化学と生物
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47 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 新たなα-グルコシダーゼ阻害剤の可能性
    高 鴻, 川端 潤
    2009 年 47 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    漢方生薬黄芩の主要フラボノイドであるバイカレイン(5,6,7-トリヒドロキシフラボン)は,消化管内で糖質の消化吸収を担っている α-グルコシダーゼ群のうち小腸スクラーゼに高い阻害活性を示す.構造活性相関研究の結果,6位のヒドロキシ基をアミノ基に変えたアナログでは阻害活性が数十倍上昇することが明らかとなり,そこから新たな α-グルコシダーゼ阻害剤のリード化合物 2-アミノレゾルシノールの発見へとつながった.
  • 新規ハイブリッド型酵素Steelyを中心として
    齊藤 玉緒
    2009 年 47 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    土壌微生物の細胞性粘菌 (Dictyostelium discoideum) はその単純な体制から,発生・分化のモデル生物として長年研究されてきた.しかし,2005年の全ゲノム読解終了は細胞性粘菌の研究に新たな局面をもたらした.細胞性粘菌ゲノムはその中に,これまでに知られているどの生物よりも豊富なポリケタイド合成酵素遺伝子をもつことが明らかになった.さらに,その中には天然のドメイン交換モデルになりうると考えられる構造をもつ新規ハイブリッド型ポリケタイド合成酵素も存在していた.この新規ハイブリッド型酵素の構造と機能はどうなっているのか.また「土壌」という環境中で,細胞性粘菌はどのようにポリケタイドあるいはポリケタイド合成酵素を使い,その巧みな生存戦略を展開しているのだろうか.
  • 遺伝統計学的課題
    口羽 文, 吉田 輝彦
    2009 年 47 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    2006年の Science に,“2007年に期待される分野”としてゲノム網羅的関連研究 (GWAS : Genome-Wide Association Studies) が取り上げられた(1).従来,common complex disease に関連する遺伝的素因の同定は網羅性・再現性の面で困難を極めていたが,2007年より,疾患感受性変異・多型の同定とそれらの検証に成功したGWASの結果が続々と発表されている(2~6).その一方で,このような研究で扱うデータの膨大さゆえ,研究デザインや統計学的解析方法,また結果の解釈について多くの課題と問題を提起している.
  • 難分解性化合物分解の総合職と専門職の場合
    大坪 嘉行, 永田 裕二, 津田 雅孝
    2009 年 47 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    この2~3年の間に,たいへん多くの環境細菌株の全ゲノム配列が解読された.これら細菌群は,モデル細菌や病原細菌には認められない多種多様な生物機能を発揮しており,同一属環境細菌の複数株のゲノム構造を比較することで,各株が示す固有の生物現象の理解が容易になるとともに,属レベルでゲノムの構成原理が明らかになりつつある.環境細菌は各種難分解性化合物分解能に優れている一般的特徴を有するが,ここでは,分解能に関して万能選手とスペシャリストである2つの環境細菌のゲノムを紹介する.
  • その発見と協調的な発現制御メカニズム
    岡田 憲典
    2009 年 47 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    植物は数多くの二次代謝産物を生産する.病原菌からの攻撃に対抗するための防御関連物質もその中に含まれるが,それらの生合成遺伝子は植物体のゲノム上に散らばって存在していることがほとんどである.しかし,ある種の抗菌性化合物の生合成遺伝子群が,植物ゲノム上でクラスター構造をとることが報告されている.最近,イネの抗菌性低分子化合物であるファイトアレキシンの生合成遺伝子群についても,ゲノム上でクラスターを形成することが明らかになった.植物ゲノム解読の進展に伴い,種々の植物で見いだされる防御関連物質の生合成遺伝子クラスターの存在は,さらに確実なものになりつつある.
セミナー室
  • 禹 済泰, 米澤 貴之, 永井 和夫
    2009 年 47 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
  • 吉田 浩一
    2009 年 47 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2009/01/01
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    BSE,残留農薬,偽装表示など,近年食品の品質問題や不祥事が相次いで起こっている中,消費者の食品に対する安全,おいしさ,機能性の追求はますます高まっている.その中でも「おいしさ」は,消費者の繰り返し購入を決定づける重要な要素の一つであり,また商品の再購入プロセスの確立が商品開発にかけた投資を利益に転換する企業戦略の一つであるとするならば,商品設計において消費者が受容するおいしさを満たすことは絶対条件となるわけである.しかし一方で,このおいしさを規定する要因は非常に複合的であり,また市場における競争の激化や技術開発の複雑化によって,これまでの少数の専門家や職人に頼った商品開発の意思決定が,多様化した消費者の知覚に必ずしも一致するものではなくなっている.そこで今日,消費者が感じるおいしさ,またはもう少し限定したところで商品のもつ官能特性について,よりシステマティックに,そして客観的な数量データとして測る手法が広く望まれている.
    こうした背景において,Alpha M.O.S社 (Toulouse,France) は,1993年にセンサーアレイとパターン認識技術を利用した Electronic Nose(電子嗅覚システム),2000年に Electronic Tongue(電子味覚システム)の開発に成功するなど,感覚的な特性を数値化する技術の発展に取り組んできた.こうしたセンサーを含めた機器分析手法にかかる需要は年々増え続けており,風味に関する客観的かつ再現性あるデータが,繰り返し続けられる商品開発の方向性の選択,決定を支援している.しかし,人の感覚の使い方をあまりに軽視するなど,分析データの解釈を安易に得ることだけに頼りすぎることで,商品のもつ風味,あるいはおいしさの視覚的なコミュニケーションツールとしてデータを機能させる意図とは反対に,実際の消費者の感覚とはかけ離れた結論が先行し,商品開発の失敗に導くこともある.
    本稿では,電子嗅覚システムの有する最新技術に加えて,おいしさに関連する官能分析を進める上で人の感覚との相互関係を見据えたその使い道を明らかにしたい.
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