化学と生物
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56 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 脂肪滴の“表面”が脂肪滴のサイズを決める
    有澤 琴子, 市 育代
    2018 年 56 巻 4 号 p. 248-254
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    脂肪滴は全身の細胞に存在するオルガネラであり,単なるエネルギーの貯蔵庫ではなくエネルギー代謝や生体の恒常性維持において重要な役割をもつことが示唆されている.プロテオーム研究より明らかになった種々の脂肪滴膜タンパク質は脂肪滴膜上で中性脂肪を合成したり,脂肪分解から脂肪滴を保護することで脂肪滴サイズの調節にかかわっている.さらに最近,脂肪滴表面を囲むリン脂質膜は,膜表面の物理的性質を調節することで脂肪滴のサイズを制御していることが明らかになってきた.本稿ではこれまで蓄積されてきた知見に加え,われわれが最近明らかにした脂肪滴サイズの制御における脂肪滴膜リン脂質の脂肪酸鎖の役割についても紹介する.

  • 脳研究による食品機能性の理解
    中島 健一朗
    2018 年 56 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    食と健康の関係が注目される現在,食品は味や匂いなどの「感覚」・「栄養」・「生体調節」の3つの機能を兼ね備えることが知られるようになった.また,神経科学研究の進展により,摂食行動は嗜好性と恒常性(体の状態を一定に保つ性質)により制御されることがわかってきた.食品機能のうち,「感覚」は前者にかかわるのに対し,「栄養」や「生体調節」は後者にかかわる.これら2つの仕組みは食事の際に同時に働くが,食品研究と神経研究の分野間には隔たりがあり,食品機能性と摂食制御の関係の把握は困難である.本稿では,食の嗜好性と恒常性のセンシング機構を説明するとともに,今後,食品研究を行ううえでも重要になると思われるトピックについて述べる.

  • 遺伝情報多様化のための染色体切断現象
    山田 貴富, 村上 浩士
    2018 年 56 巻 4 号 p. 262-271
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    最近では,「生命の多様性」という言葉が一般的なニュースに取り上げられることも多くなったように思う.その分子基盤となる現象の一つに「減数分裂期相同組換え」がある.この現象は,細胞が自身の染色体DNAを切断する反応で始まる.遺伝情報を自ら傷つけるという危険を冒してまで行うわけで非常に重要な意義をもつ現象である.本稿では,精緻なまでに制御されたその反応機構について,ごく一端を紹介する.

  • 微生物の探索から酵素機能の改良まで,新たなバイオプロセス構築を目指した多彩な研究アプローチをご紹介
    山田 美和
    2018 年 56 巻 4 号 p. 272-278
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    2017年3月京都において,幸運にも第1回農芸化学若手女性研究者賞を受賞したことから,今回の執筆についてご依頼をいただいた.本受賞は,これまでの研究業績についてご評価いただいたものであり,本稿では筆者らが行ってきた微生物細胞や酵素による有用物質合成について紹介する.筆者は,これまで,微生物によるバイオプラスチック合成と微生物由来有用酵素に関する研究に携わってきた.ターゲットとした有用物質をバイオの力で合成するために,どんな手法やアイディアを用い,ブレイクスルーにつながっていったのかについて述べたい.

  • 生涯の健康状態を左右する重要なイベント
    牧野 博, 松木 隆広
    2018 年 56 巻 4 号 p. 279-286
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    乳児の腸内フローラ形成は誕生直後に始まり,生涯にわたって宿主の生理に影響を及ぼすことが近年の研究により示された.しかし,乳児の腸内フローラの形成に影響を与える因子や腸内細菌の由来,形成過程の法則性や最優勢を占める菌の特性など,腸内フローラの形成機構についてまだ十分に明らかとなっていない.本稿では,乳児期における腸内フローラの形成機構やそれらの起源,健康への影響についてのこれまでの知見・報告を総説し,今後の課題について考えたい.

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