山階鳥類研究所研究報告
Online ISSN : 1883-3659
Print ISSN : 0044-0183
ISSN-L : 0044-0183
33 巻 , 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 綿貫 豊, カーター ハリーR., ネルソン S.キム, 小野 宏治
    2002 年 33 巻 2 号 p. 59-60
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
  • カーター ハリーR., 小野 宏治, フリーズ ジョンN., 長谷川 博, 植田 睦之, 樋口 広芳, モイヤー ジャックT., チャン リ ...
    2002 年 33 巻 2 号 p. 61-87_1
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    我々は伊豆諸島におけるカンムリウミスズメの繁殖や保全について、さまざまな資料を集めて検討した。1835年に種が記載された後、伊豆諸島では1877年にはじめて収集され,1901年に繁殖が初記載された。20世紀以後これまで,カンムリウミスズメは11の島々(鵜渡根島,新島,式根島,早島,神津島,恩馳島,祗苗島,三本岳,元根,小池根,鳥島)で繁殖が確認され,7つの島(大島,利島,地内島,三宅島,御蔵島,八丈島,八丈小島)では繁殖していないと思われた。一方,7つの島(銭洲,藺灘波島,青ヶ島,ベヨネーズ列岩,明神礁,スミス島,孀婦岩)では調査がおこなわれていない。個体群は鵜渡根島と三本岳の間,伊豆諸島北部を分布の中心としている。かつて伊豆諸島は本種の最も主要な繁殖地であると思われたが,20世紀半ば以降,個体群はつぎのような点から大きく減少してしまったと見ることができる。a)式根島や神津島ではすでに繁殖していないこと。b)三本岳ではいくつかの営巣環境が失われていること。c)20世紀初頭において鵜渡根島や早島,三本岳における卵採集者によって伝えられたような大規模な営巣はもはや認あられないこと。d)大島~新島間のフェリー航路からの観察で,カンムリウミスズメは1983~89年と比べて,1990~95年には出現頻度がより低下したこと。現在,伊豆諸島では計350-850つがいが繁殖していると思われる(カンムリウミスズメ全体の推定個体数4,000~10,000羽,あるいは2,000~5,000つがいのうちの7~43%に相当)。そのうち主要な繁殖地は祗苗島(100~300つがい),恩馳島(75~150つがい),三本岳(75~100つがい),そして小池根(20~30つがい)である。最近の推定はないものの,このほかに,100~300つがいがその他の島々(鵜渡根島,新島,早島,鳥島)で営巣しているものと思われる。保全上の問題はつぎのことがあげられる。人間の居住,過去におこなわれた卵の採取,離礁でのレクリエーションフィッシング(磯釣り),移入動物による捕食,三本岳における爆撃演習による繁殖場所消失,人間活動による繁殖地の破壊,火山噴火による営巣環境の消失,カラス類やヘビ,ハヤブサによる相対的に高レベルでの捕食,そして刺し網漁業による死亡である。カンムリウミスズメは日本周辺に分布が限られており,ウミスズメ類のなかではもっとも希少であることから,伊豆諸島においてはさらなる調査やモニタリング,そして保全上の問題に対する評価をおこなっていくことが急務である。
  • ネルソン S.キム, 福田 佳弘, 岡 奈理子
    2002 年 33 巻 2 号 p. 88-106_1
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ハシナガウミスズメ(Brachyramphus perdix)は,日本鳥学会日本鳥類目録改訂第5,6版(1974,2000)ではマダラウミスズメの一亜種(B. marmoratus perdix)に分類される。北米西岸種マダラウミスズメBrachyramphus marmoratus m.より大型で,近年の分子生物学的分類手法によりアメリカ鳥学会では両種は同属別種に扱う。本論文では第1著者の所属するアメリカ鳥学会の分類手法を採用した。このハシナガウミスズメはアジアで最も稀で,しかも生態が知られていないウミスズメ科鳥類の一種である。本種は元来,東シベリアと北日本の遠隔地域の内陸に,他の海鳥類のような集団繁殖ではなく,個別に繁殖してきたことが原因して,Pallasが1811年にウミバト属Cepphus perdix(the Partridge Murrelet)と初記載して以後,生息地の成立の好適要件と生息個体数の状況調査がほとんど行われずにきた。このため蓄積された知見が極あて少なく,本種の広範囲な保護施策を考える際に,果たして本種個体群が,その繁殖南限域と考えうる地域で今もって残存しているかが関心事となってきた。
