呈色溶液の色の濃淡を標準のものと比較して, その中に溶けている呈色物質の量を知る操作を比色分析と称している。これは古くから標準列法やツリ合イ法など, 色の違いを肉眼で比較する目視比色法として, 目的成分の量を定量する方法が行なわれてきた。標準列法とは, 定量しようとする物質を種々の濃度に含む標準呈色液の系列をつくっておき, それと同じ条件で呈色させた試料溶液の色の濃さが, 系列中のいずれに相当するかを比較して, 試料溶液の濃度を決定する定量方法である。これは, ネスラー管を用いるアンモニアの比色定量や酸塩基指示薬によるpHの比色測定などに応用されており, 後に述べるLambert-Beerの法則が成立しない呈色系に対しても適用できる利点がある。ツリ合イ法はLambert-Beerの法則に従う必要があり, 溶液の濃度は液層の厚さに反比例することから, 標準溶液と試料溶液との液層の厚さを変えて, 肉眼で見て同じ濃さになったときの厚さを測り, 比例式で濃度を求める。以上の方法に便利な装置として, ツリ合イ法にDuboscq比色計が, 標準列法にはUkena比色計が工夫されている。このUkena比色計は応用範囲が広いことから, 従来から理振法の備品として用いられてきた。しかし, 以上の呈色溶液を肉眼で比較観察する方法では, 色の濃淡の差を区別できる幅がかなり大きい上に, 観察者による個人差を生じやすく, 正確な分析は期待できなかった。これに対して原理は標準列法であるが, 光電池や光電管によって, 呈色溶液からの透過光の強さを光電流として読みとる光電比色計などが用いられるようになり, 上記の欠点が解決されてきた。これは肉眼による比色分析のように毎回標準溶液を用いなくても, 試料溶液が光を吸収する度合を直接測定することによって, 一種の絶対法としての定量ができるようになっている。このような広い意味の定量法を吸光光度法と称している。吸光光度法の特徴は微量成分を簡便迅速に定量できることにあって, 従来の重量分析や容量分析で, 0.1%以下の成分に対しては操作が困難で, 大きな誤差が伴っていたが, 吸光光度法では1∿10^<-4>%程度の微量成分の定量に適し, かつ測定操作も早く, 高い精度で分析できる利点がある。吸光光度法は, 呈色溶液の比色測定を電気的に行なう装置であるが, 測定のもとになる吸収波長だけを, フィルターを通して単色光線として取り出す方式のものを, とくに光電比色計という。近年, 取り扱いが簡便で, 迅速に正確な結果が得られ, 比較的低価格な光電比色計が高校理振品目にも追加され, これによって実験結果がより高い精度で得られるなど, 光電比色計のもっている特性を最大に教材に活用することによって, 一段と学習効果を高めることができるようになってきた。
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