土木学会論文集B2(海岸工学)
Online ISSN : 1883-8944
Print ISSN : 1884-2399
ISSN-L : 1883-8944
75 巻 , 2 号
選択された号の論文の234件中1~50を表示しています
論文
  • 上川 岳人, 重松 孝昌
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     わが国の数多くの港湾海域で使用されている直杭式桟橋は,供用後の時間の経過とともに塩害劣化が深刻化している.本研究では,塩害劣化の一因であると考えられる静穏時波浪によって発生する飛沫に着目し,直杭式桟橋の前面における飛沫の発生条件を明らかにすることを目的として,水理実験および数値解析を実施した.水理模型実験では,鉛直壁面において飛沫が発生する場合と,円柱の背後で表面波が交差する収束点において飛沫が発生する場合があることが明らかになった.数値計算では表面波の収束現象を再現することの可能性を示すとともに,波浪や構造諸元による収束点の発現位置の変化についても推定が可能であることが明らかになった.

  • 水谷 夏樹
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究は,段波による底面せん断応力の評価を行うため,ドライな状態の斜面とそれに続く水平床上を進む段波を発生させ,PIV計測による段波先端部の流速場について検討した.各時刻における同じ高さの流速ベクトルに対し流速の波数スペクトルを求め,それに基づいて空間平均幅を設定し,空間平均水平流速およびレイノルズ応力の鉛直分布について示した.その結果,底面から約2mm程度まで底面の影響を強く受ける層が存在することを明らかにした.摩擦速度によって求められた底面せん断応力は,マニング式によるそれと同程度であるものの時間的な変動が大きいことがわかった.これらの変動は水面勾配との相関が認められ,底面せん断応力が局所的な水面勾配の影響を強く受けていることが示唆された.

  • Nguyen Xuan TINH , 田中 仁, 宋 文正
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     定常流から非定常流まで高い計算精度を有する二方程式乱流モデルであるk-ωモデルを用いて,津波の下での底面境界層に関する数値解析を行った.対象津波は波源域から浅海域までグリーンの法則に従って浅水変形するものとし,線形長波理論から得られる流速をもとに線形化された境界層方程式を数値的に解いている.その結果,波源から浅海域までの広い領域において,津波の下での底面境界層は水深に比べてきわめて薄いことが判明した.すなわち,たとえ長波条件が満たされていても,境界層の特性は通常の波動境界層に類似するものであった.このことは,底面近傍の境界層内に大きな速度勾配が存在し,その結果,通常の津波の数値計算において使用される定常流の摩擦抵抗則を用いた場合,せん断力を過小評価することを表している.

  • Nagendram VEERAPAGA, Gubash AZHIKODAN, Tetsuya SHINTANI, Katsuhide YOK ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     In order to discuss the variation of saltwater intrusion and mixing types in terms of estuarine bed topography, planform shape, channel cross-section and multi-branch, a total of 25 numerical experiments were carried out with a conceptual estuary using a three-dimensional hydrodynamic simulator. The wavy bottom of the channel had less salinity intrusion length (SIL) compared with the flat bottom (reference case) under the constant tidal range and freshwater discharge. This is because of the decrease in velocity of the gravitational flow due to the bottom drag force as well as the trapping of saltwater in the bottom hollows. The SIL was increased in the case of funnel shaped estuary compared with the straight (constant width) channel. For the channel cross-section, the temporal variation of SIL was highest in the case of the triangular cross-section and the mixing condition was changed from partially mixed to stratified with the change in cross-sectional shape from triangular to parabolic and then to the rectangular cross-section. The results from the multi-branch indicated that the sub-channels with different length would affect the saltwater intrusion and mixing condition in the estuary. It was shown from the present numerical experiments that the saltwater distribution in the estuary was significantly affected by the planform shape, bed topography and channel cross-section.

  • 田多 一史, 中山 恵介, 中西 佑太郎, 佐々木 大輔, 駒井 克昭
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     近年の研究において,波・流れと水草の連成計算を可能とするオブジェクト指向型プログラミングを利用した「波・流れ水草連成モデル(Submerged Aquatic Vegetation model:SAV model)」が構築されつつある.そこで本研究では,振動流場においてSAV modelを使用したアマモ場内の流動解析を行い,水中CO2分圧を決定づけている溶存無機炭素濃度(Dissolved Inorganic Carbon:DIC)の変動特性の検討を行った.検討の結果,波動場ではアマモの葉長が長くなるほど,ストークスドリフトの影響範囲が小さくなり,鉛直モードは波の周期が短くなるほど大きくなることが分かった.また,DICの正味の吸収量はアマモの葉長に大きく依存し,波の影響は二次的なものであることが分かった.

  • 長山 昭夫, 森元 裕貴, 三宅 崇智
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     鹿児島県指宿市の指宿港海岸は地下温泉水が砂浜汀線付近に湧出し天然砂蒸し温泉として多くの観光客が集まる.近年この海岸一帯を対象に海岸整備事業が進められており地下温泉水の湧出現象についての詳細な現地観測が継続されている.本研究は多層流解析ソルバに多孔質中における流れ場と温度場を再現可能な項を追加した解析ソルバ(interTempPorousWaveFoam)を開発し,指宿港海岸の砂浜中における温度場と地下温泉水の滲み出しが潮位から受ける影響を明らかにすることを目的とした.その結果,潮位変動により多孔質内の温度分布が大きく変動する現象を再現し,特に下げ潮時には汀線変動に追随する形で鉛直上向きの流速が常時発生している現象を明らかにした.

