近年,機能性表示食品をはじめとしてさまざまな食品のパッケージに見かけることが多くなった「GABA」の文字.GABA(ギャバ)は野菜や果物などに含まれるアミノ酸の一種であるが,さまざまな機能性が報告されていることから機能性食品への応用が拡がっている.GABAはもともと医薬品として用いられていたが,食薬区分の見直しにより食品としての活躍の場が拡がった.しかし,医薬品としてはGABAは化学合成法で作られていたが,食品として使うには,化学合成ではなく,安心して使える天然由来のGABAが求められた.われわれは,天然由来の高純度GABAを開発するにあたり,食品由来の乳酸菌を用いた大量生産技術の確立から,独創的な機能性の研究,そしてさまざまな食品にGABAを配合する際の応用技術まで,GABAに関する包括的な研究開発を行ってきた.本稿ではどのようにしてGABAを開発し,どのようにして市場を開拓してきたかについて解説する.
L. Maillardが,1912年に糖とアミノ酸を反応させ,Maillard反応もしくはアミノカルボニル反応を見いだしたとき,反応溶液が茶色くなり,その茶色い物質をメラノイジンとした.それ以来メイラード反応による食品の着色・褐変は主に高分子褐色色素であるメラノイジンの形成によると考えられていたが,近年さまざまな低分子のメイラード色素が報告され,低分子色素の重要性が再認識されている.
糖質は,細胞のエネルギー生産の源として利用されるほか,糖が連結した「糖鎖」としてタンパク質や細胞膜に存在し,生体分子と細胞の機能維持に不可欠である.筆者はこれまで,糖質の代謝分解に関わる微生物酵素の機能について,分子レベル・細胞レベルの双方から研究に取り組んできた.本稿では,次の2つの研究内容について解説する.第1部では,カビ由来の糖質分解酵素を利用した糖タンパク質調製法について解説する.第2部では,パン酵母の細胞内で働く糖質分解酵素が関わる栄養応答の仕組みについて解説する.