土木学会論文集B2(海岸工学)
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73 巻, 2 号
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論文
  • 阿部 郁男
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_301-I_306
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     現在,南海トラフ地震による巨大津波の波源モデルが公表され,このモデルに基づく被害想定により,防災対策が進められている.しかし,駿河湾内には1498年の明応東海地震によって,現在の被害想定を超える津波痕跡が指摘されており,今後の津波対策の見直しのためには,それらの津波の発生および伝播状況を明らかにすることが重要である.そこで,本研究では,これまでに提案されている波源モデルの検証を行い,既存のモデルが駿河湾内の津波痕跡記録を再現できないことを示した.さらに,駿河湾内に局所的な津波の発生条件を検討し,駿河湾内で局所的に20~43mの津波を発生させることにより,これらの津波痕跡を概ね再現できることを示した.
  • 門廻 充侍, 高橋 智幸
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_307-I_312
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震津波においては,被災状況把握の遅れが人的被害を拡大した一つの要因になった.この問題を改善するためには,激甚被災地の探索技術の開発が求められている.津波数値計算を用いた激甚被災地探索の推定精度は,外力条件の精度に大きく影響される.そこで本研究では,津波発生直後にGPS波浪計で観測される限られたデータのみを使用した特性化波源モデル推定法を提案した.これは,地震発生時に公表される地震規模および震源のみから決定した矩形断層モデルを初期条件として津波伝播計算を実施し,観測結果と計算結果の比較から津波断層モデルを修正し,再度計算を繰り返すことで不均質性を考慮した特性化波源モデルを推定する手法である.特性化波源モデル推定法の適用例として,南海トラフ巨大地震津波を対象に検討した.
  • 飯塚 敬一, 酒井 信介, 石原 史隆, 木村 達人, 谷 智之, 大島 貴充, 山下 恭平
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_313-I_318
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     陸域の斜面崩壊による津波は,断層運動による津波に比べ頻度が低いものの,1792年の眉山崩壊に伴う大津波や,1958年のリツヤ湾大津波など,中には甚大な被害をもたらすものもある.その評価手法については,これまでにも幾つか提案されているが,未だ研究事例は少ない.本研究では,崩壊土砂の堆積量や堆積分布を研究レベルにとどまらず実務でも用いられている土砂崩壊モデルにより推定し,解析結果を入力条件として,二層流モデルを用いた非線形長波理論に基づく津波伝播解析を実施することで,陸上から海域への土砂流入に伴う津波を精度よく再現する実務的手法を構築することを目的とした.さらに,眉山崩壊に伴う有明海津波の被害を対象に再現シミュレーションを実施し,本解析手法の妥当性を検証した.
  • 井上 拓也, 阿部 孝志, 越村 俊一, 撫佐 昭裕, 村嶋 陽一, 小林 広明
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_319-I_324
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     高性能計算による地震発生後のリアルタイム津波浸水・被害予測の実現に向けて,2次元非線形長波理論による津波解析を空間解像度270 m, 90 m, 30 mで実施し,計算精度と計算コストを検証した.解析モデルとして,解析領域及びネスティングの形状を従来の矩形から多角形に拡張し,高精度解析の対象地域を津波の遡上しうる沿岸域に限定した効率的な多角形領域接続・MPI並列モデルを構築・最適化した.これにより約14 %の計算効率化を達成すると共に,多角形領域の自動設定手法を提案した.東北大学のスーパーコンピュータを用いた神奈川県から鹿児島県にかけての広域津波解析により,30 m格子全国リアルタイム津波浸水予測には140 Tflop/s程度の計算機が必要であることを明らかにした.
  • 有川 太郎, 関 克己, 大木 裕貴, 平野 弘晃, 千田 優, 荒木 和博, 石井 宏一, 高川 智博, 下迫 健一郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_325-I_330
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,津波の波源から構造物の倒壊・破壊まで一連の計算を行うため,5つの異なるシミュレーションを連成させた仕組みを構築した.具体的には,津波の波源から伝播までは,静水圧を仮定した準三次元モデル(STOC-ML)を用い,それと海表面をVOF法で計算する単相のNavier-Stokes方程式(CADMAS-SURF/3D)を接続させ,さらに,気相の影響を考慮するため,単相のVOF法から気液2相のVOF法(CADMAS-2F)へ接続し,最後にFEMで計算される構造・地盤計算(STR)へ接続した.その妥当性の検証を既存の実験と比較を行ったところ,良好に一致する結果が得られ,さらに,実際の港湾に近いモデルで検討し,防波堤の滑動を確認し,本計算手法の妥当性を確認した.
  • 中村 祐輔, 柿沼 太郎, 浅野 敏之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_331-I_336
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     非線形浅水方程式を運動方程式とする数値モデルを適用して,河川を遡上する津波の数値解析を行なった.津波が,河口に入射する際に,峰と谷が非対称な波形を有する場合,河川内に流入する質量輸送が生じ,本川及び支川の平均水位が,時間とともに上昇することが確認された.本川及び支川ともに,河道形状が直線状である河川に津波が遡上する場合,本川と平行に近い河道を有する支川において,津波の波高が大きくなった.また,本川と直交する支川においても,支川幅や,入射波波高が大きければ,支川に進行する津波の波高が比較的大きくなった.鹿児島県の肝属川に津波が遡上する場合,静水深が大きいほど,津波の遡上速度が大きく,入射波周期が長いほど,各波の最高水位が高くなった.また,高水敷により,最高水位の上昇が緩和されることがわかった.
