海藻類を陸で育てる研究開発により,国内外における事業規模での生産事例が増えている.身近な浜辺や岩場のどこにでも生えていそうな海藻類だが,目的とする種類を安定的に栽培するためには,陸の作物同様に丁寧な苗作りや栽培環境の整備が欠かせない.また,その栽培技術には海藻特有の柔軟な環境適応能力が活かされている.本稿では,主に国内における技術開発の経緯をまとめるとともに,筆者が取り組んでいる三陸地域における研究事例を紹介し,今後の海藻類陸上養殖産業の発展にむけた課題を整理したい.

近年,食品ならびに食品成分による健康増進効果や疾病予防機能などの生体調節作用が注目を集めており,その作用メカニズムを解明する研究が盛んに行われている.マイクロRNA(miRNA)は線虫において発見された低分子RNAであり,ヒトやマウスなど他の生物種でも発現していることや,標的となる遺伝子の機能を制御する働きを有していることが明らかになり2000年ごろから研究が飛躍的に進んできた.miRNAは細胞生物学的に重要な生命現象に関与しており,食品の機能性発揮に影響を与える新しい因子としての報告も増えている.本稿では,代表的な機能性食品成分の一つであるフラボノイドの生体調節作用とmiRNAの関係について最新の研究を紹介する.

アルツハイマー病は最も患者数の多い認知症であり,長寿国である日本にとって今後も増加の一途を辿ることは必至である.現在のところ,アルツハイマー病を発症してから治す方法はなく,予防することが重要となってくる.アルツハイマー病の初期病理ではアミロイド-βの蓄積が確認されるが,スフィンゴ脂質の一つセラミドにはアミロイド-βの除去を手助けする仲介役としての働きが示唆される.したがって,セラミドを普段の食事から摂取することで新たなアルツハイマー病の予防法として期待がなされている.本稿では,植物に存在する植物型セラミドに着目し,哺乳型との効果の違いやアミロイド-β除去機構を中心に概説する.

細菌感染症における薬剤耐性菌の蔓延が懸念されている.そのような危機的状況の中,抗菌薬の開発と細菌の耐性獲得は鼬ごっこであり,抗菌薬に換わる新たな対策が強く望まれている.近年,その一つの候補としてバクテリオファージ(以下,ファージ)を用いて宿主細菌を殺菌する,いわゆる“ファージ治療”に対する関心が世界中で高まっている.本稿では,なるべく多くの分野の読者に興味を持ってもらえるように,ファージの特性,宿主細菌への感染,宿主細菌のファージ耐性,人工ファージの合成など,薬剤耐性菌のファージ治療に関わると思われる重要な内容を中心に,ポスト抗菌薬時代に向けたファージ治療の可能性について解説する.
