かつては生命の神秘であった光合成の機構も近代科学によって漸くその様相が明らかにされつつありますが, ここでは筆者がその間に学びかつ体験したいくつかの事柄を中心として, 機構の解明と概念の展開の跡をたどってみたいと思います。光合成のように大きな体系になりますと, 個々のメカニズムも大切ですが, それよりも全体のつかみ方が重要です。今ではナンセンスと思われる考えも真面目に考えられた時期もありましたし, また思わぬ発見がそれ迄の理論を覆したこともありました。生物を取り扱っていますと, 人間の読みの浅さを思い知らされることが多くありますが, しかし究極的には人間の英智が問題を解明したことには間違いありません。
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