日本における微細藻類からのバイオ燃料・原料用オイル(以下,グリーンオイル)生産技術開発については,平成20年頃から注目され始め,現在世界中で検討が進められている.微細藻類から生み出されるグリーンオイルは,さまざまな用途に使え,CO
2削減効果や持続的可能社会へ貢献などさまざまなメリットが期待されている.一方で,多くの利点を有するグリーンオイルを学術的研究から実用化へ導くには,①候補株の屋外大量培養技術,②培養からオイル抽出までの一貫プロセスの構築,③低エネルギー,低コスト化,④大規模化に伴う運用ノウハウの取得など,数多くのエンジニアリング的視点が必要になる.電源開発株式会社(以下,J-POWER)では,平成15年から海洋微生物を中心に微生物コレクションであるJ-POWER Culture Collection(以下,JPCC)を構築(http://oceanquest.jp)し,バイオテクノロジー研究を開始した.J-POWERの微細藻類研究はグリーンオイル生産技術開発に必要な候補株をJPCCから検索することから始め,その後,見いだした候補株のラボレベル試験による藻体,グリーンオイル生産性などの特性・評価を行った.さらにその成果を反映し,屋外におけるベンチレベル試験,パイロット試験について,公的資金(JST-CREST, NEDO)を有効に活用しながら進めてきた.現在,3,000 m
2の敷地を利用したグリーンオイル一貫生産プロセスを検討するまでに至っている.今回,微細藻類からのグリーンオイル生産技術の研究開発について,筆者らの取り組みを紹介しながら,グリーンオイルのバイオ燃料・原料生産技術や有用資源としての“理想と現実”も含め解説したいと考えている.また,本稿が皆様の検討の一助になること,また,このような機会を与えていただいた日本農芸化学会に対しこの場を借りて感謝申し上げたい.
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