化学と生物
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46 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 岩田 想
    2008 年 46 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    ヒト蛋白質の 30% 程度は膜蛋白質であり,医薬の多くはこれらの膜蛋白質をターゲットとしている.それにもかかわらず,これまでにたった130種類程度の膜蛋白質の立体構造しか明らかにされていない.特に,主要な医薬品のターゲットであるヒトG蛋白質共役受容体(GPCR)の構造は1つも解かれていなかった.しかし最近,ヒトβ2アドレナリン受容体の構造がようやく明らかにされた.ここでは,Kobilkaらがこの受容体の解析に用いた手法と著者らのERATO岩田ヒト膜受容体プロジェクトの取り組みとを比較しながら,ヒトGPCR構造解析の現状を解説する.
  • 本村 圭, 黒田 章夫
    2008 年 46 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    ポリリン酸は,リン酸が高エネルギーリン酸結合により1,000個近くつながった無機ポリマーである.これまで太古の生命活動の名残である“分子化石”とされていたが,近年その単純な構造からは想像できない多様な生理機能をもつ分子であることが明らかとなってきている.一方,その合成・蓄積の詳細な分子機構に関しては不明な点が残っている.しかし,緊縮応答因子やポリアミンなどポリリン酸蓄積に関与する因子とその作用が明らかになるとともに,細胞内リン酸濃度の恒常性とポリリン酸が密接に関連することがわかってきた.
  • 大動脈瘤研究はチャンスの宝庫
    青木 浩樹, 吉村 耕一, 松崎 益徳
    2008 年 46 巻 3 号 p. 180-186
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    医学が長足の進歩を遂げた今日にあっても,原因不明の疾患や決め手となる治療法を欠く疾患は数多い.一方,分子レベルで記述可能になった様々な生命現象が個体レベルでどのように関連しているかが今後の研究の方向性の一つであることは論をまたない.この両者の接点に位置するのが,いわゆるトランスレーショナル・リサーチである.ここでは,その一例として,大動脈瘤の研究動向を紹介する.大動脈瘤は原因不明かつ致死的な疾患で,現時点では薬物治療法が存在せず,従来は不可逆的な病態と考えられていた.最近著者らは,大動脈瘤の治療標的分子として c-Jun N-terminal kinase (JNK) を同定し,その阻害薬により大動脈瘤の治癒が可能であることを見いだしたので紹介し,あわせて研究フィールドとしての大動脈瘤について考察する.本解説をお読みいただいた方々が,医学研究の主要なテーマである病態解明と新たな治療法の開発に興味をもってくだされば幸いである.
  • 米山 忠克, 加藤 万里代, 西山 玲子, 安藤 祐子
    2008 年 46 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    20年前,茅野ら(1)は本誌に篩管による糖,アミノ酸,有機酸,無機イオンなどの栄養分の転流について解説している.その後,特異な生理機能をもつ機能性物質やシグナル(情報物質)が篩管を移行し,篩管内や生長・分化する器官や根において,いろいろな生理機能や遺伝子の発現を制御することがわかってきた.ここでは,篩管を移行する二次代謝産物,タンパク質,RNA,植物ホルモン,金属元素結合物質,そして器官の発達や養分吸収を制御するシグナル物質などを解説し,葉を中心とした植物全体の制御システムについて考察する.
  • 赤松 美紀, 藤川 真章, 中尾 和也, 清水 良
    2008 年 46 巻 3 号 p. 194-199
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    環境中に存在する化学物質のヒトに対するリスクを評価することは重要である.リスクは,化学物質そのものの毒性と曝露量,すなわち化学物質がどれだけ体内へ吸収されるかにより決まる.著者らは,化学物質のヒト体内における曝露量予測のために,人工脂質膜を用いた parallel artificial membrane permeation assay (PAMPA) により,化学物質の受動的膜透過性を予測する構造活性相関式を導いた.この人工脂質膜透過性から,小腸上皮細胞のモデル細胞であるCaco-2細胞透過性を予測することが可能であり,Caco-2細胞透過性から化学物質のヒト経口吸収性を予測することが可能となる.
セミナー室
プロダクトイノベーション
  • 山本(前田) 万里, 立花 宏文, 佐野 満昭
    2008 年 46 巻 3 号 p. 214-216
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    茶(Camellia sinensis L.)は,20~30% の水溶性成分(カテキン類(渋み),カフェイン(苦み),ビタミンB,C,テアニンなどのアミノ酸(旨み),フラボノイド,サポニン,食物繊維,微量金属類)と70~80% の不溶性成分(ビタミン A,D,E,食物繊維)を含み,薬用として何千年も使われてきた植物であり,同じ葉から不発酵茶(緑茶),発酵茶(烏龍茶,紅茶),後発酵茶(黒茶)を製造する.抗酸化,抗突然変異,抗腫瘍,抗がん転移,血圧上昇抑制,血糖上昇抑制,血小板凝集抑制,抗菌,抗ウイルス,腸内菌叢改善,抗う蝕性,消臭,脂質代謝改善作用などの機能性を有することが報告されており,特に,カテキン類の機能性については数多くの研究例がある.筆者らは,抗アレルギー作用をもつ茶成分を探索し,それを利用した食品開発を行なってきたので以下に紹介する.
学界の動き
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