化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
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61 巻, 11 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 持続可能な食料生産への挑戦
    榎 康明, 山口 智子, 筒浦 さとみ
    2023 年 61 巻 11 号 p. 530-538
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル フリー

    世界人口の増加とそれに伴う食料需要が増加しているなかで,土地や淡水,栄養素等の限りある資源に依存する従来型の食料生産に代わる持続可能な食料生産システムの開発・普及が求められている.水産養殖と水耕栽培の統合であるアクアポニックスは,従来型の食料生産が抱える課題を解決できる持続可能性の高い食料生産システムと考えられており,近年,急速に開発と普及が進んでいる.本稿では,アクアポニックスの概要について,筆者らの取り組みや最近の知見も交えて包括的に解説する.

  • フコイダンの免疫制御作用を中心に
    宮﨑 義之
    2023 年 61 巻 11 号 p. 539-546
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル フリー

    四方を海に囲まれた日本の近海には,1,500種ほどの海藻が生育しており,海藻は日本において極めて重要な海産資源の一つとなっている.海藻の利用範囲は食にとどまらず,医薬品や生化学工業製品の製造,そして,バイオエネルギーへの変換など,ブルーカーボンやSDGsに関わる様々な事業が展開されている(表1).また,私たち日本人が身体に良い食材として昔から好み食している海藻は,酢の物やサラダ,みそ汁の具など日常の食卓に欠かすことはできない.対して,海藻食の文化を持たない英米では,海藻を「seaweed(海の雑草)」と表記しているが,健康志向が高まるにつれて「sea vegetable(海の野菜)」という呼び名も広まっている.その背景には,2013年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録があると思われる.海藻は,和食文化を支える「出汁」の素材として欠かすことができず,また,豊富に含まれる多種のミネラルやカロテノイドおよび水溶性食物繊維は海藻に高い栄養的価値を与えるとともに,心血管疾患等の発症リスク低減に寄与することが疫学的な研究調査から明らかにされている(1).本稿では,海藻“ぬめり”成分の硫酸化多糖類(特に,フコイダン)が持つ免疫調節作用を中心に,その健康維持に寄与する生理機能に関する科学的知見を紹介する.

  • 分光法や分解法を駆使して,複雑な化学構造に迫る
    松下 泰幸
    2023 年 61 巻 11 号 p. 547-553
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル フリー

    植物は細胞壁の集合体であるといえる.その細胞壁の構造は,鉄筋コンクリート構造と非常に似通っており,リグニンはセメントの役針を果たす.リグニンは,モノリグノールとよばれるフェニルプロパノイドがラジカルカップリングを繰り返すことにより形成されるが,モノリグノールのラジカル共鳴体は複数存在するため,カップリング様式も多数となり,結果的にリグニンは繰り返し単位を持たない複雑なポリマーとなる.この複雑な構造を持つリグニンをいかに解析するかについて解説する.

セミナー室
生物コーナー
農芸化学@High School
  • 岸上 栞菜
    2023 年 61 巻 11 号 p. 569-571
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル フリー

    ニハイチュウ(二胚動物門)は,底生頭足類の腎嚢に片利共生する体長数mmの多細胞動物である.ニハイチュウには蠕虫型と滴虫型の2タイプがあり,蠕虫型個体が腎嚢に接着する頭部(極帽)の形状は腎嚢表面の凹凸によって異なるとされている.蠕虫型ニハイチュウの極帽は幼生の段階ではすべて同じ円錐形であるが,極帽が円錐形の種は腎嚢の窪みにのみ接着し,成長しても円錐形を維持した.一方,極帽が円盤形の種は平坦な場所にのみ接着し,成長しても極帽は成長しないか途中で成長が止まり,極帽の形が円盤形に変形した.幼生の段階では同じ表現型を示す別種の生物が,成長の過程で異なる表現型に移行する仕組みを明らかにするための基礎的な知見を得た.

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