化学と生物
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57 巻, 10 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • なぜカルノシンは脳機能を改善できるのか?
    片倉 喜範
    2019 年 57 巻 10 号 p. 596-600
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー

    抗酸化作用,緩衝作用,抗疲労作用など多くの機能を有することが知られている高機能ジペプチドイミダゾールジペプチドは,最近行われた中高齢者ボランティアに対する二重盲検ランダム化比較試験の結果から,記憶機能改善効果を示すことが明らかとなっている.つまりイミダゾールジペプチドは,腸と脳との相互作用を活性化させうることが報告されてはいるが,その分子基盤についてはいまだ明らかになっていない.本解説では,イミダゾールジペプチドの1種カルノシンによる脳腸相関活性化機能の詳細とその機能性の分子基盤に関し,最近の知見を踏まえ紹介したい.

  • 消費者庁による検証事業の前後比較評価
    上岡 洋晴
    2019 年 57 巻 10 号 p. 601-608
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー

    機能性表示食品制度が2015年4月1日に開始され,2019年6月30日時点で,消費者庁のホームページ(1)に2,170件の届出が登録されている.この有効性の科学的根拠の資料として,臨床試験の結果,もしくは研究レビュー(事実上,システマティック・レビュー(SR)のこと)のいずれかが必須とされ,その大多数(約90%)がSRを用いて届出をしている.本論では,まず機能性表示食品制度とSRについて概説する.そして,われわれの研究成果を踏まえて届出されているSRの質について解説する.

  • 油脂酵母の油脂生合成に関する重要遺伝子
    高久 洋暁
    2019 年 57 巻 10 号 p. 609-615
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー

    油脂自給率が僅か12%の日本の油脂産業の維持と発展は,海外からの油脂資源確保に大きく依存する.このままでは世界の油脂市場の環境,国策,相場に左右されることから油脂自給率改善は必須である.われわれのグループは,この問題の解決策の一つとして,地域バイオマス由来の糖を原料とした油脂酵母による油脂生産に注目した.油脂酵母Lipomyces starkeyiは,さまざまな糖を資化し,油脂を細胞内に85%以上蓄積できるユニークな酵母である.本稿では,油脂酵母の油脂蓄積変異株の取得,油脂生合成経路の遺伝子発現比較解析を介した油脂生合成重要遺伝子の同定,さらに実用化へ向けた油脂酵母研究の現状と今後について解説する.

  • 国内地域活性化のための穏和なバイオマス前処理法
    山岸 賢治, 池 正和, 徳安 健
    2019 年 57 巻 10 号 p. 616-622
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー

    稲わらなどの草本系資源は,その主成分であるホロセルロースからエタノールを製造する際の国産原料として注目を集めてきた.また最近では,地球環境への負荷を低減する取り組み(いわゆる「バイオエコノミー」への移行)のため,世界各国で繊維質資源の高度変換に関する研究開発が進みつつある(1).その一方で,わが国では,農地が狭くまとまった量のバイオマスを調達しにくいという制約の下で,草本系資源を高度利用するための簡素な小規模プロセスを開発する必要がある.そこで本稿では,糖化効率化のための前処理工程に着目し,その簡素化を目指す2つの取り組み(生物学的前処理および常温アルカリ前処理)について紹介する.

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学界の動き
農芸化学@High School
  • 高い酵素活性をもつ種子粉末の活用性を探る
    瀬口 楓, 松森 友宏, 春若 純菜
    2019 年 57 巻 10 号 p. 653-656
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究は日本農芸化学会2019年度大会(開催地:東京農業大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表されたものである.ウレアーゼとは尿素を二酸化炭素とアンモニアに加水分解する,微生物や植物に広く存在する酵素である.ウレアーゼはナタマメに豊富に存在することが知られている酵素で,アンモニア産生などのバイオリアクター装置に利用できる反応素子として大きく期待されている.本研究は尿素を用いたバイオリアクター装置に使用可能で,安定かつ活性の高いウレアーゼの酵素反応条件の詳細な検討を行い,さらにこれまで広く用いられているナタマメ以外のマメ科植物由来ウレアーゼの利用の可能性を検証しており,学会から高く評価された.

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