化学と生物
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54 巻, 10 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 心臓周囲脂肪組織と血管外膜微小血管
    田中 君枝, 佐田 政隆
    2016 年 54 巻 10 号 p. 713-719
    発行日: 2016/09/20
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    長年,日本人の死因第1位は悪性新生物であり,第2位は心疾患である.脳血管疾患は肺炎に続いて第4位であり,心疾患,脳血管疾患の原因となる動脈硬化症の重要性は依然として続いている(厚生労働省ホームページより).従来動脈硬化は,血管壁に脂質が沈着して生じると考えられてきた.しかし,最近の研究によると,動脈硬化病変には各種の活性化した炎症細胞の浸潤やさまざまなサイトカインの発現が認められ,血管の慢性炎症が根本的成因であると考えられている.古くから,糖尿病と心血管疾患発症の関連性が提唱されてきたが,最近では,糖尿病の背景となるインスリン抵抗性も,脂肪組織での慢性炎症との関連が報告されている.高血圧でも,血液検査で,体内に炎症が生じているときに上昇するタンパク質(C-反応性タンパク質)値の上昇を認めるなど,炎症との関連が示唆されており,従来個別に考えられていたこれらの病態が,全身性の組織慢性炎症による一連の疾患として理解されるようになっている.糖尿病や高血圧,脂質異常症が動脈硬化症を進行させる経路は,血圧調節に関連するホルモンや,脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインなど病態に関連する液性因子や,血液中の脂質が,全身の血流を介して血管病変に到達して作用すると考えられている.よって動脈硬化病変は,血管内皮細胞の機能障害に始まり,炎症が血管内腔側から外膜側に進行すると考えられ,動脈硬化研究は,血管内皮細胞,新生内膜,血管平滑筋細胞に着目したものが多数を占めていた.一方,最近では,動脈硬化病変局所での隣接する組織との関連が注目されている.われわれは,動脈硬化病変をもつ血管に隣接する血管周囲脂肪組織(perivascular adipose tissue; PVAT),および血管外膜微小血管(vasa vasorum; VV)に注目し,血管の外膜側から内膜側に向かう動脈硬化病変調節機構について検討している.
  • 渡部 邦彦
    2016 年 54 巻 10 号 p. 720-725
    発行日: 2016/09/20
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    筆者は,はじめから膜小胞(membrane vesicle; MV)を研究対象にしたのではない.異分野の研究者との共同研究から得られた意外な結果がこの解説を書くきっかけになった.私たちは産業廃棄物であるトリ羽毛を強力に分解する好熱性細菌を神戸・有馬温泉源から単離し,この細菌が生産するプロテアーゼについて研究を推進していた(1~4).オーソドックスな生化学的手法ではこのプロテアーゼの精製は進まず,異常な高分子様態が存在すると確認されたため,当初プロテアソーム様のタンパク質複合体と考え,それを捉えるために電子顕微鏡解析の専門家と共同研究を始めた.意外にも,細胞より小さい脂質二重膜状構造が見えるとの結果がもたらされたことが,今回取り扱う膜小胞(MV)との出会いであった(5~7)
  • 生体利用性と機能性の矛盾
    越阪部 奈緒美
    2016 年 54 巻 10 号 p. 726-731
    発行日: 2016/09/20
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    近年植物性食品に含まれるポリフェノール類は,食品の機能性研究の大きなターゲットの一つとなっている.ポリフェノール類を豊富に含む食品の摂取は,心血管系疾患のリスクの低減につながるが,そのメカニズムについてはいまだ不明な点が多い.その理由としては,ほとんどのポリフェノール類の生物利用性が極めて低いことにある.われわれは最近,ポリフェノール類が摂取直後から循環系・代謝系に変化を与えること,またその変化がアドレナリン受容体阻害剤で消失することを見いだした.これらのことは,ポリフェノール類が消化吸収を経ずに,交感神経を刺激することを示している.本稿では,ポリフェノールの作用メカニズム解明に対する最近のアプローチについて解説する.
  • 小分子によるタンパク質–タンパク質間相互作用の安定化
    樋口 雄介, 加藤 修雄
    2016 年 54 巻 10 号 p. 732-739
    発行日: 2016/09/20
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    タンパク質–タンパク質間相互作用(Protein–Protein Interactions: PPI)の制御が興味を集めている.特にマルチクライアント型(複数のPPIの相手をもつ)タンパク質が関与するPPIの選択的な制御には小分子による制御が有効である.遺伝子knockout/knockdown手法は,関与するすべてのPPIを消失させ,有効な知見の取得にはつながらない.マルチクライアントタンパク質には,マルチドメイン型(複数のPPIサイトをもつ)とシングルドメイン型(単独のPPIサイトしかもたない)があるが,後者の代表例として,細胞内シグナル伝達経路を制御している14-3-3タンパク質が知られる.本稿では,主に天然のフシコッカン型ジテルペン配糖体とその半合成誘導体による14-3-3タンパク質の機能制御について概説する.
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