化学と生物
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48 巻, 1 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 超分子組織化を利用した次世代型ガン治療用光増感分子システムの構築を目指して
    新森 英之
    2010 年 48 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    高齢化社会が進むに伴い,現代病や生活習慣病などの疾患に対する予防や検査・診断,そして治療法の重要性が一層増してきている.特に最近は,死亡原因の高位を占めるガンに着目した診断や治療法に関する研究が盛んに行なわれている.その中で,比較的新しい手法として脚光を浴びているもののひとつに光増感物質を用いた光線力学的療法 (Photodynamic Therapy : PDT) という光治療がある.ここでは,PDTの科学的原理やこれまでの関連研究を解説しつつ,次世代に向けた新しいガン治療用光増感分子システムについて紹介する.
  • 藤井 重元, 澤 智裕, 赤池 孝章
    2010 年 48 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    これまで毒性物質ととらえられていた活性酸素が,細胞機能を変化させるシグナルとして機能していることがわかってきた.近年,巧妙に制御された細胞内活性酸素シグナルの受容と伝達の仕組みが次第に明らかになりつつある.生体内において活性酸素と一酸化窒素により生成する8-nitro-cGMPは,親電子性を有するユニークな特性をもった新規な二次メッセンジャーであり,活性酸素シグナル伝達において重要な役割を果たしている.
  • 大竹 久夫
    2010 年 48 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    リン資源枯渇の危機が忍び寄っている.リン資源が枯渇すれば,食糧はもとよりバイオマスもバイオ燃料も生産できなくなる.わが国はリン鉱石をまったく産出せず,国内で消費するリンの全量を輸入に頼っている.しかし,リン鉱石の枯渇と産出国によるリン資源の囲い込みは,わが国が海外からリン資源を確保することを年々難しくしている.もし十分なリン資源が確保できなくなれば,農業はもとより電子部品製造,金属表面加工,化学や食品工業などの広範な産業分野にも,深刻な影響が及ぶことだろう.このような事態に対処するためには,国内の未利用リン資源からリンを回収し再利用するシステムを早急に確立する必要がある.
  • 熊澤 茂則, 中村 純, 太田 敏郎, 矢崎 一史, 宮城 健, 福本 修一
    2010 年 48 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    健康食品素材として利用されているプロポリスは,ミツバチが植物の特定部位を集めてつくった樹脂状物質であり,採集される地域によりその含有成分が異なる.最近,未解明であった沖縄産プロポリスの起源植物が,分析化学と生物行動学的研究手法によりトウダイグサ科の常緑樹木オオバギと同定された.そして,このオオバギが高い抗菌活性と抗ガン活性を有していることも見いだされ,新たな有用植物資源としての可能性に期待がかけられている.
セミナー室
  • 由良 敬
    2010 年 48 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    「タンパク質の構造を決める」シリーズの第6回では,決定されたタンパク質の立体構造から機能を推定する方法について概観する.過去5回の解説では,タンパク質構造解析法の最前線が紹介されてきた.機能がすでによくわかっているタンパク質の立体構造を決定すると,そのタンパク質がどのように機能しているのかを化学的に理解することができるようになる.特に酵素の場合は,反応機構の詳細を明らかにできる.しかし近年,タンパク質の機能解析において,別のアプローチが登場してきた.ある生物種のゲノム全塩基配列を決定できるようになった結果,生物は新規のタンパク質をたくさんもっていることが明らかになった.このタンパク質がどのような機能をもっているのかを知るための手段のひとつとして,そのタンパク質の立体構造決定も行なわれている(構造ゲノミクス).新規タンパク質の機能を立体構造から推定しようという試みである.これは今までにない新しいアプローチであり,立体構造から機能を推定する問題として,構造バイオインフォマティクス研究者による挑戦が続いている.ここでは,タンパク質の立体構造からどのようにして機能を推定するのか,そしてどこに困難な点があるのかを紹介する.
