生物,特にヒトのような高等動物は体の仕組みが巧妙に整理されている.体は,構成する単位の小さいものから細胞,組織,臓器,器官と構成され,臓器一つをとってみても複雑ではあるが,組織という構成単位で美しく整列している.最近話題となっている再生医療は最小単位である細胞を用い,組織や臓器を作製することが最終目的であり,構成単位が乱れると患者に重篤な副作用を及ぼす.再生医療の考えの一つに組織工学があり,失った組織を細胞を用いることで構成させ,欠損組織を代替・再生させる.この考えのもと人工血管・人工心臓・人工骨・人工歯などの体内留置型医療機器が幅広く開発されてきている.しかし,これらの医療機器は再生というよりは代替の意味合いが強く,完全再生に至っていないため副作用を及ぼす.筆者らは,再生の答えが生体内に隠されており,生体を学ぶことにより解決策を生み出すのではないかと考えた.生体内には細胞の挙動を制御する分子として細胞外マトリックス (ECM:Extracellular matrix) が存在している.その中でもECMタンパク質をターゲットとし,ECMタンパク質を構成する小成分としてペプチドに着目した.本稿では,ペプチドアレイという機能性ペプチド探索ツールを用い,ある細胞には接着するが,ある細胞には接着しない細胞選択的に接着するペプチドを探索するいくつかの手法を紹介する.そして,ペプチドアレイを使用した探索手法を通し,ECM中に存在するペプチドと細胞選択性に関して考察し,ペプチドアレイ探索による生命現象の解釈と再生促進型医療機器開発の可能性に関して述べる.
抄録全体を表示