山階鳥類研究所研究報告
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31 巻 , 2 号
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  • 黒沢 令子, アスキンズ ロバートA
    1999 年 31 巻 2 号 p. 63-79
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    森林の分断化に伴い,北米では森林の奥で繁殖し,熱帯地方に渡って越冬する種に繁殖成功率の低下が目立つ。林縁では巣の捕食と托卵が多く,分断化されて奥が浅くなった森林ではこれらの危険性が内部まで及ぶからである。日本の鳥類群集にもこのような林内だけに適応した鳥種がいるかどうかを明らかにするために,北日本(北海道)と中部(京都)の落葉広葉樹林の林縁と林内で鳥類の種数と密度の調査を行なった。分断化された森林で繁殖期に定点調査を行なった。見られた鳥のうちで数が多いものについて林縁指数を計算した(北海道;38種,京都;18種)。北海道で林縁より林内に多かった種に熱帯に渡る夏鳥のクロツグミ(Turdus cardis),センダイムシクイ(Phylloscopus coronatus),ツツドリ(Cuculus saturatus)がいた。京都では熱帯に渡る夏鳥の個体数は少なすぎて,林縁指数を計算できなかったため,解析には「希少種」としてまとめたグループに入れた。林内に個体数が多かったのは,アオバト(Sphenurus sieboldii)のを含んだ「希少種グループ」と,留鳥であるカケス(Garrulus glandarius),アオゲラ(Picus awokera),コジュケイ(Bambusicola thoracica)がいた。
    巣の捕食をする可能性のある鳥で一番数が多かったのはハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)で,北海道では林縁に,京都では反対に林内に多かった。北海道の森林で一番多い托卵鳥はツツドリだったが,林縁からの距離との有意な相関関係はみられず,托卵の寄主の分布と弱いが有意な相関が見られた。北米と異なって,日本の林縁で多いのはカラス類による巣の捕食の危険性であると考えられる。今後は林内種に対する林縁の危険性に焦点を当てた研究が必要である。
  • 鈴木 惟司, 川上 和人, 樋口 広芳
    1999 年 31 巻 2 号 p. 80-87
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    メグロApalopteron familiareは小笠原固有種(属)で絶滅危惧種とされている。本種の繁殖密度を推定するための簡便法を検討した。この方法は,通常あまり囀らないメグロが,早朝,日の出前の短時間だけ活発に囀るということを利用したものである。メグロの繁殖期の天気の良い早朝に,母島評議平御嶽神社周辺の調査地(車道なども含み,合計約3ha)内を,メグロの初囀記録後3-5分経ってから約20分間かけて移動•探索し,調査地内で囀るすべての個体を記録した。3シーズン延べ9日間の調査で得られた記録数は非常に安定していた(10-11羽)。これとは独立に個体識別とテリトリーマッピングに基づいて生息数を調べたところ,調査地内には調査シーズンにより11羽から12羽のオスが認められた。したがって調査地に生息するオスの検出率は約90%(mean±SD=88.6±4.6%,n=3)であった。ところで,囀りにより記録されたオスの中には独身であったり,一方つがいテリトリーを持って繁殖生活しているにもかかわらず囀りの認められないオスがいた。しかし本調査地(全域テリトリーで埋まる)では,それぞれの個体は共に生息オスの10%程度であり,それゆえ,早朝の一斉囀りによって記録される個体数は概ね繁殖つがい数を表わすものと見なせた。本報で述べた方法でメグロの繁殖個体群密度調査を行う際の利点は,比較的正確な繁殖つがい数推定値が得られる,簡便である,短期調査が可能,などである。欠点としては,調査時期が繁殖期に限られる,1日の中でも調査可能時間帯が限られる上,非常に短い(したがって一人が調査できる範囲が狭い),囀りだけを個体発見の手段とするので調査は好天の日に限られる,などである。
  • 伊藤 真, 小城 春雄
    1999 年 31 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    本研究は,4月下旬の津軽海峡においてハシボソミズナギドリの飛翔速度を船舶搭載レーダーにて計測し,この海域における本種の基本的飛翔能力を評価することを目的とした。ハシボソミズナギドリ7羽の平均飛翔速度は14.3±1.63(SD)m/sであり,Pennycuickによる理論的飛翔速度の計算結果との比較から,本種は最大飛翔距離速度Vmrに近い速度で飛翔していたと評価できた。これらの結果から,4月下旬の津軽海峡に飛来するハシボソミズナギドリは1)最大飛翔距離速度Vmrを達成できる飛翔能力を持つ,2)積極的な北上渡りの途中であるといえた。以上のことを踏まえ,ハシボソミズナギドリはさらに北に存在する良好な索餌海域へ至るための通路として津軽海峡を利用することが考えられた。
