開智国際大学紀要
Online ISSN : 2433-4618
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21 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 古賀 万由里
    2022 年 21 巻 2 号 p. 83-96
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    マレーシアのエスニシティについて語る際、「マレー人」、「華人」、「インド人」という分類がよくなされる。これは政府が政策上分けたものであり、フォーマル・エスニシティといえる。インド人コミュニティは、出身地別、宗教別、カースト別に細分化されており、多数のサブ・エスニック集団が存在する。代表的な事例として、タミル人、テルグ人、マラヤーリ人、スリランカ・タミル人、ヒンドゥー教徒、ムスリム、シーク教徒、チェッティアールとサービス・カーストをとりあげた。結論として、マレーシア全体のエスニシティは、1)マレーシア人であるというナショナル・エスニシティ、2)インド人であるというフォーマル・エスニシティ、3)タミル人やテルグ人といった文化エスニシティから構成されるといえる。誰しもが二重、三重のエスニシティを持っている中で、時と場に応じてエスニシティが揺れ動いている。またエスニシティの複雑性は、各々の文化維持を可能にしているのと同時に、インド人として団結できない要因となっている。
  • 米ソ対立とスターリン・ノート
    清水 聡
    2022 年 21 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    本稿では、1950 年代の国際政治におけるソ連の講和条約計画について、日本とドイツの状況を比 較した。 冷戦の緊張のなかで、米ソ関係は絶えず悪化した。欧州情勢においては、ベルリン封鎖、東西ドイツの成立、そして西ドイツの再軍備政策がソ連外交を守勢へと追い込んだ。これに対して極東情勢では、中華人民共和国の建国と朝鮮戦争が、アメリカとソ連との国益が衝突した出来事となった。これらの出来事のなかで、日本とドイツの講和条約に関する問題は、1950 年代初頭に国際的な争点となった。アメリカ主導の対日講和案に対抗して、1951 年 9 月 5 日、ソ連は独自の対日講和案(グロムイコ提案)を示し、それをサンフランシスコ講和会議で発表した。1952 年 3 月 10 日、ソ連はさらに、欧州統合の一環である欧州防衛共同体計画の進展を防ぐために、独自の対独講和案(スタ ーリン・ノート)を米英仏に提案した。とくにスターリン・ノートは、中立を基礎としたドイツ統一提案であり、歴史家はその真意を明らかにすることに大きな関心を持った。 本稿では、ソ連の講和条約計画を検討することにより、ソ連が日本とドイツとを中立化することを追求し、さらにはソ連に有利な地域構造を構築する意図があったことを明らかにした。
  • ―RASIS と CIARA のトポロジカル関係―
    符 儒徳
    2022 年 21 巻 2 号 p. 109-126
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    本稿では,システム評価指標(RASIS)とセキュリティ構成要素(CIARA)に着目し,これらの相互関係を可視化するための構造モデルの構築を試みる。その前に,三方陣(3×3 magic square)とプラトン立体(Platonic solids)との関係により,セキュリティ構成要素(CIARA)に関する構造モデルが得えられたが,1次変換(線形変換:linear transformation)を行うことによりシステム評価指標(RASIS)とセキュリティ構成要素(CIARA)とのトポロジカル関係(topological relations)を築くことができ,この関係を利用すれば,システム評価指標に関するバランスの取れた構造モデルが同様に得られる。また,メビウスの帯(Möbius strip/band)を用いることにより,システム評価指標(RASIS)とセキュリティ構成要素(CIARA)を組み合わせた構造モデルを得ることができる。これにより,新しい RAS と CIA を提案することができる。さらに,この組み合わせた構造モデルを簡単に作れる方法も示す。その考察においてはモデルの合理性はあることが示唆された。
  • 伊野 連
    2022 年 21 巻 2 号 p. 127-137
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    ノーベル賞受賞者の物理学者レオン・レーダーマンは、彼の著書でハムレットの有名な言葉「この世界には、我々が哲学で夢見ている以上のものがある」を引用している。 哲学では、カントの批判哲学に代表されるように、我々は人間の認知能力の可能性と限界を常に特定するよう努めてきた。したがって、哲学的な側面からは、当然、現代物理学の結果に基づいて自己検証をおこなう必要がある。 この論文では、量子力学の創始者の一人であるヴェルナー・ハイゼンベルクの対話篇から、カントの哲学についてとても実り多い議論を採りあげ、その内容を精査する。 また、私は序説において、ヤスパースとヴィトゲンシュタインを不可知論に関して論ずる。