    私たちは,本種の繁殖期と越冬期の日本での海上と内陸での記録について,過去から最近までの文献資料を渉猟し,とりまとあた。1996~2001年には,道東の知床半島周辺の内陸部と海岸,および海上での目視,あるいは音声による調査を行った。野外調査期間中,本種はほとんど目撃されず,また文献資料の調査結果から,かって本種が繁殖したと考えられた地域(例えば東北地方,道東地方など)からほぼ絶滅した可能性が高いと考えられた。保護上の問題点,例えば,繁殖期に日本の往年の生息域から本種を一掃する要因になったと考えられる,刺し網漁,海岸周辺の原生林の伐採,油汚染,捕食について議論した。
  • 長 雄一, 綿貫 豊
    2002 年 33 巻 2 号 p. 107-141
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    北海道の海鳥類の保護及び研究を進めるために,既存の調査報告書を収集して,飛来数あるいは繁殖つがい数といった繁殖地サイズの動向と海鳥類の繁殖に対する人為的攪乱及び自然界での攪乱について分析を行った。
    北海道では少なくとも12種の海鳥類が繁殖している。繁殖規模の概数は,ウミガラス(Uriaaalge),10つがい以下;エトピリカ(Lunda cirrhata),15つがい;ケイマフリ(Cepphus carbo),100つがい;ウミスズメ(Synthliboramphus antiquus),20つがい以下;ウトウ(Cerorhinca monocerata),300,000つがい;オオセグロカモメ(Larus schistisagus),10,000つがい;ウミネコ(Larus crassirostris),30,000つがい;チシマウガラス(Phalacrocorax urile),25つがい;ウミウ(Phalacrocorax capillatus),3,000つがい;ヒメウ(Phalacrocorax pelagicus),10つがい;オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas),120つがい;コシジロウミツバメ(Oceanodroma leucorhoa),900,000つがいであった。その他にマダラウミスズメ(Brachyramphus perdix)の繁殖については不明である。
    天売島のウミガラス繁殖地にいた成鳥数は,1938年から1980年の間に年平均で12.2%ずつ減少しており,1981年から1994年の間には年平均で26.6%ずつ減少し,1998年には7つがいが確認されたに過ぎない。モユルリ島のウミガラスについて,その繁殖地にいた成鳥数は1965年から1985年までに年平均で24.8%ずつ減少したが,1985年以来飛来個体が確認されておらず,繁殖地が消失したと考える。さらにモユルリ島エトピリカ繁殖地周辺にいた成鳥数は1960年から1995年の間に年平均で10.0%ずつ減少しており,現在ではユルリ•モユルリ島を中心に15つがい前後が繁殖していると考えられる。ケイマフリでは,天売島において年平均8.8%ずつ,ユルリ島においては14.4%ずつ減少しており,北海道全体の生息数も100つがい程度と考えられることから,この減少傾向が続くと繁殖地の消失も考えられる。その一方で,モユルリ島のウトウ繁殖地サイズは1960年から1996年の間で年平均14.2%ずつ増加していた。過去30年間の間にオオセグロカモメは増加傾向にあると考えられたが,モユルリ島の繁殖地サイズは1982年から減少に転じ,1996年までで年平均7.0%ずつ減少していた。天売島のウミネコは,1980年代には3万つがいが営巣していたが,ネコ等の捕食により1990年代に半減した。その一方で利尻島のウミネコは1987年に新たな繁殖地が形成されて以来,年平均19.5%ずつ増加し,現在では1万つがい以上が営巣するに至っている。