  • 井上 嘉則, 山本 敦
    2010 年 48 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    昨今,『食の安全・安心』が叫ばれている.2007年末の冷凍餃子事件以降,食品偽装事件などの食に関する不安な事件が相次いで新聞の紙面を賑わせた.同時に,食品の管理体制や試験方法などに関する記事も増加し,科学とは縁遠い人々の間にも科学的評価の重要性が浸透してきているように思われる.食品分析においてはGC-MSやLC-MS/MSなどの高度な機器分析法が多用されているが,食品試料中には高度に夾雑物が含まれているため,分析の成否は前処理に大きく依存している.溶液化,抽出,分離,精製など,すべてが手を抜けない工程であり,高度な技術とともに熟練を要する分野である.また,工程も多段階であり,煩雑であるため,測定用試料が得られるまでに長時間を必要とする.したがって,多種多彩な要求や,年々増加する検体数に対応するためには,前処理の高度化,省力化,迅速化が重要な課題であると思われる.
    筆者らは,長年にわたりポリマー系分離剤の開発に携わってきた.開発したHPLCカラムや固相抽出剤は食品分析にも利用されてはいるものの,実際のところ食品分析に関しては門外漢である.しかし,前処理工程における精度や機能の向上は食品分析に限ることではなく他の分野においても共通の課題であり,固相抽出剤の高機能化は筆者らにとって重要な研究テーマの一つである.本稿では,ポリマー系固相抽出剤の高機能化に関して筆者らの知見をもとに概説するとともに,若干ではあるが筆者らが開発した固相抽出剤を用いた食品分析などへの応用についても併せて紹介する.
「化学と生物」文書館
プロダクトイノベーション
  • 自家培養表皮『ジェイス®』の開発
    畠 賢一郎
    2010 年 48 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    患者自身の細胞(自家細胞)を使った人工臓器の開発は,バイオテクノロジーの発展が医療に貢献するスキームの中で,技術的な詳細はともかく,最もわかりやすいもののひとつである.細胞培養の技術が進み,さまざまな細胞で培養方法が確立されてきた.細胞の機能はそのままに大量に増やすことができるようになったのである.ならば,それを使って移植用の人工臓器や組織をつくり出そうという考えは,それほど特別なものではない.事故や病気によって身体の一部が失われ,それが自らの組織再生能力で修復できないのなら,その患者の細胞を少し取り出して,それを細胞培養によってふやす.自分の細胞でつくられたものであるため,できあがったものは免疫拒絶を受けることなく移植部で生き続けることができる.
    再生医療の名のもと,生きた細胞を培養し患者治療に用いるという発想が急速に発展してきた.臓器移植などのこれまでの移植医療にまつわる課題を解決できるとの期待からである.自身の細胞を用いることで,免疫拒絶が回避できる.ドナーの存在を待つこともない.まさに究極の移植医療をつくり出す可能性に満ちている.筆者らは1990年代より,さまざまな培養細胞を用いた患者治療を行ない,多くの臨床的有用性を示してきた.その経験をふまえると,当時の技術レベルでも十分な治療効果を示すことができる疾患もあった.以来15年以上が経過した.以前にも増して,国内外を問わずさまざまな臓器や組織の再生が試みられている.最近ではこれに用いる究極の細胞としてiPS細胞が報告された.このことは,研究者のみでなく一般の市民にも知られる事実となっている.
    筆者らは,培養細胞を用いた医療の普及を目的に,さまざまな活動を行なってきた.本稿では,再生医療の普及を目指した産業化についてわれわれの経験を述べたい.また,その課題と将来展望をお示しできればと思っている.
農芸化学@High School
  • PCRプライマー設計の試み
    宇都宮 まなみ, 黒川 広樹, 清水 萌子, 坪川 桂子, 水上 春菜
    2010 年 48 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校で行なわれた本研究は,平成18(2006)年度日本農芸化学会大会(開催地 京都)から始まった高校生による第1回「ジュニア農芸化学会」において優秀ポスター賞を受賞した.現在,食中毒の未然防止や食品製造現場の安全性確保のため,PCR法による様々な高感度検出法が開発されている.本研究は,食品中の有害菌(サルモネラ菌)をPCR法で検出するため,それに必要なプライマー設計の問題点をDNAの構造との関連から考察した内容である.
バイオサイエンススコープ
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