「我民族が世界に雄飛するにはもっと大きく丈夫にならなければならない.然るに最近壮丁(若者—筆者注) の體格は益々低下しつつある……(中略)……これが對策としては榮養の知識を普及せしめ食事の改善を計ることが最も緊要であると信ずる.吾々がどうして生きてゐるか,又どうしたら健康を保ち天賦の能力を充分に發揮することが出来るかと云ふことは人生最大の問題であるに拘はらず,これを考慮するものが存外少なく,寧ろ食物などに頓着しないことを誇りとして居るものが多いことは遺憾の至りである」(原文のまま).
鈴木梅太郎先生(表1)ご逝去の2年前の,太平洋戦争勃発直前に執筆された啓発書
(1) 序文のこの一節から,自らを農芸化学者と号しつつも(図1),そしてわが国の生物化学の,ひいてはライフサイエンスの草分け的な存在と評されながらも,本質的には栄養学者・食品学者であられた先生の実像を推考し得るのである.
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