  • 有川 太郎, 関 克己, 下迫 健一郎, 高川 智博, 千田 優
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_337-I_342
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,津波来襲時の防護施設の被災状態を考慮した津波浸水予測モデルの構築を目的とし,津波規模と防護施設の被災度の関係を示すフラジリティカーブを用いたモデルを開発した.そのモデルは,来襲する津波規模に応じて,フラジリティカーブから防護施設の被災度を推定し,その被災度に応じた防護施設の防護性能の低下をモデル化するものであり,本検討では性能低下を越流量の増加と捉え,モデルを構築した.本検討で開発したモデルを用いて,テスト計算および高知県浦戸湾を対象とした現地適用計算を実施した結果,防護施設健全と全倒壊の間の結果となり妥当な結果が得られた.また,防護施設の天端高を実際に下げて計算した結果と比較すると,概ね30%程度の天端高減少と同様の結果となることが分かった.一方で,津波高から平均的な損傷度を求めると40%程度となり妥当な結果を得た.
  • 野島 和也, 桜庭 雅明, 小園 裕司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_343-I_348
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     2011年の東北地方太平洋沖地震では,津波に伴い多くの種類の漂流物が発生した.漂流物は衝突や滞留に伴う被害拡大の要因となり,津波の浸水範囲と合わせて被害の推定が必要である.本研究では,津波の浸水予測を行う方法を拡張して複数の種類の漂流物の移動を推定する数値シミュレーションモデルを開発した.本研究で開発したモデルは,様々な状況における力学的な挙動を従来の津波シミュレーションを拡張したモデルとして考慮が可能なものとなっている.適用例として,建物周辺の漂流物の挙動解析を行い,既往の実験結果の整合性を評価した.また,多種多数の漂流物を対象とした遡上域,建物および津波捕捉工などの影響を含めた解析を行った.これらの結果より,様々な物理機構を踏まえた漂流物挙動が従来の津波解析の拡張として算定できるものとした.
  • 亀田 知沙, 高橋 智幸
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_349-I_354
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震の車両避難による被害拡大を受けて,車両を含めた現実的な避難計画を策定する必要性が高まっているため,本研究では徒歩避難と車両避難の相互作用を考慮したシミュレーションモデルを提案する.現地実験で歩車の挙動を観察することにより,シミュレーションの基礎データの取得とシミュレーションモデルの検証を行った上で,実際に南海トラフ巨大地震において甚大な被害が予測される徳島市での再現計算を実施した.ここでは,車両の割合を変化させて4ケース実施し,車両の使用が避難行動に与える影響を検討した.その結果,住民の25 %が車両で避難をしたケースではほとんどの避難が完了する一方で車両避難が50 %や75 %となると避難困難車両が増大する傾向が見られた.さらに,車両の渋滞箇所や歩車の混在に伴う滞留箇所などが抽出されたため,避難計画などに活用できると考えられる.
  • 山下 啓, 鴫原 良典, 菅原 大助, 有川 太郎, 高橋 智幸, 今村 文彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_355-I_360
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波氾濫・土砂移動・漂流物移動による複合現象を予測・評価するために津波統合モデルを開発し,狭窄部を有する湾に特有の複合的な津波被害拡大のシナリオを明らかにした.宮城県気仙沼市では,湾狭窄部の侵食により,特に湾奥における津波ハザードが拡大したことがわかった.その結果,船舶の漂流距離は長距離化した.更に,木造家屋の被害実績と数値解析結果に基づき,建物被害関数を推定したところ,土砂移動の影響により200~1800棟(被害実績の5~40%)の木造家屋が流出したと推定された.また,従来手法に基づく津波被害関数では,当該地域における被害規模の推定精度は良好である一方,沿岸付近の被害を過小評価し,内陸では過大評価になることがわかった.
  • 山下 啓, 今村 文彦, 岩間 俊二, 菅原 大助, 高橋 智幸
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_361-I_366
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の岩手県陸前高田市では,破堤によって市街地全域の水位が約1 m上昇し,砂丘と河床の侵食により,市街地西部と奥部の水位が増大したことが数値解析に基づきわかった.また,破堤や地盤侵食により津波の流入・流出が容易となり,海岸線付近の戻り流れは約2倍に増大した.一方,沖合津波波形を用いた引き波影響度MRFを提案し,南海トラフ巨大地震津波のMRFの評価を試みた.その結果,土佐清水周辺や東海地方のMRFは,東日本大震災の陸前高田市や女川町と同程度,または,それ以上の引き波を伴う可能性を有することがわかった.また,東日本大震災の三陸地方における被害実態を踏まえると,MRF > 0.0003は,特に注意を要する参考値になると考えられるため,今後の引き波対策が重要である.
  • 山本 阿子, 高橋 智幸, 原田 賢治, 櫻庭 雅明, 野島 和也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_367-I_372
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     巨大地震津波は低頻度のため情報が少なく,東北地方太平洋沖地震津波では想定の過小評価を招き,被害を拡大させる要因となった.被害想定の見直しに伴い詳細な既往津波の知見が求められており,多くの情報を有する津波堆積物が注目されている.しかし,その形成メカニズムが未解明のため,津波の定量的な評価や波源の推定には至っていない.本研究では津波堆積物の形成メカニズムを明らかにするため,粒径や外力を変化させて,斜面遡上に伴う堆積砂に関する水理実験を実施した.その結果,段波の大きさと波数によって堆積砂の到達距離や量が大きく変化した.混合砂による総堆積砂量は,混合比に関係なく外力に依存した堆積構造を示すが,汀線付近を構成している各粒径の分布比は混合比と高い一致率を示した.また遮蔽物や段波の周期などの条件による流況の変化が堆積物に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.
