ストロミュールは,植物細胞内で色素体から伸びる管状構造であり,その存在は19世紀から認識されていたが,長い間その機能や形成機構についての理解は進んでいなかった.近年の研究により,ストロミュールが非生物的ストレス応答や植物免疫に関与する可能性が示され,さらに細胞骨格や小胞体との相互作用がその形成に関与することが明らかにされてきた.本稿では,1997年のストロミュール再発見を契機に進展した研究の成果を基に,その細胞内での動態,機能,形成機構について概説し,色素体のダイナミックな姿を紹介したい.

芽生えた環境から移動することのできない植物は生体内の代謝経路を変化させたり,形態を変えたりすることで,生育環境中のストレスに適応している.代謝とは生体成分の合成や分解を始めとした生体内で起こる化学反応のことである.1つの物質を産生するだけでも複数の反応経路が存在する場合があり,さまざまな酵素タンパク質や輸送タンパク質が関わっている.近年,植物がリン酸欠乏に晒された際には,まず小胞体(endoplasmic reticulum; ER)成分がオートファジーによって分解され,リン酸欠乏ストレスが長期化した場合は細胞内酵素が核酸やリン酸エステル,リン脂質等を分解することでリン酸をリサイクルしていることが報告された(1).本稿では,リン酸欠乏ストレスに晒された植物がどのような分子機構で細胞内のリン酸をリサイクルしているのか,脂質代謝とオートファジーの観点から説明する.また,脂質代謝とオートファジーが互いに与える影響について最近の知見も紹介し,今後の植物研究進展に向けた所見を述べる.

コレステロールとビタミンは生体内で必須の成分であり,食物からの吸収は栄養学の観点から非常に重要で多くの研究がなされてきた.体内量を厳密にコントロールするためには,吸収と排泄のバランスでコントロールする必要がある.コレステロールと脂溶性ビタミンの体内動態や役割は古くから研究されてきたが,取り込みと排出を担うトランスポータータンパク質については,解析が困難な膜タンパク質であることも理由で,意外に研究が進んでいない.疎水性の高いコレステロールと脂溶性ビタミンは,トランスポーターによる輸送が想定されていなかったが,実際にはトランスポータータンパク質によって輸送されることが明らかになってきた.

ゲノム編集が植物育種において非常に強力なツールであることは,既に広く認識されている.本稿ではシリコン製の針状材料,マイクロニードルアレイを用いて,タンパク質ベースのゲノム編集技術を植物に適用する方法について紹介する.具体的には,実用植物であるダイズの茎頂分裂組織を標的としたin plantaゲノム編集の試みと,植物組織内で効率よくCas9タンパク質が放出される新しい表面修飾ポリマーについて解説する.

シキミ酸の需要が高まる中,トウシキミからの供給が課題となっている.我々は新たなシキミ酸供給源の探索を行った.本研究で注目したCalophyllum inophyllum(テリハボク)は,ブラジルやインドで調査されたシキミ酸の代替供給植物を上回るシキミ酸を含有していた.特に果皮は,トウシキミ果実(八角)に匹敵あるいはそれを上回るシキミ酸を含有しており,これらの結果はシキミ酸代替供給植物の探索研究において最大の発見である.