化学と生物
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53 巻, 11 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 植物共生細菌たちがもつレアアース依存型C1代謝
    中川 智行, 三井 亮司, 谷 明生, 河合 啓一
    2015 年 53 巻 11 号 p. 744-750
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
    「産業のビタミン」とも呼ばれる希土類元素(レアアース)は,さまざまなエレクトロニクス製品などの性能向上に必要不可欠な金属であることから,私たちの生活とかかわりが深い重要金属元素に数えられる.しかし,これまでレアアースが自然界において生態系や生物の生命活動にどのように関与するか,その生物学的意義はほとんど研究されていない.このようななか,近年,メタノールを唯一の炭素源として生育できるMethylobacterium属細菌がレアアースを要求する新規なメタノール代謝系をもつことが見いだされ,そのメタノール代謝の鍵酵素がレアアースを補因子とする新規なメタノール脱水素酵素(MDH)であることが明らかとなった.またレアアースを要求するMethylobacterium属細菌が自然界に普遍的に生息すること,さらにはMethylobacterium属細菌のみならず,根粒菌やメタン酸化細菌などからもレアアース依存的MDHの存在が報告されていることなど,レアアースを要求するC1代謝系は単なる一部のメチロトローフ細菌群に限った性質ではなく,広く自然界に分布する一般的かつ基盤的代謝系である可能性が示されている.本解説では,この新規なレアアース依存的なメタノール代謝系についてM. extorquens AM1株を中心に解説し,鍵酵素レアアース依存型MDHの機能と新規なメタノール代謝系の生物学的意義について説明する.
  • その分子機構と老化との関連
    河野 恵子
    2015 年 53 巻 11 号 p. 751-755
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
    この世で最初の細胞が生まれたとき,そこには遺伝情報を司る核酸と,それを包み込む膜が存在したという.そうであれば,膜の損傷を修復する細胞創傷治癒機構は生命誕生の瞬間から必要とされただろう.細胞創傷治癒は進化的に保存された機構だが,その全貌を俯瞰するには至っていない.出芽酵母を用いて細胞創傷治癒機構に関与する遺伝子の網羅的同定を試みた結果,驚いたことに,細胞創傷治癒と分裂老化に関与する生物学的プロセスの多くは共通であり,細胞創傷治癒が分裂老化を導くことが示唆された.既知の細胞老化の原因であるSirtuin,テロメア,Tor,ミトコンドリア,プロテアソームなどの欠損に加え,細胞損傷治癒も細胞老化を促進する新たなメカニズムであると考えられる.
  • 栗原 新
    2015 年 53 巻 11 号 p. 756-762
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
    細菌は環境変化に応じて細胞間でコミュニケーションを行う.この結果,病原性の獲得やバイオフィルムの形成といった問題が生じる.細菌細胞間のコミュニケーションに必要なシグナル分子としてはN-アシル-L-ホモセリンラクトンなどが有名であるが,2004年以降新たなシグナル物質として,ポリアミンが注目を集めている.これまでに多くの細菌において,運動性細胞への分化,バイオフィルムの形成および分解,病原性の獲得がポリアミンによって仲介される細胞間コミュニケーションによって引き起こされることが報告されている.本稿では,近年の研究の進展をさまざまな細菌におけるポリアミン代謝系・輸送系・センサーについての遺伝学的・生化学的知見とともに概説する.
  • 山田 守, 赤田 倫治, 高坂 智之, 東 慶直, 星田 尚司, 松下 一信
    2015 年 53 巻 11 号 p. 763-773
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
    地球温暖化やその影響が顕在化し,CO2排出抑制につながる新たなエネルギー削減技術の開発が求められている.発酵産業においても同様で,耐熱性微生物を用いることによって省エネ型の高温発酵が可能になり,これが次世代型の発酵技術として期待される.その実現のため,安定な高温発酵系の構築に向けた基盤的情報として耐熱性発酵微生物のもつ耐熱性分子機構の把握は不可欠となる.
  • 佐藤 成見, 白須 未香, 東原 和成
    2015 年 53 巻 11 号 p. 774-781
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
    ムスクは,官能的で魅惑的な香りを有し,古代から人間社会で香料以上の役割を担ってきた.天然ムスクであるムスコンは現在希少であり,その代替となるべく多くの合成ムスク香料が開発されてきたが,なかには毒性を指摘されるものもあり,問題となっている.当研究室では,ムスコンの受容体をマウスやヒト,4種の霊長類で同定し,それらのさまざまなムスク香料に対する構造活性相関を調べた.ヒトのムスコン受容体であるOR5AN1の応答性は,私たちが実際にムスク香料を嗅いだときの感覚とよく一致しており,ヒトのムスクの匂い受容の鍵となる受容体であることがわかった.これらの結果は,より良い新規ムスク香料の開発に貢献すると期待される.
セミナー室
テクノロジーイノベーション
バイオサイエンススコープ
農芸化学@High School
  • 幼虫のロウ物質の構造と役割
    藤田 誠
    2015 年 53 巻 11 号 p. 802-804
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会(開催地:岡山大学津島キャンパス)「ジュニア農芸化学会2015」において発表されたものである.アミガサハゴロモは,半翅目ハゴロモ科に属する昆虫で,本州,四国,九州の常緑照葉樹林に生息し,幼虫・成虫共に主にカシ類の葉や茎から吸汁して生活する.1~5齢幼虫は腹部先端からロウ物質を分泌し,このロウ物質は羽毛や花の雄しべに似た形になる(図1).発表者は小学2年生のときにその不思議な姿を見て,ロウ物質の形が作られる仕組みや役割に興味をもった.図鑑で調べたが生態や形態に関する詳しい記述がなかったことから自分で調べようと考え,長年にわたって研究を続けてきたという.今回発表されたのはその最近の成果の一端である.
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