化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
55 巻, 8 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • リボソームの分解を誘導するシグナルと解体のメカニズム
    北畠 真
    2017 年 55 巻 8 号 p. 532-537
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー

    真核生物のリボソームは4本のrRNAと約80個のリボソームタンパク質からなる巨大複合体である.栄養豊富な条件下ではリボソームは非常に安定であることが知られている.しかし近年になって,このようなリボソームを必要に応じて迅速に分解する機構が細胞内に備わっていることが明らかになってきた.本稿では筆者らの研究している機能不全リボソームの選択的分解経路を紹介すると同時に,ほかの分解経路についても研究の進展をまとめ,細胞内でのリボソームのダイナミクスが次第に明らかになっている現況を解説したい.

  • NMR・MSを用いた包括的な食品成分分析
    河原﨑 正貴
    2017 年 55 巻 8 号 p. 538-546
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー

    食品は多種多様な物質を含む混合物である.それらが独立して味,食感や香り等々を有しているだけではなく,相互的にかかわっている.また保存や調理過程により,化学反応を起こして新しい物質を生み出し,風味や色に変化を与える.したがって,食品分析の主流であるターゲット分析を重ねても食品の特徴を“網羅的”に把握することは難しく,また加工過程で生じるすべての物質について標品があるわけではない.この複雑な混合物である「食品」の評価には,対象を“包括的”に捉えることのできるメタボリック・プロファイリング(MP)が適していると考えている.本解説では,NMRあるいはMSを用いた食品の包括的MPについて紹介する.

  • 植物は自ら作る多様な抗菌性物質で病原菌に対抗する
    長谷川 守文
    2017 年 55 巻 8 号 p. 547-552
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー

    フィトアレキシンの単離・構造解析に関する研究は20世紀後半に盛んに行われ,非常に多くの成果が蓄積された.21世紀に入ってからのフィトアレキシン研究はその生合成や誘導機構に関するものが中心になってきており,いわゆる「モノ取り」的な研究はやり尽くされた感があった.しかし,近年イネ科やアブラナ科植物の研究で,従来考えられていたよりも多様な化合物がフィトアレキシンとして機能していることがわかってきた.

  • 現代の「油断大敵」を考える
    原馬 明子, 守口 徹
    2017 年 55 巻 8 号 p. 553-558
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー

    「油断大敵」という四字熟語の意味にはいろいろな説があるようだが,戦国時代に明かりの油を絶やすことは敵の侵入を許すことから,“注意を少しでも怠れば,思わぬ失敗を招くので十分に気をつけるべきである”という戒めとして用いられている.しかし,現在は,昔とは少し異なり,“良質な油を断ってしまうと,大きな健康上の問題を引き起こす”という意味にも取れる.脂質のとり過ぎは肥満につながり,循環器系疾患や糖尿病を引き起こすとして制限されてきたが,体にはとらなければいけない脂質(必須脂肪酸)がある.この必須脂肪酸について紹介したい.

  • 微生物群集構造プロファイリングによる新たな法科学的手法の可能性
    西 英二, 田代 幸寛, 酒井 謙二
    2017 年 55 巻 8 号 p. 559-565
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー

    現在の犯罪捜査において,ヒトDNA型鑑定は多くの事件に活用され,犯人の特定や犯罪事実の証明に欠かせないものとなっている.しかし,いまだに解決できないさまざまな問題があり,昨今のあらゆる種類の犯罪に対応できていない.しかしながら,人体に存在する微生物叢を網羅的に解析するヒトマイクロバイオーム解析の発展に伴い,微生物を法科学分野にも利用する動きが見られるようになった.このヒトDNA型鑑定とは異なるアプローチによって,現在の法科学分野のさまざまな問題点を克服できる可能性がある.つまり,従来の一般の鑑定手法では有効な情報を得ることができなかった資料について,そこに存在する細菌叢を利用して個人の異同識別が可能であることがわかってきた.

セミナー室
テクノロジーイノベーション
feedback
Top