化学と生物
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52 巻, 1 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 野副 朋子, 中西 啓仁, 西澤 直子
    2014 年 52 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル フリー
    鉄はすべての生物にとって必須な金属元素である.鉄は土壌中に豊富に存在するが,水に溶けにくく植物には利用されにくいため,植物は鉄を獲得するための戦略を進化させてきた.イネやトウモロコシなど主要な穀類の属するイネ科植物は「ムギネ酸類」と呼ばれるキレーターを根から分泌して土壌中の三価鉄を可溶化し,「鉄・ムギネ酸類」として吸収する.ムギネ酸類生合成酵素遺伝子の単離をはじめとして「鉄・ムギネ酸類」吸収トランスポーターの同定,鉄欠乏によって制御される遺伝子の発現にかかわるシス配列や転写因子など,イネ科植物の鉄獲得にかかわる分子が次々と明らかにされた.一方,ムギネ酸類を根圏へと分泌するトランスポーターの同定はなされておらず,残された最大の課題として国内外の多くの研究者がこのトランスポーターの発見にしのぎを削っていた.本稿では,筆者らが世界に先駆けてイネとオオムギから同定したムギネ酸類分泌トランスポーター「TOM1」について紹介するとともに,ムギネ酸類にかかわる遺伝子を用いた鉄欠乏耐性作物の創製に向けた取り組みについても解説する.
  • ソーマチンから見えてきたこと
    桝田 哲哉
    2014 年 52 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル フリー
    甘味は基本5味のなかで,最も親しみのある魅力的な味である.甘味を呈する食品は好んで食べられ,「甘いものは別腹」という現象も多くの人が経験している.しかしながら糖質の過剰摂取が生活習慣病や齲歯の一因と考えられているため,低カロリー甘味料の開発や,摂取後に血糖値の上昇を伴わない甘味料の開発が注目されている.新規甘味料の開発は,甘味物質の構造活性相関を土台にして,行われてきた背景がある.本稿では甘味タンパク質ソーマチンの甘味発現部位,構造活性相関を中心にほかの甘味タンパク質の知見を交え近年のトピックスについて概説する.
  • 阪本 龍司, 尾崎 嘉彦
    2014 年 52 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル フリー
    バイオマス利用による資源循環型社会の構築はバイオサイエンスに与えられた重要な課題である.木質系ハードバイオマスと比べ,ソフトバイオマスである食品加工残渣は結晶性が低く,比較的再利用しやすい利点をもつ.また,植物種により細胞壁多糖成分や二次代謝産物が異なることから,有用物質生産の出発素材として高いポテンシャルがある.一方で,細胞壁構造が多様であるため,各加工残渣の分解条件の最適化は煩雑であり,汎用性の高いプロセス開発が求められている.本稿では加工残渣の利用における現状と可能性を解説するとともに,最近注目を集めているマイクロ波処理による植物組織の分解法についても紹介する.
  • 平林 淳, 舘野 浩章
    2014 年 52 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル フリー
    先端糖鎖プロファイリング技術,レクチンマイクロアレイによってiPS細胞やES細胞などの未分化細胞を特徴づける新しい細胞表面マーカー,Hタイプ3 (Fucα1→2Galβ1→3GalNAcα-O-Ser/The) が見つかった.この糖鎖構造はシアロムチンの一種であるポドカリキシン上に発現していて,糖鎖の構造変化が未分化性と密接に関与することが示唆された.一方,この構造を特異的に認識するプローブとして,rBC2LCNという組換えレクチンが注目されている.抗体と異なり大腸菌で簡単に生産でき,小分子であるため分子改変も容易だからだ.再生医療におけるHタイプ3糖鎖の分子基盤とその活用,さらに新規未分化糖鎖プローブrBC2LCNに期待される分子育種の可能性について述べる.
  • 伊原 誠, 山下 敦子
    2014 年 52 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル フリー
    TRPチャネルは,同一のチャネル分子が,温度や浸透圧などの物理刺激,種々のリガンドなど多様な刺激に対して応答するという機能的特徴であるマルチモーダルな制御機構をもち,生体内においては,感覚受容からカルシウムホメオスタシス維持にまで広く関与することが明らかになっている.しかし,TRPチャネルがどのような仕組みで多様な刺激に応答できるのかは明らかになっていない.ここでは,筆者らが最近明らかにした,赤カビ病菌のTRPチャネル(TRPGz)を中心に,それが浸透圧や温度変化,酸化ストレスなどさまざまな刺激に応答できる仕組みについて紹介する.
セミナー室
農芸化学@High School
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