化学と生物
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53 巻, 6 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 病態との関係,創薬標的としての価値
    渡辺 文太, 平竹 潤
    2015 年 53 巻 6 号 p. 354-361
    発行日: 2015/05/25
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    生体内還元物質であるグルタチオン(GSH)は,活性酸素種の除去(抗酸化)や,求電子的な化合物,重金属など生体異物(毒物)の解毒の最前線に立つ極めて重要な分子であり,酸化ストレスを介してがん化学療法から薬剤耐性,生活習慣病に至るまで,病態と深くかかわる.GSH生合成は,律速基質であるCysの供給に大きく依存しており,近年,GSH代謝やCys供給(Cys availability)にかかわる酵素やトランスポーターが,抗がん剤などの重要な創薬ターゲットとして注目されている.本稿では,GSHの代謝を概観したあと,GSHのもつチオールの化学にフォーカスし,GSHの代謝異常と病態の複雑な関係,GSH代謝やCys availabilityにかかわるタンパク質とその活性制御が有用な創薬につながる可能性について解説する.
  • 医療用遺伝子組換え植物の開発の動向
    佐生 愛, 増村 威宏
    2015 年 53 巻 6 号 p. 362-367
    発行日: 2015/05/25
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    交通手段の発達により,世界中の人々がさまざまな国を行き交う時代となった.それに伴い,新興・再興感染症の世界的な流行が危惧されている.現在では,感染症予防策として注射型のワクチン接種が施行されているが,予防効果と取り扱いの簡便さから,経鼻・経口といった粘膜からワクチンを接種する粘膜ワクチンが注目されている.植物科学分野では,1990年代初頭から,医療用として用いられるペプチドやタンパク質を生産する場として遺伝子組換え植物を利用する研究が報告されるようになった.筆者らは,長年イネ種子貯蔵タンパク質の合成・蓄積機構に関する研究を進めてきた.その仕組みを利用すると,イネ種子胚乳組織を医薬品などの有用物質生産の場に変換できる可能性が見いだされた.
  • 栗之丸 隆章, 白木 賢太郎
    2015 年 53 巻 6 号 p. 368-373
    発行日: 2015/05/25
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,水溶液中でタンパク質の安定化や濃縮ができる新しい方法を紹介する.タンパク質溶液に高分子電解質を混合することで複合体にして沈殿させる.沈殿した状態は物理化学的なストレスに強く,水溶液中でタンパク質が安定化された状態である.上清を取り除いて少量の塩溶液を加えることで,複合体が解離してタンパク質がフリーになり,活性がある状態に戻る.加える塩溶液を調整すれば濃縮もできる.この方法は,タンパク質医薬品の濃縮法や保存法になると考えている.
  • 関 泰一郎, 細野 崇
    2015 年 53 巻 6 号 p. 374-380
    発行日: 2015/05/25
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    近年,わが国では,心筋梗塞,脳梗塞などの血栓塞栓性疾患により,がんにほぼ匹敵する方々が死亡している.血栓性疾患は,血液凝固系もしくは線溶系の異常により発症する.血液凝固系は,出血に対する生理的な防御機構である.一方,血液凝固系により形成された止血栓は,線溶系により分解,除去される.通常,血液凝固・線溶系の巧妙なバランスにより,血栓傾向や出血傾向を示さずに血流は維持されている.本稿では,血液の凝固と線溶について解説し,さらに,食生活をはじめとしたライフスタイルの変化による血栓性疾患の増加について,メタボリックシンドロームや動脈硬化症,食との関連について概観してみたい.
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