生体のタンパク質を構成するアミノ酸はすべてL体であるというのが,科学の常識であった.しかし近年,加齢や老化に伴って,種々のタンパク質中のアミノ酸残基が非酵素的に異性化し,D-アミノ酸残基が形成されることが明らかとなっている.さらに,これらは疾病との関連が指摘されており,新規のバイオマーカーとしても期待されている.しかしながら,ペプチドやタンパク質中のD-アミノ酸残基を正確に検出するのは,一筋縄ではいかない.本稿では,ペプチドおよびタンパク質中に含まれるD-アミノ酸残基の検出方法について,一般的な手法から最新の手法について解説する.
脂溶性ビタミンの一つであるビタミンKは一般に,γ-グルタミルカルボキシラーゼ(GGCX)の補酵素として働き,血液凝固や骨形成に関与していることが知られている.近年ビタミンK同族体の一つであるメナキノン-4(MK-4)が,ほかのビタミンK同族体から変換されて各組織に蓄積していることが明らかにされた.そこで,ビタミンKにはいまだ解明されていない重要な生理的役割を果たしていると考えられるようになった.特に最近のビタミンK研究から,核内受容体のアゴニストとしての作用や脳神経の酸化ストレスからの保護作用などさまざまな作用が発見された.本稿ではMK-4が脳神経前駆細胞からニューロンへの分化を誘導する作用についても解説する.
SWEET(Sugars Will Eventually be Exported Transporter)は2010年にシロイヌナズナではじめて報告された全く新しい糖輸送体で,そのホモログは陸上植物,ヒト,線虫など真核生物に広く存在する.その機能として,維管束植物のソース葉からのショ糖転流で長年の謎であった葉肉組織から師部周辺のアポプラストへのショ糖放出を担う,輸送体であることが判明したのは画期的であった.また,SWEETは種子や花粉の成熟,蜜の分泌,さらには耐病性といった非常にさまざまな場面で重要な役割を果たすことがわかってきた.本稿では,1)SWEETの発見とその構造および分子進化,2)ショ糖転流における機能,3)病害抵抗性やそのほかの糖輸送関連の生理機能,を中心にSWEET研究の現状を紹介する.
本研究は,日本農芸化学会2017年度大会(開催地:京都女子大学)の「ジュニア農芸化学会」で発表されたものである.発表者らは,江戸時代から発酵液を植え継いで伝統的静置発酵で酢を生産している酢蔵の,発酵液および表面菌膜に含まれる微生物菌叢を解析した.さらに,それぞれの菌の代謝特性を知るために菌を単離し,純粋培養における経時的な成分の変化を分析した.