Berzeliusにより宇宙物質として, いん石に有機物の存在が認められて以来ちょうど150年が経過した。その起源については, 長い間多くの論争があったが, 現在ではいん石の有機物が地球外生命の名残りを示唆するものではなく, 我々の太陽系において非生物的反応により合成されたものと結論されている。更に星間空間や彗(すい)星に観測された有機分子, イオン, ラジカルが, いん石の有機物に深く関連していることが明らかになった。筆者らの研究室ではまた太陽星雲を起源とするいん石の有機物に, 星間雲を起源とする有機物が混ざり込んでいる可能性を指摘し, 太陽系が形成される以前に, 既に生成されていた有機分子が存在することを実証しはじめている。はるかな星間空間で観測された有機分子が, いん石を媒介物として今日まで生きながらえ, 我々の手元にあるという事実は2, 3年前までは想像もできないことであった。
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