化学と生物
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48 巻, 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 大野 博司, 長谷 耕二
    2010 年 48 巻 9 号 p. 602-607
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    M細胞はパイエル板などの腸管免疫組織を覆う上皮領域に存在する特殊な腸管上皮細胞である.M細胞は細菌などの腸内抗原を積極的に取り込んで腸管免疫組織に供給することで,腸管免疫応答の誘導に重要な役割を果たすと信じられてきた.しかし,その発見から30年以上にもかかわらず,その機能の分子メカニズムは不明であった.最近,M細胞上に発現する glycoprotein 2 という分子が,I型線毛をもつ細菌の受容体として腸管免疫応答誘導に重要な役割を担うことが発見された.
  • 国内産未利用資源によるアブラナ科野菜根こぶ病の防除
    村上 圭一, 後藤 逸男
    2010 年 48 巻 9 号 p. 608-613
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    近年,野菜栽培地帯で問題になっている連作障害の最も大きな原因は,土壌病害の発生によるものである.しかも土壌病害に対し有効な薬剤は少なく防除が困難であることから,農業上きわめて重要な病害になっている.また,土壌病害の発生は土壌環境悪化のシグナルであり,病害の出にくいような土壌環境をつくることが「これからの土づくり」と言える.ここでは,国内産未利用資源である「転炉スラグ」により土壌環境を制御し,土壌病害の発生を防ぐ革新的な現場技術について紹介する.
  • 酵素学的視点から
    邊見 久
    2010 年 48 巻 9 号 p. 614-621
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    アーキアの膜脂質は,同生物群をそれ以外の生物群,すなわちバクテリアとユーカリアから区別する明確な特徴の一つである.その構造および生合成機構は他生物の膜脂質のものとは大きく異なり,太古の生体膜の出現における意味合いや生物進化に果たした影響はきわめて興味深い.しだいに明らかになりつつあるアーキアの膜脂質生合成機構に関して,特に酵素学的な視点から,他生物との相違点,類似点を挙げつつ解説する.
  • 杉浦 実
    2010 年 48 巻 9 号 p. 622-629
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    果物や野菜に多く含まれているカロテノイド色素は強力な抗酸化作用を有するものが多く,近年の疫学研究から,がんや循環器系疾患,糖尿病などの生活習慣病リスクとの関連が数多く報告されている.一方,喫煙者や飲酒者では生体内において酸化ストレスが亢進していること,またこれらの生活習慣が様々な病気の危険因子になることがわかっているが,最近,喫煙や飲酒によってひき起こされる酸化ストレスに対してカロテノイドが有効なのではないかと考えられる疫学研究の結果が報告されるようになってきた.ここでは,喫煙・飲酒習慣と主要なカロテノイド6種の血中濃度との関連について解析した結果を紹介する.
セミナー室
  • 杉本 正信
    2010 年 48 巻 9 号 p. 630-636
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    ヒトをはじめとする多細胞生物では,体を構成する細胞(体細胞)はそれぞれの組織・器官に特異的な機能を分担している.体細胞は,体全体の統合性を乱さないように増殖し,その過程でやがて老化する有限寿命細胞である.卵子や精子のもととなる生殖細胞は例外で,無限増殖が可能な不死化細胞であり,子孫から子孫へと永遠の生命を継承する.がん細胞もまた例外である.がん細胞は元来有限寿命である体細胞に由来するが,不死化していて永遠に分裂を繰り返す能力を新たに獲得している.がん細胞は生体にとって何ら有益な機能を分担することなく,体全体の統制に従わず勝手に増殖し,最後は個体を死に追いやる.不死化以外にも,がん細胞は特有の性質をいろいろ有する.たとえば,病理学的に特徴的な形態,異常染色体,転移する能力,悪液質の分泌,特殊な腫瘍マーカーの発現などである.これらの中で,「不死化」は,がん細胞の最も本質的な特質である.
    細胞老化と不死化は表裏の関係にあり,この両方の現象にテロメアおよびテロメレースが深く関わっている.細胞が老化して死ぬか,不死化してがん細胞になるか,その分岐点には,テロメア・クライシスという重要な現象がある.今回は,テロメア・クライシスに焦点をあてながら,テロメアおよびテロメレースと発がんの関係について紹介する.
  • 王 敬銘, 伊藤 晋作, 浅見 忠男, 平山 隆志, 中嶋 正敏
    2010 年 48 巻 9 号 p. 637-642
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    植物ホルモンについて,今回はエチレン,ジベレリン,ジャスモン酸,ストリゴラクトンを対象とした制御剤とその応用について紹介する.これら植物ホルモンについては前回までに紹介したブラシノステロイド,オーキシンやアブシジン酸と比較して制御剤の種類や遺伝学への応用例も少ないことから,一度に掲載することにした.そのためスペース上の問題で十二分に説明されていないホルモンがあるが,その分制御剤については遺漏がないように各植物ホルモン制御剤の専門家に原稿を依頼した.以下,各植物ホルモンについて述べていく.
「化学と生物」文書館
生物コーナー
農芸化学@High School
  • 栗生 美紀, 山田 晶子, 山本 真弓
    2010 年 48 巻 9 号 p. 656-657
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究は,平成20(2008)年度日本農芸化学会大会(開催地 名古屋)において開催された高校生による第4回「ジュニア農芸化学会」で“優秀賞”を受賞した.生活排水や産業排水などの自然環境への拡散により,水質の悪化やヘドロの形成が進行している.かかる問題を低減するため,排出の法的規制や様々な手法が講じられてきたが,今も大きな社会的・環境的問題であることには変わりはない.本研究では,ヘドロを水質浄化に応用する独創的な視点から,その方法論の特徴と問題点を考察している.
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