  • 松冨 英夫, 今野 史子, 後村 晃基, 今藤 晃太, 鎌滝 孝信, 渡邉 一也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_373-I_378
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波の荷重評価や規模評価の高度化を目指して,津波氾濫水密度の水理量への依存性,津波遡上距離や土砂堆積距離,土砂堆積厚の氾濫水密度への依存性を工夫した水理実験に基づいて定量的に検討した.本研究の実験範囲内に限られるが,氾濫水密度は入射フルード数と土砂粒径に,そして相対遡上距離(=土砂水の場合の遡上距離/清水の場合の遡上距離)や土砂堆積距離・津波遡上距離比,平均土砂堆積厚・堆積距離比は氾濫水密度に依存することを実証し,それらの依存近似式を提示した.
  • 原野 崇, 浜口 耕平, 加藤 史訓, 伊藤 幸義
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_379-I_384
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海岸砂丘上の樹林などの植生が有する地盤の侵食抑制効果と効果の発揮限界の評価手法を確立するために,全国7海岸での植生の根量等に関する現地調査とともに,津波越流時の高流速に対する植生を有する地盤の侵食に関する水路実験を行った.その結果,植生の根量が比較的少なくなる深さまで地盤の侵食が進むと,その後の侵食が急激に進むという侵食過程が砂丘等の地盤でも確認された.また,摩擦速度の時間的変化を考慮できる侵食算定式において耐侵食性を表すパラメータと根量密度との関係を整理した.
  • 飯村 耕介, 髙橋 勇貴, 野崎 樹, 池田 裕一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_385-I_390
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     巨大津波対策を考えるうえで,複数の構造物を組み合わせて配置し,減勢を図ることは非常に重要となる.本研究では,防潮堤と海岸林による多重防護に着目し,2つの位置関係が構造物周辺の流況や海岸林の流体力に与える影響について段波津波を用いた水理模型実験により検討した.実験では水位,対策構造物周辺の流速,海岸林への作用力,遡上高をそれぞれ測定した.
     防潮堤よりも海岸林を上流側に配置し,2つの対策構造物を隣接させるよりも距離を離す(本実験では50 cm)ことで海岸林への作用力を大きくし,防潮堤を越流する流れを抑えることができる.また海岸林への作用力が大きくなると,作用反作用の関係から流れに対する抵抗としての働きが大きくなり,模型背後における遡上高を小さくすることができ,減勢対策として効果的な配置方法であることが分かった.
  • 山中 悠資, 田島 芳満
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_391-I_396
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     昨今の沿岸災害時では,長周期波と短周期波が重合することによりその被害を拡大させた可能性が指摘されている.本研究では断面二次元水槽を用いて長周期波と短周期波が重合する波動場を再現し,そのときに構造物に作用する波圧特性を分析することを研究の目的とする.実験ではゲート急開放により発生させた段波を長周期波,造波装置により発生させた波を短周期波として,それらが重合したときに構造物に作用する波圧を計測した.また画像解析に基づき重合場の水面形を推定し,それに基づく水理特性とともに波圧特性を分析した.その結果,重合場の波圧特性は短周期波による鉛直方向加速度の影響を大きく受けることがわかった.さらに,短周期波と段波の非線形干渉に伴う砕波位置の変化が構造物に作用する衝撃砕波圧を最大化させ,それが支配的になり得ることが示唆された.
  • 大平 浩之, 山下 啓, 林 晃大, 今村 文彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_397-I_402
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波による建物被害または人的被害を軽減するための効果的な海岸林の空間的設計手法を提案した.本手法では,津波の局所的な集中や樹木の倒伏を回避し,且つ,建物被害を所定の目標値以下に抑えるための,または,避難時間確保に効果的な海岸林条件を,理想地形を対象とした数値解析によって効率的に選択する.まず,海岸林の面的分布に関して,林帯が局所的に薄い背後地では津波が集中しやすく,逆に厚い背後地では減災効果が増大することがわかった.次に,本手法を宮城県岩沼市に適用して,建物被害軽減を目的とした海岸林整備を想定したところ,海岸林が目標通りの減災効果を発揮することを数値的に実証できた.更に,海岸林による津波到達時間の遅延効果を避難可能延長距離に換算することにより,海岸林が有する人的被害の軽減効果を定量化した.
  • 小園 裕司, 高橋 智幸, 桜庭 雅明, 野島 和也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_403-I_408
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波対策に向けた被害想定には,浸水深だけでなく建物被害や災害がれきの集積被害による検討も重要となる.本研究では,建物倒壊および災害がれきを考慮した津波被害予測モデルを,南海トラフ巨大地震津波を対象に三重県尾鷲市に適用し,津波被害の検討を行った.また沿岸域における建物構造種別の違いに着目した被害軽減効果についても検討した. その結果,建物を地物かつ倒壊を考慮した場合,尾鷲中心市街地沿岸側でせり上がりを考慮した浸水深を評価した.同モデルは直接建物やがれき被害を評価することが可能となり,津波の各種シナリオに対する具体的な被害を定量的に推定できるようにした.同モデルの結果は,被害低減効果検証等の津波防災計画の検討への資料として有用であることを示した.
  • Anawat SUPPASRI, Kentaro FUKUI, Kei YAMASHITA, Hiroyuki OHIRA, Natt LE ...
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_409-I_414
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     The 2011 Great East Japan tsunami caused large scale devastated damage in both offshore and inland areas. There are many previous researches that were focusing on the relationship between tsunami characteristics and damage or loss such as human loss, building damage and fishing boat damage. Similarly, great damage and loss of aquaculture and marine ecosystem was also caused by the 2011 tsunami. However, relationship between the tsunami and their damage has not been studied. To understand such relationship, this study has mainly three components namely 1) Reproduction of the 2011 tsunami, 2) Damage investigation and 3) Developing fragility functions. The source models of the 2011 tsunami were verified and adjusted so that the tsunami characteristics were able to accurately reproduce in the target area. Damage ratios of the aquaculture raft and eelgrass were investigated using satellite images taken before and after the 2011 tsunami through visual inspection and binarization. The tsunami fragility functions were then developed based on the relationship between the simulated maximum flow velocity and the calculated damage ratio. It was found that the damage ratio of higher than 0.5 is equal to the maximum flow velocity of 0.8 m/s (aquaculture raft) and 1.0 m/s (eelgrass). Whereas, the damage ratio of higher than 0.9 is equal to the maximum flow velocity of 1.3 m/s (aquaculture raft) and 3.0 m/s (eelgrass). It was found in this study that the tsunami amplitude had no relationship with the damage ratio. In addition, the proposed fragility functions for the aquaculture raft are getting along well with the previously proposed damage criteria. The proposed fragility curves will be useful for marine product and environmental damage assessment but also suggestion for the zoning of aquaculture raft to mitigate impact from tsunamis in the future.
