筆者は,はじめから膜小胞(membrane vesicle; MV)を研究対象にしたのではない.異分野の研究者との共同研究から得られた意外な結果がこの解説を書くきっかけになった.私たちは産業廃棄物であるトリ羽毛を強力に分解する好熱性細菌を神戸・有馬温泉源から単離し,この細菌が生産するプロテアーゼについて研究を推進していた
(1~4).オーソドックスな生化学的手法ではこのプロテアーゼの精製は進まず,異常な高分子様態が存在すると確認されたため,当初プロテアソーム様のタンパク質複合体と考え,それを捉えるために電子顕微鏡解析の専門家と共同研究を始めた.意外にも,細胞より小さい脂質二重膜状構造が見えるとの結果がもたらされたことが,今回取り扱う膜小胞(MV)との出会いであった
(5~7).
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