化学と生物
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56 巻, 10 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 見えてきた葉緑体核様体の形の制御機構とその進化史
    小林 優介, 三角 修己, 西村 芳樹
    2018 年 56 巻 10 号 p. 651-658
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    藻類や植物の葉緑体は光合成によって地球上のほぼすべての生命活動を支えている.葉緑体には,シアノバクテリア様の祖先から引き継がれた独自の葉緑体DNAがあり,これらは光合成装置の構築や植物の生存上必須な要素である.葉緑体DNAは裸でストロマを浮遊するのではなく,多様なタンパク質によって折り畳まれて“核様体”を構築する.葉緑体核様体は,いわば葉緑体にとっての「染色体」であり,細胞核の場合と同様に,葉緑体DNAの複製・分配の基盤である.この葉緑体核様体構造がもつ進化学的,形態学的なダイナミズムについて俯瞰する.

  • 76成分によるビール香気の再構築
    岸本 徹
    2018 年 56 巻 10 号 p. 659-664
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    “香り”は食品や飲料のおいしさを決定づける大きな要素である.そのためビールの香りに関する多くの研究が進められ,さまざまな特徴に寄与する香気成分が明らかにされてきた.これまでビールの香りの研究においては,その特徴への「寄与度が高い」香気成分に着目されてきた.一方で,ビール中で大多数を占める寄与度が小さい香気成分群の役割については,ほとんど考察されてこなかった.本解説では,ビール香味への香気成分の寄与について,これまでの報告から紹介するとともに,一方で,寄与度が小さい大多数の香気成分群の寄与について,筆者らが得た知見をもとに紹介する.

  • ウーロン茶ポリフェノールの解明を目指して
    廣瀬 紗弓, 柳瀬 笑子
    2018 年 56 巻 10 号 p. 665-670
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    ポリフェノール類とは,その名のとおり「たくさんの(Poly)」「フェノール基(Phenol)」をもつ化合物であり,芳香族環に2つ以上のフェノール基を有する化合物の総称である.ポリフェノール類は多くの植物に二次代謝成分として含まれており,自然界には8,000種類を超える化合物が存在すると言われている.また近年ではその生理的機能が注目されており,食品に含まれるポリフェノールの研究が進んでいる.本稿では,食品中のポリフェノールとして主に茶に含まれるカテキン類を挙げ,紅茶やウーロン茶への加工における化学的変化について解説する.

  • 代謝進化のリクルート説とEvo-Metaへの展開
    庄司 翼
    2018 年 56 巻 10 号 p. 671-677
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    植物は,比較的単純な化合物から,複雑な化学構造を有する多種多様な二次代謝産物を生合成・蓄積する能力をもっている.二次代謝系は,環境条件や発生段階などに依存してダイナミックに制御されている.特定の生合成系を構成する遺伝子バッテリー(battery)は,しばしば共通した転写レベルでの制御を受け,レギュロン(regulon)を構成している.生合成酵素やトランスポーターなどの二次代謝系遺伝子の同定に,共発現解析などが盛んに活用されている.DNA結合性タンパク質である転写因子は,標的遺伝子のプロモーター領域に存在する比較的短いシス制御配列(cis-regulatory element)を特異的に認識し,基本転写因子やクロマチン構造などへの作用を通じて,RNAポリメラーゼIIによる転写開始の頻度に,正または負に影響を及ぼす.本稿では,いくつかの防御性二次代謝系に共通して機能する転写因子とそれらが統括する代謝レギュロンについて解説し,進化的に保存された転写因子がレギュロンの確立・進化に主導的な役割を果たしている可能性について論考する.

  • 天然物による厳密な脂質認識とそれに基づく表現型
    西村 慎一, 掛谷 秀昭, 松森 信明
    2018 年 56 巻 10 号 p. 678-685
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

    細胞は細胞膜により外界と隔てられ,細胞内はオルガネラ膜により仕切られている.生体膜ではさまざまな反応が制御され,疾患関連イベントも多く起こる.そのような生体膜の構造・機能をイメージするモデルに流動モザイクモデルや脂質ラフトモデルがある.しかし生体膜の重量にして約50%を占めるとされる膜脂質は,遺伝子に直接コードされていないため解析手段に乏しく,機能の理解が進んでいない.一方で,膜脂質は感染症治療薬の標的となっており,機能解明が求められている生体分子の一つである.ところが,いずれの観点においても,分子レベル,原子レベルでの機能理解は十分ではない.本稿では抗真菌剤であるアムフォテリシンB(AmB)をはじめとして,膜脂質を標的とするいくつかの天然有機化合物(天然物)について,その化学構造と作用機序について概説する.そして,そこから見えてくる今後の研究展開についても議論する.

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