これまで“くすり”と言えば,有機合成を駆使して創出してきた低分子薬剤が大半であったが,研究シーズの枯渇や開発段階でのドロップアウトなど問題が顕在化している.一方,COVID-19ワクチンや抗体医薬などのバイオ医薬品の開発により化学療法の在り方が大きく変わりつつある.しかし,これらの薬剤は適応性,免疫性,特異性,副作用,製造コストの面でそれぞれ一長一短があり,諸課題を解決する新たなモダリティの創出が急務であった.近年,分子量1000~3000程度の“特殊環状ペプチド”が脚光を浴びるようになり,体内安定性や細胞膜透過性の低さなどペプチド特有の弱点を克服しつつ創薬へと結び付ける研究が活発化している.

大分県を代表するブランド魚「関さば」は刺身で食べられるサバとして珍重されている.伝統的に受け継がれてきた漁法,流通方法などがサバの死後変化の進行を遅らせ,刺身として食べられることに大きく貢献していることを科学的分析結果に基づいて解説する.

アルドキシム(RHC=NOH)は植物,動物および微生物から見出される含窒素化合物である.植物においてアルドキシムはアミノ酸から合成され,様々な植物特化代謝物(青酸配糖体やグルコシノレートなど)や植物ホルモン(インドール酢酸およびフェニル酢酸)の生合成前駆体として利用されるハブ化合物である.これらの生合成にはシトクロムP450(P450)が関わっていることが知られており,近年,アルドキシムの新たな機能や,アルドキシムを介した生合成経路の多様性および生合成酵素に関する知見が蓄積している.本稿では,植物のアルドキシムを介した代表的な代謝経路およびアルドキシム合成・代謝酵素と最近の話題を紹介する.

雄に特徴的な求愛行動,装飾的な外部形態などに現れる二次性徴形質の獲得進化は,多彩な繁殖戦略を可能とし,真骨魚類の爆発的な種分化と繁栄をもたらした重要な要因と考えられる.この進化には,約3億年前に真骨魚類の共通祖先で起きた全ゲノム重複が大きく貢献したことが予想される.全ゲノム重複による脊椎動物の進化を提唱された大野乾博士にちなんで,全ゲノム重複により重複した遺伝子はオオノログと呼ばれる.オオノログの獲得と分子進化は,真骨魚類の美しさや多様化にどのような影響を与えたのか,オオノログの新機能獲得や役割分担の道筋には謎が多く残されている.本稿では,全ゲノム重複による男性ホルモン(アンドロゲン)受容体遺伝子(遺伝子名・タンパク質名を真骨魚類ではar・Ar, 四肢動物ではAR・ARと表記)の重複進化に着目し,真骨魚類の2つのar遺伝子(arオオノログ)の役割について,メダカar変異体を用いた解析を紹介し,アンドロゲン依存的に発現する二次性徴形質の多様化とar遺伝子重複との関連性を解説する.
