化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
49 巻, 12 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 伊藤 拓水, 安藤 秀樹, 半田 宏
    2011 年 49 巻 12 号 p. 819-824
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    およそ半世紀前に鎮静剤として開発されたサリドマイドは,1960年代始めに催奇性が発覚し,一度,市場からの撤退を余儀なくされた.しかし,ハンセン病や血液癌の一種である多発性骨髄腫といった難病に対して著しい効果を有することから再び脚光を浴び,現在は厳しい統制を受けながらも,その処方が認可されている.このようにサリドマイドは,半世紀以上の歴史を有するきわめてよく知られた薬剤であるが,その催奇性メカニズムは長い間不明であった.最近になり,磁性ナノ微粒子(半田ビーズ)を用いたアフィニティ精製により,サリドマイド催奇性における主要な標的因子であるセレブロン(cereblon,CRBN)が単離・同定され,その分子機構が解明された.
  • 原田 尚志, 三沢 典彦
    2011 年 49 巻 12 号 p. 825-833
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    放線菌由来の生理活性物質の代表化合物群がポリケタイドとすると,植物でのそれはテルペン(terpenes ; イソプレノイド,テルペノイドとも呼ばれる)であり,本群は自然界で最も多様な(約40,000種からなる)化合物群を形成している.その中でも,C15 の基本骨格をもつセスキテルペンは7,000種以上の化合物群であり,多くの生理活性物質を含んでいる.ここでは,植物由来のセスキテルペンをはじめとするテルペンの生合成酵素について,大腸菌を用いた効率的機能解析システムを紹介するとともに,これによりその機能が明らかにされたテルペン生合成酵素遺伝子の実例を紹介する.
  • 塚田 祥文, 山口 紀子, 高橋 知之
    2011 年 49 巻 12 号 p. 834-842
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    過去の大気圏核実験やチェルノブイリ原子力発電所事故などにより環境中に放射性核種が放出され,すでに土壌にも存在していたが,2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故により大量の放射性核種が放出され,福島県を中心に甚大な汚染をもたらした.土壌に沈着した放射性核種は,作物を通して人体に移行するため,土壌中での動態や土壌から植物への移行の把握は被ばく線量評価上,重要な課題である.ここでは,土壌-作物系における放射性セシウムと放射性ストロンチウムの挙動を紹介するとともに,移行モデルの考え方と解析例を紹介する.
  • 加藤 雅也
    2011 年 49 巻 12 号 p. 843-851
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    カンキツ果実はキサントフィルを豊富に含有し,その含量・組成は,種間において非常に多様である.ウンシュウミカンに集積する β-クリプトキサンチンはキサントフィルの一種であり,生活習慣病の予防に役立つことが示されている.ここでは,ウンシュウミカンにおける β-クリプトキサンチンの集積メカニズムを,カロテノイド生合成・代謝分解に関わる遺伝子の発現様式から解説する.また,ウンシュウミカン以上に β-クリプトキサンチンを集積する新品種‘たまみ’の集積メカニズムについても紹介する.
セミナー室
  • 藤田 克昌
    2011 年 49 巻 12 号 p. 852-856
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    一般人のもつ科学者のイメージは白衣を着て顕微鏡を覗いている姿ではないだろうか.白衣を着て様々な化学薬品を取り扱い,未だ見ぬ世界を求めて顕微鏡を覗く.科学研究に欠かせないものとして光学顕微鏡が多くの場面で活躍してきた所以であろう.
    最近,その光学顕微鏡技術,特にバイオイメージングを目的とした顕微鏡技術に大きな進展が見られる.それも光学や物理学でなく,化学の手を借りて.その1つは超解像法と呼ばれる新しい手法である.光を使った顕微鏡は,光の波長より小さな物体の観察はできないとされてきた.しかし,近年,試料を染色する蛍光分子の特性をうまく利用し,この限界を超えることに成功した.また,もう1つ,試料を染色することなく観察できる手法の開発も進んでいる(1~3).生体分子と光との相互作用は小さいため,細胞や生体組織を観察する際はあらかじめ試料を染色しておく必要があった.しかし,近年,分光学的手法を駆使し,試料中の分子振動を利用して,試料の顕微鏡像をつくりだすことが可能になった(4)
    上記の2つの新しい顕微鏡は,光と観察対象の物理化学的な相互作用を積極的に利用し,これまでの光学顕微鏡の限界を超えることに成功した.今回は,光学技術を駆使するだけでは超えられなかった壁をいかにして超えたか,その原理を概説する.
  • 藤田 禎三
    2011 年 49 巻 12 号 p. 857-864
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
「化学と生物」文書館
緊急企画
  • 大学の被害状況と今後の防災指針
    色川 俊也
    2011 年 49 巻 12 号 p. 870-874
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル フリー
    平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,東北大学全体で約600棟の建物のうち,28棟(約4万m2)が危険と判定され使用不能となるなど,施設・設備関係概算合計で約800億円規模の膨大な被害をもたらした(写真1).本学では,平成16年4月の国立大学法人化に伴い,労働安全衛生法の適用をうける事業場として職場環境改善を推進するのと並行して,近い将来,高確率で発生すると予測されていた宮城県沖地震に備えて,耐震対策を進めてきた.震災前後で学内の複数の事業場(研究科,研究所)で職場巡視に同行してきた産業医の立場から,本学の被害状況と今後の防災対策について紹介する.
農芸化学@High School
鈴木梅太郎博士 ビタミンB1発見100周年祝典・記念シンポジウム
総目次
feedback
Top