プラスミドは微生物間の遺伝子の授受に寄与し,微生物の急速な進化や適応を促進する遺伝情報の「運び手」である.プラスミドは分子生物学の研究・開発のツールとして利用されるとともに,多剤耐性菌の出現・蔓延の原因にもなりうる.近年のDNA塩基配列決定法の技術革新に伴い,およそ60,000種類のプラスミドの全長配列が公的データバンクに登録され,その数は年々増え続けている.しかし,そこに登録される情報は不統一であり,各プラスミドの性質を知るのが困難な状況となっている.本稿では,プラスミドについての適切な情報整備とキュレーションの必要性と,「プラスミド学」という学術基盤の再整備に向けて行っている筆者らの試みについて述べる.

薬剤耐性病原菌の蔓延は,公衆衛生に対する大きな脅威である.既存の抗生物質には耐性菌が存在しており,ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌も出現している(1).何も対策を取らなければ,2050年には全世界で薬剤耐性菌に起因する年間死者数が1000万人へと爆発的に増加する危険性が警告されている(2).危うい状況を打開するため,細菌の環境応答情報伝達系である二成分情報伝達系(two-component system; TCS)(3, 4)が新たな抗菌薬の標的として注目されており,その阻害型薬剤から次世代型の抗菌薬を創り出す可能性が模索されている(5, 6).本稿において,背景や最近の進展について解説したい.

植物の体表には気孔と呼ばれる穴が無数に存在し,光に応答して開口する.植物は気孔を介して大気からCO2を体内に取り込み,光合成の炭素源として利用する.これまでに,気孔孔辺細胞の浸透圧が光に応答して増加し,それに伴い細胞が膨張変形して気孔が開口することが知られている.また,孔辺細胞の浸透圧を調節する物質として,主にカリウムイオン(K+)の貢献が明らかにされてきた.ところが,最近筆者らはシロイヌナズナを用いた遺伝学的な研究から,孔辺細胞のマグネシウムイオン(Mg2+)輸送も気孔開口に重要であることを見出した.本稿では,この新たなトピックを取り上げ,気孔開口を仲介するイオン輸送について概説する.

陸生クマムシ(Tardigrada)の生存戦略に影響を与える環境要因を解明することは,野生株探索や培養法の向上に有用な知見となりうる.棲息地の日射量,温湿度等の実証調査を約15か月間行い,クマムシや共生微生物の棲息数を定量的に分析した.その結果,「日射量」「湿度変動」がクマムシの生活環に重要な要因であることが明らかとなった.さらに,光照射実験から形態や活動の変化を捉え,生存戦略との関連を報告した.