    調査報告書に攪乱の記述のある繁殖地は14箇所であった。カモメ類あるいはカラス類による攪乱の記述があったのは12箇所,死因が漁網への混獲との記述があったのは8箇所,人為導入されたドブネズミ類あるいはネコによる攪乱の記述があったのは5箇所であった。
    日本の海鳥類繁殖地の多くは,鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律等によって保護されている。しかしながら,繁殖地周辺の採餌域あるいは越冬域といった場所は保護の対象となっていない。そのため,海鳥が混獲しにくい漁具を開発することや,繁殖地周辺での漁業活動を見直すこと,あるいは石油流出事故に対応するたあの体制構築の必要があろう。また,人間によって繁殖地に導入された,あるいは人間の出すゴミによって増加したドブネズミ,ネコ,カモメ類,カラス類等の影響について考える必要があろう。
  • リー キョン-ギュー, ウー ジェン-チイル
    2002 年 33 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    韓国済州島の北方,Sasudo島でのオオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)の繁殖数を推定するため,コドラート調査を2000年には抱卵期の前半,1998年には孵化期,1999年には育雛期前半に行った。巣穴密度は2000年には0.15±0.02/m2であった(平均±SE)。巣穴密度は放棄された畑など,岩石地帯および鳥の離陸場所で高く,調査した595巣のうち71.3%が使われていた。繁殖数は7,486±3,000つがいと見積もられた。巣穴利用率は,1998年には36.4%(353巣中),1999年には19.8%(140巣中)だった。巣穴利用率は繁殖の進行とともに低下するようであった。繁殖失敗が,1999年の8月7日から29日の間に54巣中31巣(57.4%)でみられた。これら失敗した31巣のうち26巣での失敗の原因はドブネズミ(Rattus norvegicus)による卵か雛の捕食であろうと推定された。これらより,この島ではドブネズミによる捕食がオオミズナギドリの繁殖成功を下げる主要因であろうと考えられた。
  • 梶田 学, 真野 徹, 佐藤 文男
    2002 年 33 巻 2 号 p. 148-167
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    南西諸島の中部に位置する沖縄島には亜種リュウキュウウグイスC.d.riukiuensis(Kuroda1925)のみが留鳥として繁殖分布すると考えられてきた。しかし,我々の調査により沖縄島に生息するウグイスには上面が褐色の褐色型と灰オリーブ褐色の灰緑色型の二型が含まれていることが判明した。これら二型間の生息時期及び形態の違いを明らかにし,分類学的扱いを検討するたあに沖縄島で捕獲調査を行った。その結果,褐色型が留鳥,灰緑色型が渡り性の越冬鳥であること,褐色型の方が灰緑色型よりも翼差が短く,鼻孔前端嘴峰長が長いなど13の形態形質中9形質に有意差が認められること,翼式にも型間で明確な違いがあること,多変量を用いた解析でも形態的な差が明確に認あられることなどが明らかになった。両型の測定値から作成した線形判別関数式(正判定率雄100.0%,雌96.9%)を用いてリュウキュウウグイスのタイプシリーズ(14標本)の判別を行った結果,全て灰緑色型に判別されたことに加え,測定値と羽色の類似性から灰緑色型はリュウキュウウグイスと同定され,越冬期のみに沖縄島に生息する渡り性の亜種であること,分類学上異名(synonym)の問題を持っていることが示された。一方,羽色の類似性から褐色型は絶滅したと考えられている南大東島の固有亜種ダイトウウグイスC.d.restrictaと推測され,線形判別関数式を用いてダイトウウグイスのタイプシリーズ(2標本)の判別を行った結果,いずれも褐色型に判別された。測定値や羽色の比較でも両者は良く一致した。以上のことから,褐色型はダイトウウグイスと同定され,南大東島のみでなく沖縄島にも留鳥として分布し,沖縄島では絶滅を免れていることなどが明らかとなった。
  • 廬 欣, 索郎 次仁