  • 鴫原 良典, 北 隆範, 多田 毅, 八木 宏
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_415-I_420
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波来襲時に海上を航行する船舶が安全な海域に避難するための船舶避難リスクマップを提案した.複数の津波イベントについて最大流速分布と操船限界流速の超過確率分布を求め,両者を1枚のマップ上に重ね合わせて可視化する手法により,従来の船舶の避難海域の設定では考慮されなかった潜在的に危険な海域の評価を可能にする.提案手法を東京湾全域に適用することで,相模トラフで想定される津波イベントに対し東京湾中央航路の全域,浦賀水道の西側および東京湾内湾の奥を推奨避難海域として抽出する一方,東京湾内湾の港湾部では津波リスクが高いことがわかった.さらに横須賀港を対象に船舶の性能毎に避難海域への移動の可否を検証し,移動が困難な場合,係留索を強化するなどの被害を軽減するための対策が必要であることを明らかにした.
  • 丸山 拓真, 安田 誠宏, Katsuichiro GODA, 森 信人
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_421-I_426
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     南海トラフ地震による津波災害が想定される太平洋沿岸の自治体では,比較的高頻度(数十年から百数十年)で発生が想定されるL1津波群を対象に,それらの最大値の包絡を採用する決定論的アプローチによって設計津波の水位が設定されている.しかし,現行の設計津波水位の決定プロセスは,L1津波の選択方法や再現期間についての議論が不十分である.本研究では,すべり分布の空間相関性を表すパラメータとすべり量を支配するパラメータに関して,地震の発生頻度や規模とパラメータの関係を表すスケーリング則を求め,確率津波モデルに適用する方法を提案した.静岡県を対象にケーススタディを行い,海岸線における津波水位を確率的に評価した.再現期間に関して,L1津波群の中の最大シナリオを採用する方法は,津波の再現期間が200年を超える可能性があることがわかった.特定の津波断層モデルをL1津波想定のモデルと定義するのではなく,津波水位を確率的に評価することが重要といえる.
  • 千田 優, 髙川 智博
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_427-I_432
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     GPS波浪計の観測データには,実際に津波は発生していないにも関わらず,津波のような波形が出現することがある.従来の波形処理ではこのようなエラー波形と実際の津波波形を即時的に識別することが困難であった.本研究では,エラー波形による津波誤検知数の削減と実際の津波成分の効率的な抽出を目的としたデータ処理手法の開発を行った.GPS衛星の測位精度に影響を及ぼす衛星配置の指標であるPDOP値,測位解の信頼度,演算使用衛星数を用いることにより,津波検知率を維持しつつ約43%のエラー波形を検出することができた.それに加え,連続ウェーブレット変換から得られた周期1分以下と周期4分から65分の間に出現するパワースペクトルが,設定した閾値を超えるかどうかの判定を行った.それによりさらなるエラー波形の検出が可能となった.
  • 岡本 萌, 高橋 智幸, 日向 博文, 藤 良太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_433-I_438
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海洋レーダの観測データから2015年イヤペル地震津波の検知を試みた.流速の時空間分布からは津波を示す大きな流速や流向の変化は見られなかった.津波の伝播計算とチリ沖のDARTの実測値から,日本沿岸ではレーダの観測可能流速を下回っていたことを明らかにした.観測が可能になる津波の規模を明らかにするため,1960年チリ地震津波を対象に数値実験を行なった結果,海洋レーダで観測できる可能性を示した.さらに仮想津波実験を実施することで,より現実の環境に近い状態で観測性能の検討を行った結果,観測流と背景ノイズを考慮しても同津波を観測可能であることを示した.その際,相関算出距離を3km,算出時間を3時間とした時,観測距離は25.5kmであることを明らかにした.
  • 小池 信昭
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_439-I_444
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     まずS-net観測点網でEnksを用いて津波即時予測をしてもDONET2の場合と同程度の予測精度が出るかどうかを検証した結果,観測時間5分の場合ほぼ同程度の精度で予測できることがわかった.次にS-netの情報が地域ごとに入手できない場合を想定してその影響を調べた結果,出力地点から最低47kmの範囲内に情報が入手できる観測点がない場合にはその地点での予測精度は落ち,また津波波源の位置によって情報が入手できない観測点を津波が伝播して出力地点に到達する場合にも予測精度は落ちることが示唆された.さらに海溝軸付近の断層のずれが大きい地域だけに観測点を配置しても高精度で予測はできず,逆にその場所に観測点がなくてもそこから伝播した津波が陸側の観測点で観測されれば予測精度は悪くならないことが示唆された.
