化学と生物
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62 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • プロテインクライシスのリスク低減策
    佐本 将彦
    2024 年 62 巻 3 号 p. 115-121
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    食品の3大栄養素について供給サスティナビリティーを課題にすると,大豆はタンパク質供給において最も重要な農作物であるかもしれない.タンパク質の栄養価値,供給性や経済性に優れているからである.一方で,世界的にみれば大豆タンパク質は飼料としての利用がほとんどで,食物として有効に利用されているとは言えないのが現状である.大豆タンパク質は,古くから将来の人口増加に対する食物タンパク質の供給不安を指摘したプロテインクライシス(1, 2)のリスク低減策として着目されており,近年では環境課題からプラントベース食品としてその加工適性の高さゆえに様々な代替タンパク質食品へ利用され,応用の幅が広がりつつある.あらためてプラントベース食品としての役割について述べたいと思う.

  • 食品由来成分によるSREBP活性の調節メカニズム
    小髙 愛未, 井上 順
    2024 年 62 巻 3 号 p. 122-128
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    SREBP(Sterol-regulatory element-binding protein)は脂質代謝を包括的に制御する転写因子である.脂肪酸およびコレステロール合成に関与する酵素群の遺伝子発現を制御しており,生体内の脂質代謝制御において中心的な役割を担っている.肥満や脂肪肝さらにはII型糖尿病状態では,肝臓におけるSREBP-1cの過剰な活性化が起きており,その抑制は症状を改善することから,SREBP-1cの活性抑制はこれらの疾患の治療標的として期待されている.近年,SREBP活性を抑制する生体成分や天然由来の低分子化合物が報告されており,本稿では細胞におけるSREBP活性制御機構に加え,それらの化合物の作用機序を紹介する.

  • このユニークな酵素はどこから来たのか
    中村 彰宏, 鈴木 義之, 小笠原 渉
    2024 年 62 巻 3 号 p. 129-136
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    タンパク質分解酵素(プロテーゼ,ペプチダーゼ)は微生物から高等生物まですべての生物種が持つ酵素であり,その機能は栄養の資化に加えて,タンパク質の成熟や免疫反応など多岐にわたる.筆者らが発見したPseudoxanthomonas mexicana WO24由来のエキソ型ペプチダーゼはユニークな機能的・構造的特徴を有していた.本稿では微生物特有のペプチダーゼの発見から創薬までの道のりを紹介し,その過程で様々な酵素学的な基礎知識を解説したい.

  • 高等植物葉緑体ゲノム改変技術の進展とその応用
    中平 洋一
    2024 年 62 巻 3 号 p. 137-144
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    「葉緑体」は光合成で獲得したエネルギーをもとに,さまざまな代謝産物を合成する“天然の化学工場”である.また,葉緑体は細胞内共生したシアノバクテリアを起源とするため,独自のDNAを有している.高等植物の葉緑体ゲノムは120個程度の遺伝子がコードされた小さな環状二本鎖DNAであるが,1細胞中に1,000コピー以上も存在する.この圧倒的なコピー数を背景とした(大腸菌にも匹敵する)目的タンパク質の大量発現が,葉緑体ゲノムを改変する「葉緑体工学」の利点である.本稿では,葉緑体工学の技術的な背景を概説するとともに,当該技術を用いて開発が進められている「食べるワクチン植物」などの有用組換え植物について紹介する.

  • 未病期に活躍するストレス応答機構について考察する
    伊東 健, 葛西 秋宅, 多田羅 洋太
    2024 年 62 巻 3 号 p. 145-153
    発行日: 2024/03/01
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    未病という言葉は中国伝統医学に由来する言葉であり,今日では徐々に発症する変性疾患において,健康と病気の間のpre-diseaseの期間として一般的に捉えられている.未病期は代謝障害や若干の不定愁訴はあるものの,臓器障害には至っていない段階として捉えることができる.ストレス応答機構は未病段階での恒常性維持機構に重要であるが,その詳細はよく理解されていない.

バイオサイエンススコープ
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