化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
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57 巻, 12 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 食品メイラード反応の最新の香り研究
    大畑 素子, 横山 壱成, 有原 圭三
    2019 年 57 巻 12 号 p. 722-727
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    食品の加工や調理工程で新たに生成する香りのうち,メイラード反応で生成する香りは一般的には高嗜好性を示し,“おいしい香り”として人々に認識されている.しかし,時にメイラード反応で生成される香りが食品の嗜好性を低下させることもあるため,非常に複雑な機構をもつメイラード反応を効率的に制御し香りの生成を抑制することも必要である.本稿ではまず,食品におけるメイラード反応とそれによって生成される香り成分を解説し,メイラード反応で生成されるオフフレーバーとその制御についての研究成果を紹介する.また,メイラード反応によって生成される高嗜好性を示す香気成分は,嗅ぐことにより生体にさまざまな影響を与えることが近年明らかになってきている.そこで,香りによって生理作用が引き起こされるメカニズムを解説する(コラム)とともに,メイラード反応で生成される香り成分の新たな機能性についての研究成果を紹介する.

  • 植物は鉄不足をどう感じ取って応答するか
    小林 高範
    2019 年 57 巻 12 号 p. 728-735
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    鉄は必須元素の一つであるが,過剰の鉄は毒性を示すため,鉄の吸収・輸送にかかわる遺伝子の発現は細胞内の鉄濃度に応じて厳密に制御されている.本稿では,まずバクテリア,動物,真菌における鉄の吸収と認識について概説したのち,これらの生物とは異なり正体が明らかにされていない植物の鉄センサー分子の候補に関する知見を紹介する.次に,イネにおける鉄欠乏応答の遺伝子発現制御ネットワークについて概説する.これらの知見を応用することにより,鉄を吸収しにくい石灰質土壌においても良好に生育するイネ,種子に鉄や亜鉛を多く含むイネが多数開発されているので,本稿の締めくくりとしてこれらの応用例を整理して概説する.

  • 植物が生育環境の変化に適応するための生存戦略
    西村 宜之, 土屋 渉, 平山 隆志, 山崎 俊正
    2019 年 57 巻 12 号 p. 736-742
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    アブシシン酸(ABA)は,植物の種子休眠や乾燥ストレス応答などにおいて非常に重要な働きをする植物ホルモンの一つである.2009年にABA受容体PYR/PYL/RCARが同定されてから10年が経ち,現在ではABA受容体を介した仕組みが主要なABA応答を制御していると考えられている.筆者らはABA応答において中心的な役割を果たしているタンパク質脱リン酸化酵素タイプ2C(PP2C)に注目して研究を展開し,ABA応答で働くPP2Cの一部は,ABA受容体を介した仕組みとは別に,種子休眠で重要な働きをするDOG1を介した仕組みで働くことを最近新たに発見した.本稿では,ABA受容体を介した仕組みの概略を説明した後,DOG1を介したABA応答制御を中心に紹介する.

  • 凍結固定で“本来の状況”を可視化する
    青木 弾, 松下 泰幸, 福島 和彦
    2019 年 57 巻 12 号 p. 743-748
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    イメージング化学分析とは,どのような物質がどこにあるのかを明らかにするための手法である.蛍光レポーター遺伝子の利用できるタンパク質,特定X線により同定可能な元素,固有波長の吸光・発光を利用できる一部の特殊な化合物などを除くと,細胞内,すなわちサブミクロン(≤1 µm)スケールでの分布可視化は容易ではない.たとえばグルコースなどの化合物を見たい場合にはどうしたら良いのだろうか.ここで有力な候補の一つとなるのがイメージング質量分析と呼ばれる手法である.本稿では特に低分子量成分を対象としたイメージング質量分析の概要と,凍結試料を用いた最近の成果について紹介する.

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農芸化学@High School
  • 山口 幸大, 小澤 一毅, 山田 亘騎, 平塚 葵, 三木 麻衣
    2019 年 57 巻 12 号 p. 772-775
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    本研究は日本農芸化学会2019年度大会(開催地:東京農業大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表されたものである.様々な能力を有し人類によって様々に利用されている微生物は,燃料電池に利用することもできる.本研究では,霞ヶ浦の底泥を研究素材として,底泥を利用して実際に発電が可能であることを示し,また泥中には発電能力を利用可能な細菌が普遍的に棲息していることを強く示唆する結果を得た.本研究は,発電への微生物利用を切り開く可能性を秘めており,研究の将来性が学会から高く評価された.

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