    2002 年 33 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    チベットヤマウズラ(Perdix hodgsoniae)のハビタット選択と群れサイズの変化を,チベットのラサ山地において1995年11月から1996年2月にかけて調査した。調査地内のハビタットは7タイプに分類され,晩秋から初冬(11~12月)にはチベットヤマウズラの群れは全てのタイプを利用していた。しかし晩冬(1~2月)になると,群れは南向きの斜面や農地に見られる3タイプのみでしか観察されなかった。バラ属の1種(Rosa sericea)やメギ属の1種(Berberis hemleyana)の優占したやぶのある川沿いが,秋冬を通じてもっとも好まれていた。ハビタット選択に影響している主要な要因は餌の利用可能量であると考えられた。チベットヤマウズラは日中にも川沿いの密なやぶの中で昼ねぐらをとっていた。また夜間のねぐらの多くはより標高の高い場所の,とりわけ北向き斜面の密な低木植生下の地上にあった。群れが観察される頻度は,晩秋から初冬には1時間あたり0.78羽であったが,晩冬には0.37羽と季節の進行とともに減少し,平均群れサイズも7.41羽から5.21羽へと変化した。
  • マハウルパタ ダルシャニー, マハウルパタ ターラカ, 中根 周歩, 藤井 格
    2002 年 33 巻 2 号 p. 176-188
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    日本の西部に位置する八田原ダム湖に越冬するマガモ(Anas platyrhynchos)の日中アクティビティーバジェットについて,2000年11月から2001年3月にかけて調査を行った。マガモは休息,羽繕い,移動にそれぞれ時間にして67.9,16.0,14.7%を費やしていた。採食,警戒,敵対行動,求愛行動に費やす時間は,それぞれ時間にして1%よりも少なかった。行動パターンは月ごとに変化し,明らかに湖の水位の減少と人による撹乱に反応していた。冬期の間を通してマガモの主要行動は休息であった。休息は日中および夕方に多く,移動行動と求愛行動は朝に一番多かった。マガモはダムに近く,ボート遊びをする人や釣り人の入ってこない場所を日中の休息に利用していた。日中は人による撹乱のため近寄ることのできない浅瀬を,夜間には採食に利用していた。12月から1月にかけて湖の水位は急激に減少し,採食場である浅瀬は干上がった。マガモはダム湖を夕暮れに離れ,ダム湖に流入する本川に隣接する池に,採食のために移動した。池の面積の95%が2-3mの高さのヨシ(Pharagmites Australis)に覆われており,マガモには近寄りにくい場所であった。池の適切な管理によって,将来,八田原ダム湖は水鳥にとって恵まれた生育地になる可能性がある。
  • 菊地 元史, 石居 進
    2002 年 33 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    鳥類の性判別法として,性染色体上に存在するCHD(chromodomain helicase DNA binding protein)遺伝子を解析する方法が有用である。トキ(Nipponia nippon)のZおよびW染色体上のそれぞれのCHD遺伝子について特定領域の塩基配列を決定した。両者の間には数箇所のヌクレオチドの変異が見られた。これにより,PCR法によって試料中のCHD遺伝子の特定領域を増幅し,そのPCR産物を制限酵素解析することによって性を判別する方法をトキにも応用できることが明らかとなった。この方法を用いて,1999年に中国より贈られたつがいのトキから,佐渡トキ保護センターにおいて,1999年,2000年に産まれた計3羽の雛の性判別を行なった。DNAの抽出のための試料として,羽軸に付着した細胞の他,孵化後の卵殻内に残された胚由来の組織が有効であった。
  • 黒田 長久
    2002 年 33 巻 2 号 p. 198-203
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    この第3報では,エジプトハゲワシとカンムリワシ(共に上野動物園提供)の各1体の二,三の筋肉所見を報告した。エジプトハゲワシは右前肢(翼)の筋肉図(背,腹面)を図示した。それは長翼型の鳥類の基本的筋肉系であった。大胸筋には帆翔性を示す大胸筋深部があった。
