。引き続き,1992年4月に鳥島初寝崎の新営巣地予定地にデコイ16体を設置,音声を再生して誘致実験を4日間行なった。その結果,通常アホウドリが飛来しない地域で9個体のアホウドリをデコイ上空に飛来させるのに成功した。同年11月からはデコイ41体を継続設置した(音声なし)。
    これらの予備調査の結果を受け,1993年3月からはデコイを50体とし,太陽電池を用いた音声システムを併用,はじめてアホウドリ5個体(重複個体を除く)を新営巣地に着地させることに成功した。1993年の繁殖期から1996年にかけて誘致調査を継続させた結果,新営巣地への着地は重複個体を除き,1994年に5個体,1995年に29個体,1996年に41個体と増加した。また,年毎のアホウドリの滞在時間を示す滞留指数は,1993年:0.31,1994年:0.86,1995年:1.64,1996年:2.37となり4年間で7.6倍になった。アホウドリの着地は1993('92~'93)年にはデコイ区域に多く見られたが(78.9%),1994年からはデコイ区域の下部一帯に広がり,デコイ区域への着地数は1993年に比較し23.1%,1995年に8.3%,1996年には31.4%と減少した。この理由として1993年10月に音声システムの一部を変更し,スピーカーの向きを変更したことが考えられた。デコイ区域内に着地したアホウドリの着地地点と着地後に歩いて近寄ったデコイの型は成鳥型が多く,亜成鳥型は少なかった。また,音声との関係ではスピーカー近くの音量の大きい地域に着地地点が集中していた。着地したアホウドリは幼鳥•亜成鳥が多く,成鳥は少なかった。成鳥の着地は1996年の調査では41個体中4個体であった。着地個体の年齢は4•5•6齢が多く,1995年2~3月の調査では60%を占めていた。
    新営巣地では1993年に2個体によるディスプレイダンスが観察されたのを始め,1994年には複数回のダンスと夜間も滞留する個体が,1995年には特定の場所に長時間座る個体が確認された。さらに,1995年11月には6歳の雄と5歳の雌との営巣産卵が確認され,1996年2月には雛の艀化を確認,6月10日に巣立った。また,1996年11月にはデコイ地域で3つがいの巣作りが確認され,うち2つがいで産卵を確認した。初繁殖したアホウドリの年齢は,4歳11ヶ月(♀),5歳11ヶ月(♂)•6歳11ヶ月(♂)で,いずれも1990•1991年生まれであった。1990年生まれの個体は1994年1月から複数回観察されており,繁殖開始は飛来しはじめて2年から3年かかることが示唆された。これらの観察を通し、アホウドリはデコイを海上から確認して,上空に飛来し,デコイと音声の両方の効果により着地,その後,おもに音声効果によって滞留が促されていると考えられた。また,初寝崎で繁殖しているクロアシアホウドリの存在もアホウドリの定着に効果的に作用したと考えられた。
  • 長澤 和也, Vlastimil Baruš, 小城 春雄
    1998 年 30 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ベーリング海で表層流し網によって捕獲された海鳥類3種(ハイブトウミガラス,ウミガラス,エトピリカ)の胃から線虫 Contracaecum variegatum の第3期幼虫と第4期幼虫を見出し,その形態を記載した。エトピリカは C. variegatum の新宿主である。調べた海鳥はほとんどすべて個体が C. variegatum の寄生を比較的多数受けていた。他の海鳥類から記載された Contracaecum yamagutiC. variegatum の同種異名と考えられる。また,胃盲嚢部の形態が異常な Contracaecum sp. の成虫をウミガラスの胃から採集し,その形態を記載した。
  • 長澤 和也, Vlastimil Baruš, 小城 春雄
    1998 年 30 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ベーリング海で表層流し網によって捕獲された3種の海鳥類(ハシブトウミガラス,ウミガラス,エトピリカ)のうち,ハシブトウミガラスの胃に線虫 Stegophorus stellaepolaris の雌成虫が見出された。本報告では,本寄生虫に関する知見が少ないことから,雌成虫の形態を再記載するとともに,Stegophorus 属に含まれる他種との識別点を示した。また,その地理的分布や宿主範囲を総括した。
  • 新妻 靖章, 高橋 晃周, 澤田 真由美, 綿貫 豊
    1998 年 30 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    コシジロウミツバメは羽色,飾り羽において明瞭な性的二型は認められないため,外部計測値において雌雄の比較を試みた。調査は,1995年5月から9月に北海道東方沖の大黒島で行った。学養学的,生理学的研究のために犠牲にした,親鳥雄36,雌25個体について6箇所の外部計測を行った。その結果,翼長,最大と最小尾長は雌が雄よりも有意に長く,嘴長,嘴高,ふしょ長には雌雄間で有意な差は認められなかった。これら,6計測値を説明変数として,変数増加式の多変量線形判別分析を行うと,翼長と最小尾長が選択された。しかし,雄の判別率は77.8%(28/36),雌の判別率は80.0%(20/25)と判別率は低く,外部計測値から野外で確実に性判別を行うのは困難であると考えられた。
  • 黒木 麻希, 加藤 明子, 綿貫 豊, 高橋 晃周