  • 鎌滝 孝信, 安部 訓史, 金澤 慎, 松冨 英夫
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_445-I_450
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     秋田県南部に位置するにかほ市沿岸部の沖積低地で採取された8本のボーリングコア試料から,湿地に堆積した細粒堆積物中に2枚の粗粒な砂層がみいだされた.それらは基底面が侵食面であること,堆積物の下部にリップアップクラストが含まれること,内部に平行層理,斜交層理などがみられること,最上部には植物遺骸が密集することなどイベント堆積物の特徴を持つ.これらは,ある程度強い水流によって堆積物が再移動したものである.これらイベント堆積物は,その分布様式,内部構造そして調査地点の地理的特徴から,現時点では津波によって形成された可能性が高いと考える.それら津波堆積物の形成年代は,14C年代測定値から12~13世紀および14~15世紀以降と推定される.また,それら津波堆積物は現在の海岸線から110~190m内陸まで分布する.
  • 増永 英治, 鈴江 洋太, 内山 雄介, 山崎 秀勝
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_451-I_456
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     潮汐と内部潮汐が伊豆諸島周辺海域に及ぼす影響を評価するために,潮汐の外力を組み込んだ領域海洋モデルROMSを用いた解析を実施した.内部波のエネルギーフラックスを推定した結果,伊豆諸島周辺では非常に強い内部波が発生していることがわかった.内部波のエネルギ-フラックスは潮汐によってバックグラウンドの値の10倍以上に増幅され,対象海域の内部波は潮汐によって支配されていることがわかった.また,潮汐により運動エネルギー全体量は増大するが,順圧的な運動エネルギーはむしろ減少し,傾圧(内部波)成分の運動エネルギーは増大していた.したがって,対象海域では黒潮や風に比べ潮汐によって発生した傾圧的な流れを伴う内部波が流動場に対して卓越して影響していること,内部潮汐が伊豆諸島周辺海域の海水運動に強く寄与していることがわかった.
  • 鈴江 洋太, 内山 雄介, 山崎 秀勝
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_457-I_462
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     領域海洋循環モデルROMSとNPZD型生態系低次生産モデルをカップリングしたROMS-NPZDモデルを用いた中規模渦解像・サブメソスケール渦許容気候値解析を行い,黒潮周辺海域における一次生産の季節変動特性とそのメカニズムを評価した.海洋渦による栄養塩の鉛直輸送とそれに伴う一次生産には明確な季節変動が見られ,冬季には他の季節と比べて渦輸送成分が顕在していた.渦運動エネルギー収支解析等から,冬季の海面冷却によって黒潮流路に沿って傾圧不安定が強化され,中規模・サブメソスケール渦が発達し,栄養塩鉛直渦輸送が増大することを明らかにした.この強い栄養塩輸送と日射量の季節的な増加によって冬季から春季にかけて海洋表層の一次生産が増大し,春季ブルームへと発展することが示唆された.
  • 衞藤 俊彦, 諏訪田 大樹, 菊地 卓郎, 大澤 範一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_463-I_468
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海底渓谷や大規模な湖底で発生する泥水流は傾斜壁面粒子サーマルの流動現象であり,沿岸域の漂砂や渓谷の地形変化と密接に関わっている.これは広い斜面上を移動する三次元的な流動現象であり,その移動とともに横断方向への広がりを伴う流れである.本研究ではこの流動現象の予測を目的として,数値解析を行った.オープンソースの三次元流動解析ツールであるOpenFOAMを基に,LESモデルとしてDynamic SGSモデルを乱流計算に用いて解析を行い,既存の実験結果と比較することにより,その妥当性の検証を行った.解析結果から得られた傾斜サーマルの流下速度,最大厚さの時間変化及び最大横広がり幅の流動距離変化について実験結果との比較を行い,良好に再現することができた.
  • 小澤 敬二, 村上 和男, 中村 由行, 阿部 郁男, 岡田 知也, 小笠原 敏記, 高尾 敏幸, 柴木 秀之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_469-I_474
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     2011年東北地震津波により被災した大船渡港湾口防波堤の復旧工事では,環境への配慮として開口部基礎マウンドの海底部に直径3.5mの通水管18本を配置した.本研究の目的は,基礎マウンド完成後に実施した現地観測に基づき,通水管による湾内の貧酸素化の抑制効果を明らかにすることである.
     観測の結果,通水管には湾口防波堤基礎マウンドより内側に溜まった低水温(高密度)の水塊を湾外へ排出する機能があり,およそ10日間でこの水塊のほぼ全てを排出する能力があると推測された.この効果によって,基礎マウンドより内側の水温が湾外の通常の水温に近くなるので,湾外に溶存酸素の豊富な低水温(高密度)の水塊が出現したときに,湾外水が湾内の下層に侵入し易くなっており,継続的な貧酸素水塊を形成しにくくさせていると推察された.
  • 岸本 周平, 青木 伸一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_475-I_480
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     近年,総合土砂管理に基づく海岸保全対策が行われているが,河川から流出した土砂の堆積特性については不明な点が多いことから,河口域での土砂の挙動を解明することは今後の土砂管理において重要な鍵となる.そこで本研究では,出水時に土砂を大量に運搬する泥水流に着目し,その挙動と土砂の堆積特性を把握することを目的に水理模型実験を実施するとともに,実験結果に対し平野らが提案した理論式の適用を試みた.その結果,泥水流の先端速度に影響を与える要因として,(1)小粒子の拡散による抵抗の増加,(2)土砂堆積による密度の低下,(3)ほとんどの大粒子が堆積する水深における先端速度,が挙げられた.また,理論式は塩水流の実験結果と良好な一致を示し,泥水流に対しても土砂堆積による密度低下を考慮することで実験値と同様の傾向を得ることができた.
