化学と生物
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52 巻, 7 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 酒井 信夫, 中村 里香, 中村 亮介, 安達 玲子, 手島 玲子
    2014 年 52 巻 7 号 p. 431-437
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    近年わが国では,加水分解コムギ(HWP:Hydrolyzed Wheat Protein)を含有する洗顔石鹸の長期使用により経皮・経粘膜的に感作され,コムギ製品の経口摂取により食物アレルギーを誘発する事例が数多く報告され,社会的に大きな問題となっている.第59回日本アレルギー学会秋季学術大会(2009年10月)において,特定の洗顔石鹸に含まれるHWP「グルパール19S(Glp19S)」による即時型コムギアレルギーの事例が,国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師らによって報告されて以来,患者数として通算2,163名の確実事例(2014年4月20日現在)が報告されている(参考:茶のしずく石鹸等による小麦アレルギー情報サイト).現在,日本アレルギー学会の「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」を中心としてHWPによるアレルギーの情報収集と分析,原因の解明研究,予後の調査が行われている.HWPアレルギーの臨床症状・病態に関する総説および解説などは委員会メンバーから報告されており,詳細は他稿に譲る.本稿では,国立医薬品食品衛生研究所において継続的に行われているHWPの抗原解析および安全性評価に関する研究として,①グルテンの加水分解によるネオエピトープの形成,②HWPを含まないコムギ製品の経口摂取によるアレルギー発症原因,③マウスを用いた経皮感作モデル実験系の構築,④HWPのプロファイル分析について,HWPが提示する感作性・惹起能について双方向の観点から概説する.
  • その歴史,現状,展望
    光田 展隆, 高木 優
    2014 年 52 巻 7 号 p. 438-446
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    一つで多くの遺伝子発現を制御する転写因子は,遺伝子組換え技術における操作対象として魅力的である.強力で短い転写抑制ドメインを転写因子のC末端(もしくはN末端)に付加したドミナントネガティブ体(キメラリプレッサー)を発現させる Chimeric REpressor gene-Silencing Technology (CRES-T) 法は,キメラリプレッサーが本来の転写因子の標的遺伝子の発現を抑制することによりノックアウト(多重変異体)同様の表現型を誘導する.CRES-T法はこれまでにモデル植物において機能が未知であった多くの転写因子の機能を明らかにしてきただけでなく,実用植物においても優れた形質を付与できたり,CRES-T法を適用した種子のライブラリーをスクリーニングすることにより環境ストレス耐性を示すCRES-Tラインを同定できたりすることがわかってきた.CRES-T法の作用原理はいまだよくわかっていないが,WD40タンパク質であるTOPLESSを介して,ヒストン脱アセチル化酵素を呼び寄せるという説が有力な仮説になっている.CRES-T法の表現型は基本的にノックアウト(の掛け合わせ)で再現でき,ノックアウトはNBT技術によって任意のものを比較的作りやすくなってきているので,NBT技術によってCRES-Tラインを再現し,導入遺伝子を戻し交配などによって抜くことにより,実質的に非組換え体としてCRES-Tラインを再現できる可能性がある.
  • 勝山 陽平
    2014 年 52 巻 7 号 p. 447-452
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    天然物は古くから医薬品等として重要な役割を担ってきた.近年の遺伝子組換え技術の進歩や天然物の生合成経路の情報の蓄積に伴い,遺伝子組換え技術を用いて微生物に新規化合物を生産させる試みが多くの研究者の手によって行われるようになった.このようなコンセプトはコンビナトリアル生合成と呼ばれている.本解説では酵素改変,mutasynthesisや微生物内での生合成経路の再構成などの手法を用いたコンビナトリアル生合成について解説し,そのためにどのような技術が用いられているか述べる.
  • 統合栄養科学へのモデルケース
    西川 禎一
    2014 年 52 巻 7 号 p. 453-459
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    抗老化あるいは生体防御賦活効果を有する食品因子の探索と機構究明に,線虫を実験動物として用いることの可否を検討した.栄養学研究の常識である被験物質の経口投与や体重変化の測定を可能にするため,新たな経口投与法を開発するとともに投影面積を体重の代替データとする方法を提案した.また,加齢に伴う日和見感染モデルとしても線虫を用いることができることを示した.本実験系を用いて寿命延長効果や生体防御賦活効果を有する細菌や食品因子を複数発見することができた.線虫は栄養学研究における代替実験動物たりえると考える.
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