化学と生物
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46 巻, 12 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 宮成 悠介, 臼田 信光, 土方 誠, 下遠野 邦忠
    2008 年 46 巻 12 号 p. 826-831
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
    C型肝炎ウイルス (HCV) は,持続感染して慢性肝炎を発症する.慢性肝炎から肝硬変を発症,肝がんに至る場合が多い.病態の進展にはウイルスが持続的に感染していることが重要である.つまり,ウイルス複製そのものが何らかの形で病態進行に関与していると考えられる.ウイルス複製の分子機構を理解することは,病気の発症の原因を理解するために重要である.さらには持続感染を遮断して,HCV感染を除去することによる病気の発症予防にもウイルス複製機構の解明は重要である.ここでは,HCV複製の生活環について最近明らかにされた点を中心に概説し,最後に肝発がんとウイルス複製との関連について述べる.
  • 岩崎 利泰, 緒方 裕光, 馬替 純二
    2008 年 46 巻 12 号 p. 832-840
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
    近年の人類の長寿化において放射線治療やX線診断など,放射線を用いた医療診断技術の発達が計り知れない貢献をしていることは言うまでもない.一方で,放射線は生物に対して様々な影響を及ぼすことが知られている.特に我が国では,世界で唯一の原爆被爆国である特異性から,ともすると放射線に対して不合理な恐怖心をもつ傾向があることが否めない.放射線の恩恵を享受するためには,その生物影響について正確な知識を社会で共有することが重要な課題となる.ここでは,放射線のリスク評価と放射線防護の観点から生物学的・疫学的な研究の現状と問題点を概説する.
  • 稲葉(伊東) 靖子, 齋藤 茂
    2008 年 46 巻 12 号 p. 841-849
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
    脱共役タンパク質UCPは6回膜貫通型のミトコンドリアキャリアタンパク質で,動植物に広く保存されている.哺乳動物の褐色脂肪細胞では,膜内外に形成されたプロトン濃度勾配エネルギーをUCP1が積極的に解消することにより非震え熱産生が誘導される.ここ数年,UCP1遺伝子の進化に関する研究が進展し,脊椎動物の系統においてUCP1遺伝子の発熱性の機能が獲得された進化過程が明らかになりつつある.一方,熱産生における植物UCPの役割は不明な点が多いが,発熱植物のミトコンドリアにはUCPが豊富に含まれており,熱産生との関わりが注目されている.ここでは著者らの研究を中心に,熱産生における動植物UCPの役割と適応進化による発熱機能獲得の経緯について概説する.
  • 吉本 尚子, 高橋 秀樹
    2008 年 46 巻 12 号 p. 850-858
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
    硫黄は生体反応に必要な様々な物質に含まれており,動植物の生育に不可欠な元素である.植物は無機硫黄を有機硫黄に同化する硫黄同化系を有するのに対し,動物は硫黄同化系をもたず植物が合成した硫黄代謝物を摂取して有機硫黄源として利用するため,植物の硫黄同化系は植物のみならず動物にとっても重要な代謝経路であるといえる.植物の硫黄同化に関与する遺伝子については,近年,ポストゲノム的手法を用いた研究によりイソ酵素群の機能分担の解明や,同化系の制御因子の同定が進んでいる.ここでは,植物の硫黄同化系とその制御について,モデル植物のシロイヌナズナを材料として進められた研究を中心に紹介する.
  • 須藤 正樹, 渡邉 修造, 稲垣 泰介
    2008 年 46 巻 12 号 p. 859-864
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
    創薬ハイスループットスクリーニング(HTS)は,多数のサンプルの測定処理能力を競う時代から,高質なリード化合物をいかにして導き出すかを工夫する時代に移ってきている.HTSを成功に導くための主な要素として,化合物ライブラリーをこれまでの経験に基づいて再構築すること,HTS評価系には標的分子だけでなく薬物動態,安全性,物性を測定できるものを組み入れること,およびヒット化合物からリード化合物を生み出す効率的なプロセスを構築することが重要である.
セミナー室
  • 都甲 潔
    2008 年 46 巻 12 号 p. 865-871
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
  • —大豆イソフラボンを中心に
    石見 佳子
    2008 年 46 巻 12 号 p. 872-878
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2011/06/06
    ジャーナル フリー
    骨粗しょう症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患と定義されている(NIHコンセンサス会議).遺伝的要因ばかりでなく環境要因(生活習慣)にも影響を受けることから,骨粗しょう症は生活習慣病の一つといえる.骨量は20歳頃にピークを迎え,その後加齢によってホルモンバランスが崩れたり,ミネラルの吸収能や運動量が低下することによって減少する.女性はおよそ50歳前後で閉経を迎えるが,閉経後10年間はエストロゲンの分泌低下により急速に骨量が減少する.一生涯のうちに約半数の女性が骨量と骨質の低下により骨折しやすい状態に陥り,骨粗しょう症と診断される.骨粗しょう症の予防において重要なことは,若年期に最大骨量を高めておくことと閉経後の骨量減少を抑えることである.
    アジアの女性は欧米人に比べ大腿骨頸部骨折の発症率が低いが,その理由の一つとして大豆製品の摂取量の違いがあげられている.大豆には様々な機能性成分が含まれているが,中でも弱いエストロゲン様作用を示すイソフラボンが骨の健康の維持に有効である可能性が示唆されている.本稿では骨粗しょう症の予防に有効な食習慣と運動に関して,特に大豆イソフラボンと運動の併用効果を中心に述べる.
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