光合成においてCO2固定反応を触媒するリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)は,主要な律速因子と考えられる.それは,この酵素の触媒速度が非常に遅いこと,CO2固定反応がO2により競合阻害を受けることに起因する.陸上植物の中にはCO2濃縮回路を持つC4植物が存在し,C4植物のRubiscoは一般的な光合成反応を行うC3植物よりも高い触媒速度を示す.Rubiscoは,大サブユニット(RbcL)と小サブユニット(RbcS)の2種類のタンパク質で構成されており,近年,Rubiscoの酵素特性の決定においてRbcSが重要な役割を担っていることが明らかとなってきた.本稿では,C3植物であるイネのRbcLとC4植物であるソルガムのRbcSのハイブリッドRubiscoをイネで発現させた研究例を中心に,RubiscoにおけるRbcSの機能,RbcSを利用した光合成能力の改良の可能性について解説する.
メイラード反応は食品の加熱や貯蔵中に頻繁に起こり食品の品質に多大な影響を及ぼすと同時に,生体内においても徐々に進行し老化や各種病態の進展に関与する.反応条件により生成物は多種多様に変容するため,生成物の構造や反応機構が不明なものが多い.そのため,食品の品質や生体の病態に関わる生成物の探索と解析・評価法の確立が望まれている.しかし近年,分析装置の高度化と解析技術の進展に伴い,これまで測定が困難とされてきた物質についてもアプローチできるようになってきた.そのような背景の下,メイラード反応の機構解明と制御法の確立に向けて筆者が取り組んできた研究成果について紹介する.