化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
54 巻, 11 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • チューリップの二次代謝生合成研究からの発見
    野村 泰治, 加藤 康夫
    2016 年 54 巻 11 号 p. 797-803
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー
    「カルボキシルエステラーゼ」は,カルボン酸エステルを加水分解し,カルボン酸とアルコールを生成物として与える酵素と定義される.しかし,筆者らがチューリップの二次代謝研究の過程で発見した「チューリッポシド変換酵素」は,加水分解反応ではなく分子内エステル転移反応によるラクトン形成のみを触媒する,ユニークなカルボキシルエステラーゼであった.本稿では,その酵素機能および生理学的役割などに加え,植物のカルボキシルエステラーゼおよび関連するα/β-加水分解酵素ファミリー酵素・タンパク質の機能多様性について概説する.
  • 長岡 利
    2016 年 54 巻 11 号 p. 804-811
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー
    食品成分の健康機能性に関する研究が活発に展開されている.とりわけ,食品タンパク質から派生する健康機能性ペプチドに関する研究は,カルシウム吸収促進作用を発揮するカゼインホスホペプチドや血圧降下ペプチドであるラクトトリペプチドなどの比較的初期の成果がよく知られ,教科書などでも食品タンパク質由来の健康機能性ペプチドは,まさに「食品の3次機能」の原点として紹介されている.これは食品タンパク質の機能が生体構成成分の原料獲得などの栄養機能を中心に展開されてきた従来の概念を覆すものである.その後も国内外で多種多様な食品タンパク質由来の健康機能性ペプチドが発見されてきた.一方,多種多様な食品タンパク質由来の健康機能性ペプチドがin vitroで多数報告されるに至っているが,in vivoでの作用機構や分子レベルでの理解,ヒトでの有効性の検証などには,いまだに多くの課題を残している.そこで,本稿では,これらの食品タンパク質由来の健康機能性ペプチドのうち,生活習慣病と関連の深い脂質代謝(コレステロール)を中心に,トリアシルグリセロール代謝,糖代謝に影響を及ぼすユニークな作用について,現在の最先端の研究成果とその展望を概説する.
  • 尾花 望, 黒沢 正治, 豊福 雅典, 野村 暢彦
    2016 年 54 巻 11 号 p. 812-819
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー
    細菌が産生するメンブランベシクル(membrane vesicle: MV)は20~400 nmの球状構造体であり,さまざまな物質の“運び屋”として機能する.MVはクォラムセンシングや遺伝子の水平伝播といった細菌間相互作用のみならず宿主細胞への毒素の輸送や免疫調節といった細菌–宿主間相互作用にも関与する.MVはグラム陰性,陽性および病原性,常在細菌にかかわらず産生されており,細菌において普遍的かつ不可欠な機能であると推測される.さらにMVは細菌が能動的に産生していることも示されつつある.本総説では能動的に産生されるMVの生合成機構や機能,特に細胞間情報伝達について近年の研究進展を紹介する.
  • 杉山 峰崇, 笹野 佑, 鈴木 俊宏, 原島 俊
    2016 年 54 巻 11 号 p. 820-826
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー
    Saccharomyces cerevisiae(以下,出芽酵母)は,エタノールや異種生物由来の有用物質の高い生産能力をもつことから,バイオエタノールやプラスチックの原料となる乳酸の発酵生産宿主として利用・検討されている.これらの生産を効率化するためには,高い温度域でも増殖し発酵を行う高温ストレス耐性や乳酸などの有機酸へのストレス耐性が重要となる.本稿では,出芽酵母の高温ストレスや有機酸ストレスへの適応応答について紹介し,われわれが取り組んできた耐性出芽酵母の開発から得られた成果を紹介したい.
  • アミノ酸センシングにおけるトア(TOR)の旅
    鎌田 芳彰
    2016 年 54 巻 11 号 p. 827-834
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー
    栄養は生命にとって必要不可欠である.なかでもアミノ酸(窒素源)はタンパク質の材料として最も基本的な栄養素に数えられる.タンパク合成は生命活動の根幹に位置する現象であり,産業的には物質生産,医学的にはさまざまな代謝疾患(同化と異化のバランスの異常)と深く結びついている.したがって,アミノ酸を感知してタンパク合成を活性化する役割を果たす細胞内アミノ酸栄養センシングの解明は,生命現象の基本的な理解に直結するのみならず,さまざまな疾患の原因の発見や治療法の開発,そして物質生産の向上に役立つ技術の分子的基盤を提供できる.しかしながら,アミノ酸センシングの研究はまだ闇に包まれている.その理由として,(1) 20種類のアミノ酸をどうやって感知するのか,(2)アミノ酸は,細胞内にて合成・代謝され複雑な存在様式を示す,(3)アミノ酸の局在は細胞質,オルガネラ(細胞内プール)と多岐にわたり(=どこのアミノ酸を感知するのか),また細胞外からの取り込みにも大きく影響を受ける,といったことが挙げられる.その闇を照らすのがトア複合体1(TORC1)である.TORC1研究を起点として,細胞のアミノ酸感知についてさまざまなことがわかってきた.後述するように,アミノ酸を感じて,TORC1は細胞内で旅をするのである.
セミナー室
バイオサイエンススコープ
プロダクトイノベーション
feedback
Top