  • 亀田 佳代子
    1999 年 31 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ボルネオ島のマレーシアサラワク州において,これまで繁殖記録のなかったクリイロバンケンモドキの繁殖を観察したので報告する。1996年8月4日,ランビルヒル国立公園内にあるつり橋状のウォークウェイで,オスのクリイロバンケンモドキが枝をくわえてヒルギ科の樹冠付近に入るのが目撃された。8月7日にその木に巣があるのを発見し1羽が巣にいるのを確認したため,営巣が判明した。高さは地上約20mであり,営巣木である Carallia brachiata の樹冠付近には,数種のつる性植物が繁茂していた。巣は外側が小枝,内側には葉が敷かれており,近縁種の巣と似た構造であることがわかった。抱卵期にはオスメスが約1時間おきに抱卵しており,卵の形態や卵数は確認できなかった。8月28日には雛が確認され,9月2日には雛数は2羽であることが判明した。雛は9月6日には巣から歩いて枝に移動するのが見られた。翌7日には,頭の羽の色からオスメス1羽ずつであることがわかった。9月8日以降,雛は巣および営巣木からいなくなった。羽がほぼ生えそろっていたこと,歩いて巣から出ていたことなどから,巣立って他の場所に移動した可能性が高いと考えられた。育雛中の9月3日に終日観察を行ったところ,12回のエサ運びが観察され,雌雄が確認された10例は全てメスであった。しかし,巣作り,抱卵,および抱雛はオスも行っていたため,本種では雌雄とも何らかの形で子育てを分担していることがわかった。
  • 岡 奈理子
    1999 年 31 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    西日本の最大潟湖の一つ,宍道湖で,マダラウミスズメ西太平洋亜種Brachyaramphus marmoratus perdix(DNA分析の結果では独立種 Brachyramphus perdix: Friesen et al. 1996)が,1995年12月22日に2羽,1996年12月28日と翌1997年1月10日に各1羽づつの計4羽,水深3.5-4.0mに設置された3ヵ所の定置網で溺死し,発見された。1羽が生後約半年の幼鳥雄,残り3羽が冬羽の成熟雄であった。東太平洋に生息するB. m. marmoratusは外海沿岸域や内陸湖沼で越夏,越冬することが知られており,perdixも内陸で繁殖することが知られているが,内水面での記録はほとんど残されていない。中海では1939年に1個体が採集されている。水鳥の分布調査が比較的高頻度に行われているにもかかわらず宍道湖では本種の目視記録が残されておらず,1995~1997年の各越冬期の宍道湖と中海での羅網死個体数も,他の潜水性鳥種に比較して1-2桁少なかったため,この内水域での越冬個体数そのものは多くはないと推測される。perdixの総個体数は数万羽であり,主要越冬地が日本の浅水域であると予想されているが,分布の実態は不明である。漁業が与える個体群への影響を含めて日本での生息実態調査が望まれる。
  • 樋口 孝城, 広川 淳子, 浜田 強
    1999 年 31 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    Breeding of the Eastern Marsh Harrier (Circus spilonotus spilonotus Kaup 1847) was confirmed in the area along the Ishikari River in the Ishikari District, Hokkaido, Japan. Among the eight nests discovered during the 1988 breeding season, eggs were observed in three nests, and chick (s) were confirmed in three other nests. The remaining two nests had no eggs or chicks. One might have been examined before eggs were laid, and the other might have been abandoned. In addition, two other sites were considered to be probable breeding sites, though the nests could not be found. Breeding processes were not pursued because the confirmation of breeding was the main purpose of this investigation. It was noteworthy that two nests had been built of bamboo grasses on the ground amongst dwarf bamboo. The other six nests were built of reeds in reed marshes as is generally known.