    1998 年 30 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    Artificial nest boxes for burrow-nesting seabirds, Rhinoceros Auklet (Cerorhinca monocerata) were employed to study their breeding ecology easily and safely. Three types of nest boxes were set in the colony in Teuri Island in the northern part of Hokkaido. No detrimental effects on growth rate and fledging success rate were observed among the chicks raised in artificial nest boxes (growth rate: 8.34±1.42g d-1 in 1995 and 8.13±0.67g d-1 in 1996, mean±S. D., fledging success: 78.6% in 1995 and 88.5% in 1996) in comparison with those raised in natural burrows (growth rate: 8.14±1.47g d-1 in 1995 and 6.96±1.12 g d-1 in 1996, fledging success: 77.8% in 1995 and 75.0% in 1996). Although there were no apparent differences of occupation ratio between 3 types of artificial nest boxes, the plastic basket type was recommended as it has good ventilation and durability.
  • 河野 裕美
    1998 年 30 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    仲ノ神島のセグロアジサシ個体群では,毎年およそ1500~2500羽,或いはそれ以上の雛が巣立ち,1975年~1995年の間に,色彩の異常な3羽の幼鳥が見つかった。一般にセグロアジサシの幼鳥はほとんど全身が黒色羽に被われ,翼背面の羽毛の先端は淡色で,腹面はわずかに淡灰色を帯びている。また足と嘴は黒色で虹彩は褐色である。しかし,これらの3個体は,虹彩は普通の個体と同じ褐色で,足と嘴,羽毛が淡黄褐色~黄褐色であることから,メラニン中のイウメラニンを欠く黄褐色変(バフ変)(色素分裂)と考えられる。
  • 片山 實, 片山 慶子, 樋口 孝城
    1998 年 30 巻 1 号 p. 50-52
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    Adult male and female Red-breasted Flycatchers (Ficedula parva), and a fledgeling considered to be of the same species were observed at Nishioka Park in Sapporo City, Hokkaido, on July 5, 1997. The fledgeling appeared to have very recently left the nest. The adult female was holding a lepidopterous larva in her beak, and looking out for intruders without any sign of leaving the fledgeling. These facts suggest that breeding had probaby occurred, and this would be the first documented breeding record of this species in Japan.
  • 上田 恵介, 山岡 彩子
    1998 年 30 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    一夫多妻の種では,さえずりがつがい形成後の配偶者防衛に役立っているという仮説がある。著者らはこの仮説が一夫多妻のコヨシキリAcrocephalus bisttrigicepsにおいても成り立つかどうかを確かめるために,1992年に埼玉県浦和市大久保の荒川左岸の河川敷内にある水田地帯で,コヨシキリのさえずり活動についての調査を行った。この年は調査地に6羽のオスが渡来し,なわばりを持った。著者らはそのうちの4羽のオスを追跡し,各繁殖ステージごとに1時間を10分ごとに6つの単位に区切って,10分ごとにオスが何秒間さえずっているかのデータを取った。その結果,コヨシキリのオスは繁殖地に渡来してメスを獲得するまではさかんにさえずっているが,メスが入ると途端にさえずらなくなることがわかった。造巣期,つまり受精の可能性が最も高い時期にはオスはほとんど鳴かずに,常にメスにつきまとって配偶者防衛をおこなっていた。コヨシキリでは配偶者防衛はさえずりではなく直接的な追随行動によっておこなわれ,一方,さえずりは主に複なわばりにおいてメスを獲得するためにおこなわれていることが明らかになった。
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