800種以上が知られるカロテノイドは,ルテインやアスタキサンチン,フコキサンチンなどを代表として,それぞれ黄色や橙色など固有の色彩と高い抗酸化力を持つ共通点がある.大部分は脂溶性を示し,細胞内の油滴や膜脂質,光化学系などに局在する形で分布するが,サフランやクチナシ由来のクロシンのように糖などをエステル結合することで親水性や分散性を高めるものや,タンパク質に結合することで水溶液中での機能を発揮する例が知られている.本稿では,近年同定が進みつつある水溶性のカロテノイド結合タンパク質の紹介を中心に,その生物分布や機能推定,および産業利用を含めた将来展望について述べたいと思う.

食品の供給を海外に大きく依存している日本人にとって輸入食品の安全性は重要である.輸入食品の安全性は,輸出される国における管理,輸入時の水際での管理および輸入後の国内での管理によって守られている.これら行政による安全管理のしくみや結果を理解することにより,信頼関係と安全に対する安心を得ることができる.本稿では,輸出時,輸入時および輸入後の各段階における輸入食品の安全管理体制のしくみと行政,食品事業者や消費者等との信頼関係を得るために重要となるリスクコミュニケーションの役割について述べる.

アミドは極めて重要な化学結合の一つである.そのため,安価で取り扱い容易な基質から,高効率的かつ環境調和性に優れた方法でアミドを合成する化学反応の開発が強く求められている.最も理想的なアミド合成法は,水のみを副生成物とする,触媒を用いたカルボン酸とアミンの脱水縮合反応であろう.これまでに,国内外で数多くの脱水縮合アミド化触媒が開発されてきたが,ホウ素触媒を利用したアミド化反応の進展は目覚ましく,最近では,分子骨格内に複数のホウ素原子を有する「多核ホウ素触媒」が創成されている.本稿では,多核ホウ素触媒を用いた触媒的脱水縮合アミド化反応に関する最新の研究について解説する.

メタノール資化性酵母(C1酵母)はメタノールを唯一の炭素源として生育することができ,メタノール培養時には,メタノール代謝酵素が細胞内可溶性タンパク質の数十パーセントを占める程に強力に誘導生産され,これらの酵素を内包する細胞内小器官ペルオキシソームが発達する.異種タンパク質の生産に利用される強力なメタノール誘導性遺伝子発現及びペルオキシソーム動態はメタノール濃度によって厳密に制御されるが,そのシグナル伝達経路については未解明であった.本稿では,濃度応答性メタノール誘導とペルオキシソーム分解(ペキソファジー)抑制におけるシグナル伝達の分子機構を紹介する.
