化学と生物
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49 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 小野 知二, 村越 倫明
    2011 年 49 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    ラクトフェリンは乳由来の多機能性タンパク質である.最近,ラクトフェリン腸溶錠を用いたヒト臨床試験によって,内臓脂肪が有意に減少することが示された.ここでは,この新知見を中心に,従来から報告されているラクトフェリンと脂質代謝との関係について,細胞レベル,動物レベル,ヒトレベルに層別して概説するとともに,ラクトフェリン腸溶錠の内臓脂肪低減メカニズムについて考察を加える.
  • 中村 修一, 南野 徹
    2011 年 49 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    大腸菌やサルモネラ菌などの細菌は,「べん毛」と呼ばれる繊維状の運動器官をスクリューのように高速回転させて水中を泳ぐことにより,栄養が豊富で生育に適した温度やpHの環境に集まることができる.べん毛繊維を回転させているのは,繊維の根元に細胞膜に埋まって存在する「べん毛モーター」と呼ばれる直径約45 nmの回転分子モーターである.べん毛モーターは,細胞膜を隔てて形成される水素イオン(プロトン)の電気化学的ポテンシャル差を1秒間に約300回転の高速回転に変換し,その回転方向は環境中の化学物質などに反応して瞬時に切り替わる.ここでは,プロトン駆動型細菌べん毛モーターの構造と回転機構について,最新の研究内容を含めて紹介する.
  • 五十嵐 一衛, 柏木 敬子
    2011 年 49 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    ポリアミン(プトレスシン,スペルミジン,スペルミン)は細胞内に比較的多量(mMオーダー)に存在する細胞増殖必須因子である.主としてRNAと結合して存在するので,その作用は細胞増殖に関与する特定タンパク質の合成促進とリボソームの活性化による全体のタンパク質合成促進に基づいている.また,細胞障害が起こるとポリアミンはRNAから遊離し,活性酸素より強い毒性を示すアクロレイン(CH2=CH-CHO)を産生する.このアクロレインは,これまでバイオマーカーの存在しなかった脳梗塞の感度の良いマーカーとなった.このポリアミンおよびアクロレインの研究の現状を紹介する.
  • 神谷 典穂
    2011 年 49 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    限りある化石燃料の大量消費社会から持続可能な社会への転換に向けた取り組みの一環として,再生可能エネルギーの利用とそのための研究開発が積極的に進められている.なかでもセルロース系バイオマスを原料として,その糖化と発酵過程を経て生産されるバイオ燃料は,二酸化炭素の排出の抑制と食糧との競合の回避,未利用資源の活用の観点からも注目されているが,コストに見合うプロセスの構築に至っていない.ここでは,最近,新たなセルロース系溶剤として注目されているイオン液体を用いる酵素糖化プロセスの進展について,その周辺領域の動向と現状を解説する.
セミナー室
  • 大林 武, 木下 賢吾
    2011 年 49 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    配列解析技術の進展により,多くの生物種において生命の設計図であるゲノム配列が明らかにされ,生命を形づくる基本部品である遺伝子が網羅的に同定されてきている.しかし,塩基配列や遺伝子の有無だけではその生命を理解するには不十分であり,すべての遺伝子の機能とそれら遺伝子間の機能的関連を明らかにする必要がある.遺伝子の関係性には,転写因子と被制御遺伝子のような緩い繋がりもあれば,超分子複合体のサブユニットのようにいかなるときにもパートナーとして働く強い繋がりもある.機能パートナーの特定は,遺伝子機能を理解する上で必須であり,様々な実験が用いられるが,すべての可能な機能的関係をすべての遺伝子ペアに関して実験で検証することはきわめて困難である.そこで,計算による可能性の絞り込みの必要性が出てくる.ここでは,「様々な異なる状態で発現が連動する遺伝子群(共発現遺伝子群)は機能関連遺伝子群である」という発想に基づき,機能関連遺伝子の絞り込みの試みについて述べる.
「化学と生物」文書館
  • 堀田 国元, 佐々木 博
    2011 年 49 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    栄養価が高くヘルシーな食品として国際的にも受け入れられている納豆(糸引き納豆)は,大昔から明治時代まで,大豆を煮て稲藁苞に入れて保温し,稲藁の付着菌による自然醗酵に依存するという不衛生で不安定な方法でつくられていた.この方法に代わる近代的製造法が確立され,世に普及したのは,明治時代後半に澤村眞博士(東大農芸化学)が納豆は一菌種(Bacillus natto と命名)の働きによってできることを解明したことと,大正時代に半澤洵博士(北大農芸化学科応用菌学講座の開祖)が行なった実学的研究と普及活動によるところが大きい.半澤教授は,納豆菌の純粋培養と衛生的な容器を使用することが納豆を安定してつくるためのキーポイントと見抜き,経木(薄皮)を容器に用いる半澤式改良納豆製造法を確立した.そして,納豆容器改良会を組織し,また雑誌『納豆』を刊行して納豆製造業者を直接・間接に指導し,納豆博士と綽名された.さらに,半澤博士の指導を受けた三浦二郎氏(仙台市)が醗酵温度調節のために通気孔付きの納豆室(文化室と呼ばれた)を考案したことによって,安定した大量納豆製造の道が拓かれた.
    本稿では,以上の経緯について辿り,近代納豆の実現における応用菌学の貢献をクローズアップする.
農芸化学@High School
  • 赤松 将晴
    2011 年 49 巻 1 号 p. 63-65
    発行日: 2011/01/01
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,平成22(2010)年度日本農芸化学会大会(開催地 東京)での「ジュニア農芸化学会」において発表された.発表者は,校内の実習農場で謎の肉塊状の生物体を発見し,これを太歳と呼ばれる中国の伝説的な生物体との関係も視野に入れながら観察した.その結果,本生物体は粘菌である可能性が高いとの結論に達した.発表では,肉塊状の生物体というインパクトのある研究対象が参加者の注目を集めるとともに,それを可能な範囲で粘り強く観察した発表者の研究に対する姿勢が評価された.
バイオサイエンススコープ
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