  • 矢野 真一郎, 中村 潤幸, Arifin Nasser ABDUL
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_481-I_486
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     気候変動に伴い河川水温が上昇傾向にあることが明らかになっているが,その沿岸域の水温構造への影響は不明確である.そこで,閉鎖性内湾である有明海を対象として,流入する全一級河川の非感潮域にあり最も河口に近い流量観測所において,2015年8月以降の河川水温連続観測を実施した.これにより,毎正時の河川流量と河川水温についてのデータセットが完成したので,これを入力条件とする有明海の密度成層に関する数値シミュレーションを実施し,河川水温の時間変動が与える有明海での水温成層構造への影響を評価することを試みた.その結果,主に夏季出水時において,河川水温の与え方により水温成層の発達の再現性が異なることや,混合期へ入る過程において基底水温の再現性が異なることなどが明らかとなり,河川水温が与える海域の水温構造への影響が示された.
  • 森 信人, 千綿 蒔, 二宮 順一, 間瀬 肇
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_487-I_492
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     日本海沿岸では,冬期に発達した低気圧によって沿岸災害が多く発生している.先行研究によると,日本海沿岸ではシベリア高気圧の強弱に伴う季節風の南北変動により,高波が生じることが示唆されているが,冬期の高波や高潮の発生事例は少なく,その長期変動特性の理解は進んでいない.そこで,日本周辺における冬期低気圧の特性を調べるため,気象庁55年長期再解析(JRA-55)を用い,過去55年間に日本周辺で発生した爆弾低気圧を抽出し,解析を行った.抽出された爆弾低気圧の発生個数,強度,経路についての解析,気象総観場との相関解析,経路についてのクラスター解析を行い,日本周辺で発生する爆弾低気圧の長期変動特性を明らかにした.
  • 吉野 純, 中田 勇輝, 古田 教彦, 小林 智尚
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_493-I_498
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     台風1610号は,2016年8月30日午後6時頃に北西進することで統計開始(1951年)以降初めて東北地方太平洋側に上陸した.本研究では,このような特異な進路をとった台風1610号の進路形成メカニズムを解明することを目的として,渦位部分的逆変換法に基づいて,台風周辺の擾乱が励起する指向流ベクトルを渦位偏差毎に分解することで推定した.台風1610号が岩手県大船渡市付近に上陸した時間帯には,台風の西側に位置した上層の寒冷渦が作り出す南東風に加えて,それに伴う積乱雲活動(非断熱加熱)により発達した下層低気圧(湿った正渦位偏差)が作る南風や上層高気圧(湿った負渦位偏差)が作り出す東風が同時に作用することで,約20 m/sの南東風の指向流ベクトルにより北西進したことが明らかとなった.
  • 佐貫 宏, 渋尾 欣弘, 李 星愛, 吉村 耕平, 田島 芳満, 古米 弘明, 佐藤 愼司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_499-I_504
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     都市沿岸部の浸水・氾濫予測には,河川,下水道,海岸からの影響を考慮することが重要である.著者らは,こうした沿岸低平地の浸水予測を目的として,統合浸水予測モデル(シームレスモデル)を構築してきた.本研究では,本モデルを活用して,高解像度降水ナウキャストを用いたリアルタイム浸水予報について検討した.過去の台風イベントを対象として検討したところ,高解像度降水ナウキャストを活用することで,直近の浸水に対して精度良く予測し得ることが解析結果より示された.また,水位センサーを使って下水道管渠内の水位情報についても収集し,モデル検証を実施した.
  • 池田 哲郎, 三﨑 隆央, 伊東 啓勝, 大竹 剛史, 山田 貴裕
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_505-I_510
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     名古屋港の主航路周辺では,入出港する船舶によって発生する航跡波が停泊する船舶へ不測の動揺をもたらす場合があり,過去に小型船舶転覆事故が発生していることから、航跡波の影響に関する安全対策の検討が進められている.本研究では,現地波浪観測及び数値シミュレーションによる航跡波の解析及び自然条件の影響把握に関する調査を実施し,結果をもとに今後の安全対策に役立つと考えられる知見を整理した.これらの結果,航跡波高と船速の関係性は船種・入出港の条件で異なることが明らかとなり、これらの船舶条件別の航跡波高の推定式を得た.また,伝搬する航跡波は,潮位・地形の影響を受けて波高が顕著に増幅する場所が異なることや,一定方向の流れ(木曽川)の影響により入出港で航跡波高に違いが生じていることを確認した.
  • 原田 英治, 五十里 洋行, 後藤 仁志, 清水 裕真, 居村 光孝, 松本 昌展
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_511-I_516
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     沿岸域の海底砂面には種々のスケールの砂漣が観察される.振動流場を対象とした砂漣形成機構については多くの研究が進められてきたが,砕波点以浅の複雑な波動場における砂漣の発達機構は,実験計測や数値シミュレーションの実施が困難であるため十分な理解には至っていない.本研究では自由水面の解析に有効なMPS(Moving Particle Semi-implicit)法より砕波による複雑な自由水面を追跡し,移動床起伏の追跡には個別要素法(DEM:Distinct Element Method)を採用した数値シミュレーションから砕波帯以浅の砂漣形成機構を検討し,移動床の間隙水が砂連の凹凸の発達に及ぼす影響を計算力学的観点から明らかにした.
  • 山口 敦志, 前田 健一, 松田 達也, 高木 健太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_517-I_522
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     地盤表面に水平流れが作用すると地盤内部に過剰間隙水圧が発生し,洗掘を助長させることが示唆されている.本論文では地盤の洗掘現象について,地盤表層流れに起因して発生する過剰間隙水圧の発生機構とその値を定量的に評価するため,移動床水路実験により地盤内の間隙水圧変動を詳細に観測した.さらに,観測した結果をもとに,過剰間隙水圧が発生する要因と洗掘への影響について詳細に考察するため,DEM-CFD手法を用いた数値実験を行った.実験と数値解析を比較したところ,デューンの地表面変状の発生や地盤内で過剰間隙水圧が発生する現象が再現可能であり,粒子ベースの数値解析が有効であることが確かめられるとともに,深度方向に平均粒径の約4倍の深さまで流動層が存在し,過剰間隙水圧の発生には透水だけでなくそれらのせん断変形なども影響していることが示唆された.
