化学と生物
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61 巻, 9 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • バイオインフォマティックス活用
    周 英鈺
    2023 年 61 巻 9 号 p. 410-418
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/09/01
    ジャーナル フリー

    バイオインフォマティクスは生物医学で重要な応用例として,ドラッグデザインや新薬開発などでも応用されている.バイオインフォマティクスが提供するデータとソフトウェアは,創薬ターゲットの選択と薬剤分子の設計の指針となる.われわれは肥満による慢性炎症と結腸直腸がんの治療に関する天然物開発においてバイオインフォマティクスを応用した2例を紹介した.ビッグデータの利用が,がん等の疾患に関わるバイオマーカーとそれを標的とした天然物の探索において有用であることを示唆している.

  • 固体NMRと計算科学による天然有機化合物の会合体の研究
    梅川 雄一, 篠田 渉, 村田 道雄
    2023 年 61 巻 9 号 p. 419-431
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/09/01
    ジャーナル フリー

    抗真菌剤・アムホテリシンBはタンパク質に結合することなしに,薬理活性を示す医薬品である.この抗生物質は,真菌類の細胞膜に含まれるエルゴステロールと特異的に複合体を形成することによって,膜を貫通する形で筒状の自己会合体(樽板型)を形成し,その孔を通ってイオンが移動することによって殺菌作用を示すとされてきた.しかし長年,この樽板型構造は実験的に解明されることはなかった.脂質膜中でのみ形成される分子集合体の構造研究については,抗菌ペプチドなどで例があるのみで,非ペプチド性化合物(いわゆる天然物)ではほとんど報告されていなかった.これは,ペプチドと異なり,NMRで観測するための同位体標識を天然物に導入するのが困難であったことが理由であると考える.今回,筆者らがこの難題に取り組み,原子レベルで会合体構造の解明に成功したことによって,今後の新薬開発等への応用研究が進むことが大いに期待される.

  • 農業に役立つコウモリの超音波
    中野 亮, 伊藤 彰夫, 德丸 晋虫
    2023 年 61 巻 9 号 p. 432-438
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/09/01
    ジャーナル フリー

    農業害虫を含むヤガ類は,幼虫が農作物を食害することでその商品価値を著しく低下させる.これを防ぐために化学殺虫剤を散布することが多いが,害虫に殺虫剤抵抗性を発達させる場合があるほか,生態系への悪影響が世界的に問題となっている.そこで,殺虫剤のみに依存しない害虫防除技術として,超音波を用いた物理的防除技術の開発を進めている.ヤガ類は夜間に飛び回るが,コウモリがエサを捕らえるために発する超音波を聞くと,コウモリに食べられまいと逃げ出すなどの行動を示す.ヤガ類が忌避し,聴覚的に慣れにくい超音波を農作物の栽培圃場に照射することで,その飛来数と産卵数,ひいては殺虫剤の散布回数を少なくすることを可能にする.

  • 環境調和型の機能性材料合成法の開発を目指して
    根本 理子
    2023 年 61 巻 9 号 p. 439-444
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/09/01
    ジャーナル フリー

    生物が形成する鉱物(バイオミネラル)は様々な優れた特性(強磁性,耐摩耗性,フォトニック結晶特性など)を示す高機能材料である.さらに生物は生体内の穏和な環境で,バイオミネラルを形成することができる.そのため,バイオミネラル形成機構の解明は,環境調和型の機能材料合成法の開発につながることが期待される.筆者はこれまで,次世代シーケンサー(NGS)を用いてRNAシーケンスを行い,バイオミネラル形成時におけるトランスクリプトームを明らかにするとともに,バイオミネラルのプロテオーム解析により,バイオミネラル形成に関わるタンパク質を同定してきた.

セミナー室
農芸化学@High School
  • 堀井 康世, 関 侃弥, 夏井 玲
    2023 年 61 巻 9 号 p. 453-455
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/09/01
    ジャーナル フリー

    食品ロスとは,本来可食部であるにもかかわらず廃棄される食品のことである.各世帯で発生する食品ロス量を食品別にみると,野菜類が47.7%を占めており,最も高い割合を占めている.野菜には再生可能なものが多く存在することから,これらの特性を活かしてリボーンベジタブル(再生野菜)を行うことで,食品ロス量削減の効果的な取り組みへと繋げていくことができる.そのために,単に水を用いるだけでなく,安価な活力剤を用いて収量を上げることができないかと考え,添加濃度や頻度を変えて実験を行った.実験には豆苗を用い,発芽後,一定期間経過した茎を切断し,その後の伸長量で比較を行った.

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