化学と生物
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56 巻, 6 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 植物のストレス耐性を化学的に調節する
    轟 泰司, 竹内 純
    2018 年 56 巻 6 号 p. 388-394
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    アブシシン酸(ABA)は種子休眠や耐乾燥性・耐塩性などの環境ストレス応答に必須の植物ホルモンである.その生理作用を誘導するコアシグナル経路は細胞質受容体PYLを起点としているが,多くの植物でPYL遺伝子が多重に重複しているため,個々のサブタイプの機能や植物の非生物的ストレス応答における役割を遺伝学的に探求あるいは調節することは難しく,化合物による選択的あるいは非選択的な制御技術の開発が望まれている.これまでに,化合物スクリーニングならびにABAの構造改変によって,PYLの機能を正あるいは負に制御する化合物が見いだされているので,本稿で紹介する.

  • 食品製造における選択的カフェイン除去技術の開発
    塩野 貴史
    2018 年 56 巻 6 号 p. 395-401
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    緑茶や紅茶,コーヒーなどの嗜好飲料は日常の食生活に密着した飲みものとして広く飲用されている.しかし,これらの飲料には覚醒や利尿などの作用を示すカフェインが含まれており,体質やシーンによっては飲用を控えなければならない制約があった.従来の原料からの溶出処理によるカフェイン除去技術では,カフェイン除去とおいしさや外観といった飲料品質の両立は難しいとされてきた.われわれは,天然吸着剤であるモンモリロナイトを用いて茶抽出液から選択的にカフェインを吸着・除去する技術を開発した.その特徴と汎用性,今後の展望について解説する.

  • 探索からものづくりまで
    加藤 晃代
    2018 年 56 巻 6 号 p. 402-407
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    微生物とそれらが生産するタンパク質は,研究のみならず食品・医薬・化成品産業と切っても切り離せない関係であるが,持続可能な環境調和社会と健康維持社会の実現に向け,その社会的重要度・期待度はますます高まっている.ゲノム情報が自由に手に入るようになった昨今でも,機能未知のタンパク質が多く存在し,有用タンパク質の探索・微生物生産に関する研究は盛んに行われている(図1).特に,いかに利用しやすいものを見つけ出し,最適化するかは産業上最も重要な課題の一つである.本稿では,主に食品産業分野での微生物・タンパク質の利用や,それらにまつわる最近の技術について,筆者の研究を交えながら解説する.

  • 特定保健用食品「伊右衛門 特茶」の開発
    立石 法史, 中村 淳一, 野中 裕司
    2018 年 56 巻 6 号 p. 408-413
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    動脈硬化性疾患は日本人の死因の25%近くを占め,その主たる危険因子である高血圧,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病の発症には,肥満,特に内臓脂肪蓄積が深く関与していると指摘されている.これらの予防・改善には,適度な運動とバランスの良い食生活が大切であるが,現代社会の多忙な日常生活においては,適切かつ継続的な実践は必ずしも容易ではないため,保健機能食品の効果的な活用は国民の健康の維持・増進への一助となることが期待される.そこでわれわれは,肥満や内臓脂肪蓄積の予防・改善に役立ち,無理なく飲み続けられる日頃慣れ親しんだ茶飲料での特定保健用食品を開発することを目指した.

  • 多様な物質酸化系をどう解剖するか?
    阿野 嘉孝, 藥師 寿治
    2018 年 56 巻 6 号 p. 414-421
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    Gluconobacter属酢酸菌は,糖類を不完全に酸化することを特徴とし,ビタミンC生産過程のソルボース発酵などに用いられている.食酢の製造にかかわるAcetobacter属酢酸菌と比べ,一般には馴染みがないかもしれない.しかし,ほかの細菌には見られない多種多様な物質酸化反応を高速高効率に行える魅力的な細菌である.細胞内代謝に加え,細胞表層で進行する強力な代謝が不完全酸化の要因となる.その完全ゲノムが発表され10年以上が経過し,この間に本菌のゲノム情報から物質酸化系代謝や生理学の背景が少しずつわかってきた.ここでは,Gluconobacterのゲノム情報を活用した研究アプローチとそこから得られた最近の知見を紹介する.本菌の分子生物学研究の魅力と将来性を伝えたい.

  • 反発性と誘因性の場を持つポリシアル酸
    佐藤 ちひろ
    2018 年 56 巻 6 号 p. 422-431
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    ポリシアル酸は酸性9炭糖のシアル酸の直鎖状ホモポリマーの総称であり,神経細胞接着分子(NCAM)を時・空間特異的に修飾するがん胎児性抗原として知られている.ポリシアル酸が生み出す排他的空間が細胞–細胞/細胞外マトリックスの接着を抑制することで,脳機能のさまざまな調節を行っていると久しく考えられてきた.近年,ポリシアル酸がこの反接着性の機能だけではなく,生理活性分子を構造特異的に保持する機能をもつことが明らかにされ,親和的な空間を作り出すことにより,さまざまな因子群の機能制御を行っていることが示された.さらに,この構造を作り出す生合成酵素と統合失調症をはじめとする精神疾患との関連性が注目されている.ここでは,近年明らかになってきたポリシアル酸の新しい機能を中心に解説する.

  • 水溶性食物繊維としての「難消化性グルカンの開発」
    濱口 徳寿, 平井 宏和, 尾藤 寛之
    2018 年 56 巻 6 号 p. 432-437
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

    グルコースなどの糖質は,加熱すると脱水縮合反応により多糖化することが古くから知られている(1).べっ甲飴や黒ビール等の食品中には,これら加熱工程で生成する多糖成分が存在する.当該反応は,酸とともに糖質を加熱して得られるポリデキストロースや難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維の生産に応用されている(2).筆者らは,活性炭が多糖化の触媒として機能することを新たに見いだし(図1),2014年に新規な食物繊維素材の難消化性グルカンを開発した(3).本稿では,活性炭による糖の脱水縮合反応の解析ならびにや難消化性グルカンの工業的な製法確立,食物繊維素材としての安全性評価および生理機能評価など難消化性グルカンの開発について紹介する.

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