  • 瀬戸 祥太, 田島 芳満
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_523-I_528
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     サンゴ州島の形成メカニズムの解明は,サンゴ礁の発達した島々の保全・防護に重要である.本研究では,沿岸域において前傾化した波の作用下におけるサンゴ礫の移動特性を把握することを目的とし,サンゴ礫を使用した断面2次元水槽での水理実験を実施した.実験で得られたデータの分析により,礫の移動には底面付近における流速や加速度の非対称な波形が大きな影響を及ぼしていること,礫が動き出した直後は底面からの抵抗の影響を受けるものの,その後は流況の影響が支配的になること,遡上帯では浸透の影響で礫の岸方向の移動がより卓越すること,砕波前後で礫の挙動は全く異なること,また礫の移動量の特性は水面変動の時間変化の歪度と相関があることなどが確認された.
  • 松田 達也, 前田 健一, 山口 敦志, 高木 健太郎, 鶴ヶ崎 和博, 宮本 順司, 角田 紘子
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_529-I_534
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究は高速度カメラを用いて水平流れが作用する地盤表層の移動現象を捉え,PIV解析により土粒子および土粒子群の移動特性を評価し,地盤内の間隙水圧変動と合わせて洗掘・浸食現象を考察した.初期段階では,表層土粒子の転倒,滑動およびsaltationが確認でき,掃流状態であることを確認した.この際,間隙水圧変動より求めた過剰間隙水圧比は0.36程度であった.実験開始30秒以降は地盤深さ3 mm程度まで過剰間隙水圧比が0.8以上となっており,高速度カメラで撮影した実験開始86.5秒では,流れの作用に伴い,地表面から約1.825 mm程度(土粒子11個分)までの深度の土粒子において地盤面に対して垂直方向への移動,その後の流下方向への流動する現象が生じおり,掃流力と間隙水圧変動が互いに影響しうる可能性があることを示した.
  • 藤澤 和謙, 杉野 公亮, 村上 章
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_535-I_540
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本論文の目的は,非粘着性材料の限界掃流力に対する(上向き)浸透流の影響を実験的に明らかにすることにある.例えば,河床を形成する砂地盤などが上向きの浸透流を受ける場合,浸透力により見かけの砂の重量は減少し,それにしたがって,砂の移動開始を規定する限界掃流力も変化するものと考えられる.実験材料にはガラスビーズを用い,室内実験により上向き浸透流が限界掃流力に与える影響を調べた.実験結果からは,上向き浸透流の動水勾配が増加するにしたがって,非粘着性材料(ここでは,ガラスビーズ)の限界掃流力は若干減少傾向にあるものの,動水勾配が限界動水勾配に近づいても,限界掃流力の値は大きくは低下しないことが明らかとなった.
  • 宮武 誠, 成田 郁史, 木村 克俊, 越智 聖志, 佐々 真志, 白水 元
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_541-I_546
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     砂浜斜面の飽和度に応じた混合粒径下における波打ち帯の漂砂移動を模型実験及び数値解析の両面から検討した.模型実験では,孤立波作用下の前浜斜面に敷設した色相の異なる混合粒径による蛍光砂にブラックライトを照射し,波打ち帯の漂砂移動を可視化した.その結果,飽和斜面の蛍光砂量は不飽和斜面に比して常に高く推移し,特に流出する細かい粒径分の増加が著しくなり,底質の粗粒化及び前浜勾配の急峻化がより一層進行することを示した.また,それらに及ぼす前浜浸透流の影響について考察した.更に遡上波変形と飽和-不飽和浸透流の結合数値解析モデルならびに,粒径別の透過斜面に対する無次元掃流力モデルによる数値解析を行った結果,混合粒径下における波打ち帯の漂砂移動の傾向を定性的ではあるが,概ね良好に評価できることを示した.
  • 中川 康之, 小硲 大地, 横山 直弥, 高山 優, 幸福 辰己
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_547-I_552
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     潮汐流および波浪作用下における砂泥混合底質の移動特性の把握を目的として,熊本港周辺干潟を対象とした現地観測,現地底質を用いた底質移動実験,さらに砂泥混合率の違いによる底質移動過程の変化を考慮した底質輸送モデルの妥当性評価を行った.現地観測により,高波浪時の底質の巻き上げに際して,底質粒度組成の違いに依存する懸濁粒子の粒度組成変動の差異が確認された.一方,底質移動実験により波と流れによる底質輸送量について底質含泥率との関係を調べた.さらに,実験結果との比較を通じて砂泥混合モデルによる底質輸送量の計算精度を検証するとともに,実海域を対象とした試計算を行い,外力と含泥率の変化に伴う底質輸送量の再現性向上における課題を明らかにした.
  • 冨永 剛史, 筧 泰昌, 伊藤 禎和, 大屋 敬之, 岩佐 隆広, 宮下 卓也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_553-I_558
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     岸沖漂砂による地形変化が卓越することもある高知海岸長浜~新居工区におけるヘッドランドの規模・形状を検討するために,高波浪時の岸沖漂砂特性,ヘッドランド周辺の沖向き流れに着目して,海浜変形予測および水理模型実験を実施し,岸沖漂砂を考慮した長期,短期の海浜変形モデルを構築した.同モデルを用いて,複数の対策案について海岸保全,施設安定などの視点でヘッドランドの効果を予測評価した結果,横突堤追加案が最適となる結果を得た.また,水理模型実験及び波浪・流況解析により,海浜の安定性や施設周辺の流況を踏まえて,ヘッドランドの諸元を設定した.