    カンムリワシでは,背面から見た筋肉系と右脚の脛筋分解図を示した。とくに宇回筋の腱と脛筋群との複雑な連繋が明らかとなった(但し各筋の腱は標本解剖上切断され各趾への連絡は確認できなかった)。また,本種は森林性,爬虫類食であり,森林上を帆翔はするが,長距離帆翔はしないことが,大胸筋の深部欠除(一般飛翔型)に示された。尚翼筋,脚筋の重量,体型測定も示した。
  • ブラジル マーク
    2002 年 33 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ハクチョウ(Cygnus)類においては,繁殖地の気候的条件,営巣から育雛までの繁殖期間が長期に渡ることなどの制約により,一腹の卵しか産まないのが普通である。コハクチョウのクラッチサイズは通常3~5卵,まれに2~6卵である。コハクチョウの繁殖のやり直しおよび2回目の繁殖はいずれも記録されていない。コハクチョウの子供は2冬目あるいはそれ以降の冬も数年間は親鳥とともに行動し,数回目の冬を迎えても親鳥と合流することがあるが,このような場合,その年生まれの若鳥とそれ以前に生まれた若鳥との間には,はっきりとした年齢の違いが見られる。大型の水鳥における集団育雛(brood amalgamation)はまれであり,アジアに生息するハクチョウ類では知られておらず,コハクチョウの場合,どの生息地でも確認されたことがない。
    2000年11月4日北海道稚内市大沼(45°20'N,142°E)で,12羽の雛を伴っているコハクチョウ成鳥のつがいが発見された。その日の午後は13:00~17:00頃までずっと,12羽の雛は明らかにこの2羽の成鳥とともに行動していた。また,このグループはひとつの家族として,大沼に生息するコハクチョウの中心的な群れとは異なる場所で採餌と休息を行なっていた。
    コハクチョウは,ハクチョウ類の中でももっともよく研究されているにもかかわらず,これまでに集団育雛が記録されたことはない。これは,何らかの点で,彼らの生態がこのような行動を抑止,あるいは少なくとも制限しているものと考えられる。したがって,野生コハクチョウのつがいが12羽の雛を伴っているのが観察されたことは例外的である。
    これまでに記録のある最大クラッチサイズが6卵であるとするならば,今回の観察は少なくとも,例外的に大きなクラッチ二腹の集団育雛ということになる。しかしながら,同じ場所,同じ年に6羽の雛からなる例外的に大きなクラッチが生まれる可能性はほとんどないので,おそらくこれは三腹あるいはそれ以上の集団育雛であると考えられる。12羽の雛はいずれもその年(2000年)生まれの若い個体で,月齢も近かったが,羽毛の灰色の程度に若干の違いが認められた。これは明らかに彼らが同腹でないことを示すものである。残念なことにこの観察は1日だけのものであるので,今回観察された集団育雛の関係が長期に渡るものであったかどうかは不明である。
  • ブラジル マーク
    2002 年 33 巻 2 号 p. 210-212
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    旧北亜区に広い分布を持つオオハクチョウ(Cygnus cygnus)は,ほぼ完全に植物食であり,さまざまな種類の植物を食することが記録されている。通常は,入り江や河口,川の流域,湖などの見通しの良い湿地,湿地の周辺や近接の原野,農地などで採餌するので,これまでに陸生の森林植物が食草になったという記録はない。
    1997年3月6日,東北海道の屈斜路湖(43°25'N,144°25'E)で越冬中のオオハクチョウを観察中,少数のオオハクチョウからなる群れが珍しい採餌行動をするのを観察した。この群れは,凍結していない湖岸の水面から岸に上がり,森に向かって数メートル歩いて行った。例年になく暖かな気候が続いたため,通常は地面を覆っている雪も融けており,このハクチョウたちは,ところどころ露出した林床で背の低いササsp.を食していた。おそらく,近寄りやすい場所にササがあったのと,枯れていないササの葉に引き寄せられたのだろう。北海道で冬期間,オオハクチョウが陸上で採餌するのはまれであり,森林で採餌するオオハクチョウが観察されるのも異例のことである。日本の北海道で観察されたこのオオハクチョウによるササの葉の採餌は,陸生の森林植物を採餌するオオハクチョウの初の観察記録であると考えられる。
feedback
Top