化学と生物
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59 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 新たなDNA/RNA制御技術基盤の確立に向けて
    田村 泰造, 中村 崇裕
    2021 年 59 巻 3 号 p. 113-121
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    標的遺伝子を配列特異的に捕捉する核酸結合モジュールは,近年開発が進む遺伝子操作技術の根幹をなす重要な基盤技術であり,新たなモジュールの登場は技術開発レベルを加速させ,革新的な新規技術体系を生み出す原動力となっている.本稿では植物由来の新規モジュール,PPRタンパク質を用いた核酸代謝制御ツールの開発について紹介する.PPRタンパク質は真核生物においてDNA/RNAを対象とする多様な核酸代謝に寄与しており,核酸代謝制御ツールへの利用に高い潜在性を有する.また,従来の核酸結合モジュールにない特性を備えもつことから,現行の遺伝子制御技術をさらに発展させる革新的な基盤技術となることが期待される.

  • 味細胞の機能調節から分化/増殖に対する影響まで
    髙井 信吾, 重村 憲徳
    2021 年 59 巻 3 号 p. 122-129
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    現在,さまざまな生活習慣病,特に肥満や高血圧,糖尿病が世界的に深刻な問題となっている.これらの疾病の根本的な予防と治療には,食事を含む生活習慣への介入が不可欠であり,それにはわれわれの摂食行動が味覚を通じてどのように形成されるかを理解する必要がある.味覚は全身の栄養状態の影響を受けて動的に調節されることがわかっており,栄養代謝にかかわるホルモンもその調節に寄与している可能性が高い.本稿では糖摂取に応じて膵臓より分泌されるインスリンが味覚器の機能や代謝に及ぼす影響について,過去の報告と,味蕾幹細胞3次元培養系を用いたわれわれの最新の研究結果を交えて総覧する.

  • 腸内細菌とインフルエンザ
    長井 みなみ, 一戸 猛志
    2021 年 59 巻 3 号 p. 130-136
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症である.A型インフルエンザウイルスは,オルソミクソウイルス科に属するウイルスでエンベロープをもつ.ウイルス粒子中にはゲノムとして8本のマイナス鎖一本鎖RNAが存在し(3),ウイルス粒子表面には主要な防御抗原となるヘマグルチニン(HA)やノイラミニダーゼ(NA)がある(図1).インフルエンザウイルスは,感染者の咳やくしゃみによって生じるウイルスを含む飛沫が周囲の人に飛び散るか(飛沫感染),ウイルスが付着したドアノブや電車の吊革などに手を触れて,その手で鼻などに触ることによって感染が起こる(接触感染).

  • 生物触媒としての白色腐朽菌による脱リグニン同時糖化発酵
    亀井 一郎
    2021 年 59 巻 3 号 p. 137-143
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    白色腐朽菌と呼ばれる一群の糸状菌は木材を白く腐らせることからその名がついたきのこの仲間であり,唯一植物細胞壁のすべての成分を分解できる.その最大の特徴は,植物細胞壁の中で,セルロースやヘミセルロースといった多糖類を守る鎧の役割を果たすリグニンを分解できることにある.バイオマスから有価物を生産する研究が盛んであるが,強固なバイオマスの変換に必要な脱リグニン・糖化・発酵すべての能力をもつ特殊な白色腐朽菌が存在することが明らかとなってきた.また,白色腐朽菌は他の微生物種と共培養できる組み合わせがあることもわかってきた.これら白色腐朽菌を用いたバイオマス変換研究について筆者の研究を中心に概説する.

  • 土壌をゼロから創製する
    篠原 信
    2021 年 59 巻 3 号 p. 144-150
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    農耕が始まって1万年,食糧生産を支え続けた土壌.足下のありふれた存在である土壌.しかし土壌を人工製造する技術はなく,土壌を改善する「土づくり」では,堆肥を入れて耕すほかは,ミミズなどの土壌生物の成り行きに任せるしかなく,10年もの歳月が必要とされた.土壌の物理性,化学性,生物性をデザインすることは困難だった.それは,土壌微生物を土壌以外の媒体に移植し,活動させる技術がなかったから.しかしついに,非土壌媒体に微生物を移植し,活動させる「土壌化」の技術が誕生した.私たちの食を支える「土壌」を創出する技術は,農業を基礎から創りかえるポテンシャルをもつ.

プロダクトイノベーション
農芸化学@High School
  • 杉山 賢大
    2021 年 59 巻 3 号 p. 156-159
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,空気中に飛散しているキノコの胞子由来のDNAを検出することでキノコの生育域と種の特定を行うことを目的にした.独自に開発した簡易的な空中微粒子採取装置を用いて胞子を収集し,PCR法によってDNAを検出することにした.はじめにシイタケの子実体のDNA増幅を行い,胞子由来のDNAを検出できるのか検証したところ,良好な結果が得られた.次に野外調査を行った.静岡県の山麓の空気中に飛散している胞子由来DNAを分析した結果,マツタケと推定できる胞子由来のDNAを検出することに成功した.さらに採取装置の設置地点周辺にて実際にマツタケを発見できたことから,自然界に生育するキノコの種の特定が簡便に行えることがわかった.静岡県ではこれまでマツタケの生育を確認できていなかったが,県内でマツタケの生育を確認できたことは本研究での新たな発見である.

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