  • 岡 奈理子, 高橋 晃周, 石川 宏治, 綿貫 豊
    1999 年 31 巻 2 号 p. 108-133
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    海鳥の油汚染死について世界各地で様々な事例報告がある。本稿はこれらの文献を広く渉猟し,1960年代から現在まで世界各地で発生した油汚染が起因する海鳥類の死亡状況を,1)非日常的な油汚染と,2)日常的な油汚染,に大別して報告した。1)非日常的な油汚染の原因は,船舶海難事故,パイプライン,オイルターミナルなどからの突発的な油の流出事故が挙げられるが,最も多いのが海難事故で,計43件がこれに起因した。近年では巨大タンカーの加入に伴い,一つの海難事故での流出が1970年代までの年間の流出量に匹敵する事態も起こっている。しかし,これまでも指摘されるように油流出量と海鳥死亡数との関係は弱く,1979年のノルウェーでの事例のように,たとえ流出が少量であっても発生時期や海域によっては海鳥に大きな被害を与えている。海鳥の総死亡数を高精度に推定するためには,海鳥の海岸漂着率と漂着後の消失率の二つのパラメータを加えた推計が必要となるが,実施例はいまだ少ない。油汚染が海鳥個体群へ与える個別の影響は,事故以前の個体群に関する生態情報の少なさが災いして評価を難しくしている。2)日常的な油汚染の原因は,油田•油貯蔵施設,船舶,パイプライン,工場などからの油を含む排水•廃油の投棄や漏出がある。海難事故などに比べ目に付きにくいが,多数の海鳥を死亡させてきたことが北海沿岸の西ヨーロッパでの経年の調査で判明している。海底油田とオイルターミナルがある北海北部では,例えば1978年のタンカー•エッソバーニシア号事故の際に海鳥約7,700羽が回収されたが,実はそのうちの半数以上がこのタンカー由来ではなく,日常的油汚染による死亡だったという事例も報告された。このような日常的な油汚染の発見には,海鳥の海岸センサスと漂着•付着油の成分分析が重要な役割を果たしている。日本では,日常的な油汚染による海鳥の被害の実態が不明であり,日本周辺で越冬する海鳥の分布と生態情報も限られている。油汚染の防止の強化と監視,および,油汚染の影響を受けやすい地域,海鳥個体群などを評価する前提となるべき,海鳥種ごとの分布•生態の基礎情報を集める必要がある。海鳥の個体群回復プログラムは,油汚染の因子を取り除くのみならず,漁網による死亡の減少,繁殖地での捕食者の除去,営巣環境の改善など,個体数の増加を制限している要因を幅広く考慮する必要がある。
  • 佐藤 仁志
    1999 年 31 巻 2 号 p. 134-141
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1997年1月,島根県沖を中心とした日本海において,油による海鳥被害が発生し,その概要について調査した。油の漂着は,島根県から福井県にまで及び,海鳥被害は島根県と鳥取県において発生した。島根県下全域を対象とした広域カウント調査では,1,761羽の被害鳥を確認した。予備調査や補足調査の結果から,実際にはこの数値を上回る甚大な海鳥被害が発生したものと考えられた。被災したのはウミスズメ科鳥類が1,646羽で全体の93.5%と大半を占め,種類ではウトウが1,326羽(75.3%)で最も多かった。被害にあったウトウの中に12羽の標識放鳥された個体が含まれており,11羽が北海道の天売島,1羽が宮城県の足島で標識放鳥されたものであった。
  • 鶴見 みや古, 岡 奈理子, 小野 宏治
    1999 年 31 巻 2 号 p. 142-200
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
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