  • 成毛 辰徳, 田代 益庸, 民部 久雄, 杉浦 幸彦, 高山 知司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_559-I_564
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     高波浪時におけるシルテーションが主要な埋没要因となっている航路について,2つの台風による高波浪時の観測データを用いて地形変化モデルを最適化し,その計算結果から高波浪時の潮時が航路埋没に与える影響について検討した.高波浪の継続時間が長い擾乱においては,高波浪ピーク時の潮時の違いによる埋没量の差は最大でも14%程度と顕著な差は生じなかった.一方,高波浪の継続時間が短い擾乱においては,高波浪のピークが干潮時のケースで航路の埋没量が満潮時のケースの2倍を超えるなど,高波浪のピーク時の潮時の違いにより埋没量に顕著な差が生じることがわかった.これらのことから,短期間の観測データから長期間の埋没量を評価する際には,高波浪の継続時間や高波浪のピーク時の潮時についても留意する必要があることが明らかになった.
  • 伊豆 友貴, 有田 守
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_565-I_570
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     多段砂州の形成要因は長周期定常波によるものと,中間型もしくは侵食型波浪の組み合わせによって形成されるとされる2つの説がある.本研究は砕波位置の異なる侵食型波浪の組み合わせによって多段砂州が形成されるかについて実験的に検証を行った.実験は,砕波位置の異なる3種類の規則波を2次元水路に設置した海浜勾配1/15,底質粒径0.2mmの移動床に順序を変えて作用させた.波高が低い順に波浪を作用させると波高の低い波浪で形成された砂州は,波高の高い波浪の作用で消失し最終的に波高の高い波浪で形成された砂州のみ存在する地形となった.逆に波高の高い順に波浪を作用させた場合は,砂州の沖側で掃流が発達し沖側の砂州を消失させる結果となった.本実験の条件下では,波暦の組み合わせによって多段砂州が形成されることが難しいことが示唆された.
  • 宇多 高明, 野志 保仁, 石川 仁憲, 鈴木 悟, 岡本 光永
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_571-I_576
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     セットバック型放水路の機能確保において重要な役割を果たす浸透流は,バーム構成土砂の粒度組成に強く依存する.そこで沼川第二放水路をセットバック型に改良した場合を想定した現地排水実験を行うとともに,その排水機構を2次元移動床模型実験により調べた.この結果,砂と礫で構成されたバームでは,背後の内水位の上昇とともに浸透流が強まり,バーム内の砂が運び去られて浸透性が高まる結果,維持流量を流すことが可能なことが分かった.
  • 三通田 脩人, 鈴木 崇之, 比嘉 紘士
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_577-I_582
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     これまでに実施された波崎海岸における波打ち帯の岸沖漂砂量分布特性の検討により,その特性に基づいた前浜地形変化モデルが提案され,地盤高変化や汀線変化が再現可能であることが報告されている.この前浜地形変化モデルを他海岸に適用させるには,波の遡上高さの推定において海底勾配による波特性変化等を考慮させる必要がある.そこで本研究では,既往モデルの他海岸への適用に向けた検討として,底質粒径の異なる海岸への適用を行う際に波の遡上高さ推定時に未知係数を導入し,計算結果として求められる地盤高変化,汀線位置等の精度について検討を行った.その結果,海底勾配の決定に起因する底質粒径を変数とした未知係数を決定させることで,他海岸への適用が可能であることが示唆された.
  • 横田 拓也, 小林 昭男, 宇多 高明, 芹沢 真澄, 勝木 厚成, 野志 保仁
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_583-I_588
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海岸砂丘では風の作用によりしばしばblowoutが形成される.太平洋に面した野手海岸では南からの卓越風により砂丘が発達し,典型的なblowoutが形成されている.2016年11月25日,この砂丘地に形成されたblowoutの形状特性を現地観測により調べた.その上で,セルオートマトン法にsaltationとavalancheの効果を取り入れてblowout形成の予測モデルを開発した.計算結果と野手海岸での実測結果とを比較したところ,両者はよい一致を示した.
  • 有光 剛, 松田 周吾, 村上 嘉謙, 志方 建仁, 川崎 浩司, 三島 豊秋, 清水 涼太郎, 菅原 大助
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_589-I_594
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,津波移動床モデルにおける飽和浮遊砂濃度および流砂量係数の設定が地形変化の再現性に及ぼす影響を把握するために,東北地方太平洋沖地震津波による岩手県高田海岸における地形変化の再現計算を行った.その結果,得られる砂移動量の計算値が飽和浮遊砂濃度の設定方法によって大きく異なることが明らかとなった.飽和浮遊砂濃度を固定値として与えると,十分な巻き上げが許容されないために地形変化の再現性が不十分となった.一方で,飽和浮遊砂濃度を流況に応じて可変とした場合は,水理条件による時空間的な砂移動量の変動を考慮することができ,大規模な地形変化に対しても良好な再現性を得ることができた.この際,飽和浮遊砂濃度による制約の効果が大きいために,流砂量係数による計算結果の差異が小さいことが明らかとなった.
  • 浜口 耕平, 原野 崇, 加藤 史訓, 二階堂 竜司, 五十嵐 雄介
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_595-I_600
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波に対する砂丘の減災効果の確保に必要な砂丘形状や植生条件を検討するために,宮城県名取市付近に設定した測線を対象として,樹林の減勢効果及び耐侵食効果を考慮した地形変化計算を実施した.砂丘形状と植生条件を変えた地形変化計算を実施したところ,砂丘の幅を狭くした計算では,他の砂丘形状と比べて砂丘の天端高が顕著に低下する結果となった.また,植生条件を変えた計算を比較すると砂丘の天端高の低下量の違いが顕著に見られた.これらのことから,津波越流時に砂丘が減災効果を発揮するには,予想される津波に対し,砂丘の幅を十分に確保することと,植生の適切な管理により耐侵食性を確保することが重要と考えられる.
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