化学と生物
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54 巻, 4 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • なぜ干からびても死なないのか
    十亀 陽一郎, 黄川田 隆洋
    2016 年 54 巻 4 号 p. 248-253
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    もし,今皆さんがいる場所が急に日差しが強くなり,水分がどんどん蒸発して,砂漠のような乾燥状態に半日でなってしまうとしたらどうするであろうか.私なら即座に水の豊富な場所に逃げるだろう.水はわれわれの生体中でさまざまな生体反応を行う場所として重要であり,水の消失はすなわちわれわれの死を連想させる.生物種によってもばらつきがあるが,少なくとも体重の6割以上は水が含まれ,半分を失うと生存が危うくなる.すなわち乾燥とは,われわれの最も身近にある極限環境といえよう.しかしながらこのような状況下でも乾燥から逃避しない生物が存在する.「カラカラに干からびても水戻しすれば蘇る」という乾燥無代謝休眠(アンヒドロビオシス)の能力を発揮できる生物が,それである.カラカラに干からびた状態では,水分がないので当然代謝はできないはずである.しかしながら水をかけると蘇生するので,死んでいるわけではない.果たして彼らはどのようにして「生きてもいないし死んでもいない状態」を作り出しているのであろうか.本稿では,乾燥無代謝休眠の能力をもつ最大の動物,ネムリユスリカを題材に乾燥無代謝休眠のしくみについて最新の研究も紹介しながらこれまでにわれわれが明らかにしてきたことを概説する.
  • 三ツ井 敏明
    2016 年 54 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    地球温暖化による異常高温はヒトのみならずイネなど重要作物の生産に大きな影響を及ぼしつつある.近年,わが国の夏季は頻繁に各所で猛暑となり,高温被害米が多発し,一等米比率を激減させている.このような高温被害米の多発は米生産農家の収入に直接影響するだけでなく,産地のブランドイメージを壊すことにもなりかねず,生産現場では極めて深刻な問題となっている.高温登熟による玄米の白濁化はさまざまな要因が複雑に絡み合って生ずるものと考えられるが,最終的な現象としては胚乳細胞におけるデンプン顆粒の形成不全である.本稿では,分子生理学的視点から玄米の白濁化メカニズムを考察し,高温登熟耐性をもたらす因子ならびに高温障害を軽減する戦略を探る.
  • 堀米 綾子, 小田巻 俊孝
    2016 年 54 巻 4 号 p. 260-265
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    1899年にTissier博士により健康な母乳栄養児の糞便から初めて分離されたビフィズス菌は,乳幼児の健康を守る微生物として注目され,多くの研究からヒトの健康維持に大きく寄与することが明らかにされてきた.その結果,現在はプロバイオティクスとしてヨーグルトやサプリメントなどの食品や,医薬品に幅広く利用され,多くの人々にとって身近なものとなっている.ところが,乳幼児の腸管内にビフィズス菌が最優勢に棲息する理由や,ビフィズス菌のもつさまざまな生理機能の詳細なメカニズムについてなど不明な点も多く残されている.本稿では,近年のゲノム解析を通じて詳細が明らかにされつつあるビフィズス菌の進化や棲息環境適応機構などについて紹介し,今後の課題についても論じたい.
  • 古川 健太郎, 神吉 智丈
    2016 年 54 巻 4 号 p. 266-272
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    オートファジーは,細胞質成分をオートファゴソームと呼ばれる脂質二重膜で非選択的に包み込み,内容物をリソソーム/液胞で分解・再利用する現象である.近年,オートファジーにはこの非選択的な取り込み以外にも特定のタンパク質やオルガネラを選択的に分解する機構があることが明らかになってきた.ミトコンドリアを選択的に分解するオートファジーはミトコンドリアオートファジー(略してマイトファジー)と称され,過剰あるいは機能低下に陥ったミトコンドリアを選択的に分解することでミトコンドリアの品質管理にかかわっていると考えられている.本稿では,主に出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおけるマイトファジーの分子機構と生理的役割について解説する.
  • 野村 亘, 井上 善晴
    2016 年 54 巻 4 号 p. 273-280
    発行日: 2016/03/20
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    細胞の成長や増殖には莫大なエネルギーを必要とする.従属栄養生物では,そのエネルギー生産のため,環境からの栄養源の供給が不可欠である.また,動物におけるエネルギー代謝の協調的制御には,ホルモンによる調節が必要である.しかし,過剰な栄養の供給やホルモンバランスの異常は代謝フラックスの破綻を招き,種々の疾患の原因にもなる.真核生物において高度に保存された栄養シグナル伝達機構にTOR経路がある.TOR経路は,栄養状態やインスリンなどのホルモンに応答してさまざまな生命活動に関与すると同時に,ストレス応答などにも機能している.本稿では,解糖系から生成するメチルグリオキサールによるTOR経路の活性化について解説する.
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