  • ソ ワイロン ヴァリアント
    2022 年 21 巻 2 号 p. 139-147
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    数百年に渡り、言語と音楽は深く繋がれていると思われ続けた。事実、語学学習を目的にとしての音楽学習を薦める語学教師と機構も見られる。しかし、実際に言語と音楽の相互関係をテーマとする研究はそう多くはない。言語と音楽は果して繋がりあるのか?音楽学習は実際に語学学習の役に立つのか?二つの疑問の答えを求めるため、本論文は言語と音楽の繋がりを探究することと記譜法を使用する発音教授の論理性と実現可能性をメインテーマとする。常用されている幾つかの発音教授法の説明、発音教授の際に出くわす問題点、発音と音楽の繋がりを調査する研究の議論と記譜法を使用するイントネーション、音節(syllable)と強勢(stress)の教授法の見本はすべて本論文に含まれている。COVID-19 の状況を踏まえて、本研究では一時的に執筆者を唯一の被験者とし、そして将来の発音教授と記譜法に携わる研究の基礎になることを目的とする。
  • 鳥越 淳一
    2022 年 21 巻 2 号 p. 149-160
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本人臨床家と米国人臨床家の依存性パーソナリティ障害(以下 DPD)の査定過程にどのような違いがあるかを考察することを目的としている。査定者の観察を数値化する SWAP-200 を介してアセスメントを行なった結果,米国人が典型的な DPD と理解する「DPD のプロトタイプ」(無力で従属的でしがみつくように過度の依存を求める人)は,日本人が理解する DPD の臨床像(消極的で離れていくことで他者に救済心を喚起し依存を許してもらう弱者)とは無相関であった。このような結果になったのは,米国では「依存」が非自律(非自立)性を意味し,査定者にとっては自我異和的で軽蔑の対象として映るのに対し,日本では「甘え」で説明されるような相手の善意をあてにして何かをしてもらいたいという欲求に基づく相互作用であり,査定者にとっては自我親和的であるためだと考えられる。日本において依存は「甘え」として文化に深く根差した感情であり,独特の対人関係パターンを規定している。そのため,DPD に関しては,原版 SWAP-200 とは異なる形で見直す必要があるように思われる。
  • ~安全の活動の促進要因および活性化指標の検討~
    宮入 小夜子
    2022 年 21 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、職場における小集団活動がどのように安全活動を促進させるのかにつき、その活性化要因を抽出し、活動の活性化度の指標について検討することで、安全活動の活性化モデルを構築することを目的とした。 安全(リスク低減)の活動は終わりがなく、システムや設備投資の一方で、安全に対する個々人の意識や行動は、教育・訓練や高い安全感度の集団規範など、さまざまな要因に影響されている。安全の小集団活動においては、ヒヤリ・ハットや気掛かり、相談事など、潜在的リスクを話しやすい職場風土であることが前提として必要と考えられているが、本研究においてはそのような条件について、心理的安全性とチームワークの尺度の信頼性や相関関係を用いて検証を行った。 その結果、安全の活動に積極的に取り組んでいる(活性)職場は、心理的安全性およびチームワークの下位尺度全てにおいて不活性職場よりも有意に高かった。また、「活動が活性化している状態」について、チームレベルと個人レベルの定性的な成果指標が抽出された。一方で、心理的安全性はあくまで必要条件であり、日々のチームワーク(活動)の条件整備が重要であるということが示唆された。
  • 符 儒徳
    2022 年 21 巻 2 号 p. 169-185
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    本稿では,大学 1 年生を対象にしたコンピュータ・リテラシーとデジタルリテラシーに関する調査を実施した結果について報告する。コンピュータ・リテラシーに関する結果はこれまでの先行結果と概ね整合している。また,概して個人属性やパソコン習熟度によってデジタルリテラシーに差異が確認された。さらに,コロナ禍によりオンライン授業が行われ,今まで以上に情報リテラシーやデジタルリテラシーが必要とされるため,パソコンの習熟度の低い学生は,情報リテラシーやデ ジタルリテラシー向上のための動機付けや教育が依然と必要とされていることが示唆された。
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