化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
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59 巻, 7 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 活性酸素(ROS)生成抑制のための巧妙な分子メカニズムを備えたC3型光合成の進化
    古谷 吏侑, 三宅 親弘
    2021 年 59 巻 7 号 p. 320-332
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    光合成は,光エネルギーを化学エネルギーに変換し,大気中の二酸化炭素(CO2)を有機化合物へ固定し,糖を生成する反応である.しかし,光エネルギーを化学エネルギーへ変換する光合成電子伝達反応は,常に活性酸素種(ROS)生成の危険性を伴う.ROSは,光合成器官に酸化傷害を与えることで,光合成活性ならびに生育を大きく低下させる.近年,植物は光合成電子伝達反応におけるROS生成を抑制するメカニズム—P700酸化システム—を備えていることが明らかとなってきた.本稿では,C3植物において“P700酸化”を担う分子メカニズムについて紹介する.

  • 欠乏の観点から脂質栄養の重要性を明らかにする
    市 育代
    2021 年 59 巻 7 号 p. 333-338
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    哺乳動物において,n-3系及びn-6系多価不飽和脂肪酸は食事からの摂取が必要な脂質である.哺乳動物でこれらの多価不飽和脂肪酸が欠乏すると,ミード酸(20: 3n-9)というn-9系の多価不飽和脂肪酸が内因的に産生される.さらに,脂肪酸不飽和酵素FADS2欠損マウスに多価不飽和脂肪酸欠乏食を与えると,シアドン酸(20: 35,11,14)という非メチレン介在型の多価不飽和脂肪酸が検出され,哺乳動物には代替的に多価不飽和脂肪酸を補う機構が存在する.また,多価不飽和脂肪酸の中でも炭素数と二重結合が多い高度不飽和脂肪酸が欠乏すると,肝臓では中性脂肪だけでなくコレステロールも蓄積し,脂肪肝がより悪化することが示唆された.

  • ミトコンドリア創薬の基礎研究と臨床応用
    鈴木 健弘, 阿部 高明
    2021 年 59 巻 7 号 p. 339-345
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    生体エネルギー産生の90%以上を担うミトコンドリアの機能異常に起因するATPの減少,酸化ストレス増加とアポトーシスの惹起などにより引き起こされるミトコンドリア病は確立した治療法のない難治性疾患群である.ミトコンドリア病患者は神経,心臓,腎臓,筋肉,感覚器など多彩な臓器障害を呈するが,遺伝性のミトコンドリア異常がない患者の神経変性疾患や,心筋症,心不全,急性腎臓障害や慢性腎臓病などの疾患でもミトコンドリアの異常がその病態機序に深くかかわる(graphical abstract).このためミトコンドリアを標的とした治療は神経難病や難治性の心疾患・腎疾患患者の新たな治療戦略としても近年注目を集めている.本解説ではミトコンドリア病治療薬開発の最近の知見と臨床応用について概説する.

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