貯蔵糖質であるグリコーゲンは筋などの末梢組織だけでなく,脳のアストロサイトにも貯蔵され,ニューロンのエネルギー需要増大時の重要なエネルギー源となる.この時,グリコーゲン分解により生成された乳酸はアストロサイトからニューロンへと輸送され(アストロサイト–ニューロン乳酸シャトル),これが学習・記憶を司る海馬において長期記憶を形成する重要なメカニズムの一つと考えられている.長期的な運動トレーニングは海馬のグリコーゲン代謝に影響を及ぼし認知機能を高めることが明らかとなり,脳とりわけ海馬のグリコーゲン代謝を標的とした運動トレーニングが認知機能向上に有効なスポーツコンディショニングとなり得ることや,低下した認知機能への対抗策として臨床応用の可能性が示唆された.
シクロデキストリンの発見からおよそ100年の時を経て,2000年以降,澱粉から酵素合成される3種の環状オリゴ糖が見出された.環状オリゴ糖は,還元性をもたないことから化学的安定性に優れ,酵素分解に対しても抵抗性を示すことから,一つの素材として多様な可能性を秘めている.一方,環状オリゴ糖の生成や代謝に関与する酵素は新規な活性を示すことから,その触媒作用/メカニズムや酵素を活用したモノづくりに興味が持たれる.シクロデキストリンと同様に,3種の環状オリゴ糖についても様々なアプローチが行われ,多くの知見が蓄積されつつある.今後,澱粉だけでなく各種多糖から生成する新規環状糖質,新規酵素の発見も期待できるだろう.
地域住民コホートROADの縦断データ解析より,筋疾患としてのサルコペニア,骨疾患としての骨粗鬆症,関節疾患としての変形性膝関節症それぞれの有病率,累積発生率を推定し,それぞれの相互関係を検討した.
本研究は,日本農芸化学会2019年度大会(開催地:東京農業大学)の「ジュニア農芸化学会」で発表されたものである.発表者らは,全国で伝統的な静置発酵によるお酢づくりを続けている23の企業から酢酸菌を含む発酵液サンプルの提供をうけ,その菌叢解析,酢酸菌の単離,同定を行った.また,最も多くのサンプル中に確認された酢酸菌Acetobacter pasteurianusを対象に,系統解析を行った.