「産業のビタミン」とも呼ばれる希土類元素(レアアース)は,さまざまなエレクトロニクス製品などの性能向上に必要不可欠な金属であることから,私たちの生活とかかわりが深い重要金属元素に数えられる.しかし,これまでレアアースが自然界において生態系や生物の生命活動にどのように関与するか,その生物学的意義はほとんど研究されていない.このようななか,近年,メタノールを唯一の炭素源として生育できる
Methylobacterium属細菌がレアアースを要求する新規なメタノール代謝系をもつことが見いだされ,そのメタノール代謝の鍵酵素がレアアースを補因子とする新規なメタノール脱水素酵素(MDH)であることが明らかとなった.またレアアースを要求する
Methylobacterium属細菌が自然界に普遍的に生息すること,さらには
Methylobacterium属細菌のみならず,根粒菌やメタン酸化細菌などからもレアアース依存的MDHの存在が報告されていることなど,レアアースを要求するC
1代謝系は単なる一部のメチロトローフ細菌群に限った性質ではなく,広く自然界に分布する一般的かつ基盤的代謝系である可能性が示されている.本解説では,この新規なレアアース依存的なメタノール代謝系について
M. extorquens AM1株を中心に解説し,鍵酵素レアアース依存型MDHの機能と新規なメタノール代謝系の生物学的意義について説明する.
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