  • 三宅 崇智, 小野 信幸, 笠毛 健生, 中村 将平, 藤原 尭也, 雪丸 敏昭, 甲斐 信治, 長山 昭夫, 浅野 敏之
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     指宿港海岸では,海岸構造物に養浜を組み合わせた面的防護工法による整備が進められている.施設整備にあたっては,地域の重要な観光資源である「天然砂むし温泉」を含む温泉地下水環境の保全が重要な課題となっている.本研究は,養浜が温泉地下水に及ぼす影響を定量的に把握することを目的として,試験養浜を実施し,温泉地下水の水位や砂中温度に及ぼす影響について現地観測を行ったものである.

     その結果,護岸背後地や養浜範囲周辺の砂浜では,養浜の影響による地下水位の有意な変化はなかった.一方,養浜範囲の砂浜では養浜前と比較して地下水位の上昇と砂中温度の上昇といった顕著な変化が生じることを確認した.

  • 笠毛 健生, 小野 信幸, 三宅 崇智, 雪丸 敏昭, 甲斐 信治, 浅野 敏之
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     指宿港海岸では現在,突堤,離岸堤,護岸,養浜を組み合わせた面的防護工法による整備が進められている.これらの施設を整備するにあたって,地域の重要な観光資源である「天然砂むし温泉」を含む温泉地下水環境の保全が重要な課題となっている.本研究では,養浜の影響予測を行うことを念頭に置き,指宿港海岸における温泉地下水の流動と温度変化を解析するための基礎モデルを構築した.構築したモデルを用いた計算により,陸域の定常的な地下水位及び,海岸付近の潮位変動を伴う地下水位変動を良好に再現した.海岸における砂中温度についても,上層では満潮時に海水による冷却で地下水温が急激に低下し,潮位の低下とともに水温が回復する状況,下層では海水浸透の影響が小さいため潮位に伴う水温変化が小さい状況を比較的良好に再現した.

  • 渡部 靖憲, 杉村 一直, 山下 賢人, 猿渡 亜由未
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究は,風波の発生,成長過程における海面温度分布,水面形,波浪下の流速分布に対する赤外線計測,LIF,PIV同期計測による風洞実験結果から,風波発達過程における熱輸送機構を議論するものである.吹送初期,表面張力波の発生に伴う海面抵抗の攪乱が生じると海面上に発達した交互交代渦による収縮発散流が熱境界層厚を変動させ大気から海洋への熱伝導を局所的に促進させる.平衡風波下ではマイクロ砕波による表面更新が熱輸送を支配し,表面張力波下に発達する厚い渦層を経由して高温の海面を次々と海中に輸送する.

  • 小笠原 敏記, 増田 健太, 菅原 圭吾
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     極域のような鉛直温度勾配の強い温度成層の状態を生成させることが可能な風洞水槽を用いて実験を実施した.実験より得られる波高や可視化データなどを基に,中立成層から不安定成層までの温度成層が風波の発生・発達機構にどのような影響を及ぼすのかを検討した.鉛直温度勾配があるような温度成層の状態において,風波の発達過程に大きな違いが生じることを明らかにした.特に,中立成層と比較して不安定成層では,波高および流速が共に3倍程度増大し,吹送流および波動成分の運動エネルギーが有義波高の2倍程度の深さにまで及ぶことがわかった.すなわち,将来的に極域の海氷域における氷の融解が進行すれば,これまでに観測されないような高波浪な風波の発生が高まることを裏付ける結果である.

  • 髙木 雅史, 森 信人, 二宮 順一, 志村 智也, 内山 雄介, 馬場 康之, 水谷 英朗, 久保 輝広, 渡部 靖憲, 大塚 淳一, 山 ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     Feddersenらによって提案された表層乱流混合フラックスについてのバルク式におけるTKE flux係数αは海洋表層混合の計算において非常に重要である.観測された海象データをデータ解析することによって,海洋の表層混合のパラメタリゼーションを行った.観測データから得られたTKE flux係数αは,風向と波向との関係への依存性,さらに風向と波向が近い場合には弱い波形勾配に対する依存性が確認できた.最適化されたバルク式を用いて2013年の台風Haiyanの推算を行い,海面応答の解析を実施した.解析結果から,表層TKEの空間分布に差がみられ,台風特性にも影響がみられた.これらのことから,大気・海洋結合モデルにおける表層混合過程において波浪依存性が重要であることが示された.

  • 猿渡 亜由未, 大塚 淳一, 馬場 康之, 久保 輝広, 水谷 英朗, 志村 智也, 二宮 順一, 山田 朋人, 内山 雄介, 森 信人, ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     極めて強い台風が通過した際の和歌山県田辺湾 田辺中島高潮観測塔における海上現地観測結果に基き,大気-海洋間熱輸送現象における気泡の寄与について調査した.対象イベント中は水面下に高濃度の気泡群が長時間に渡り残留する条件であった.ADCPの発信音波に対する後方散乱強度を風速から求めるモデルを構築した.本モデルにより得られる後方散乱プロファイルを基に気泡数密度とボイド率の鉛直分布を推定し,それに対する気泡界面を介した熱フラックスを算出した.暴風下の混入気泡による総熱フラックスは他の要因によるものと比べても極めて大きく,また気泡は水面下に深く輸送された先の海水と直接熱交換を行い効率的な熱の鉛直輸送に寄与すると考えられる為,その影響を評価する事は重要である.

  • 渡部 靖憲, 野中 拓実
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究は,バブリング及びジェットの着水に伴って生じる気泡群の幾何学的,運動学的特徴の界面活性依存性を実験的に明らかにしようとするものである.界面活性水及び海水の水面が分裂して生成される小径気泡のサイズ分布は対数正規分布で記述され,両者共に同等の平均気泡径,気泡数そして終末速度を達成する.即ち,提案するレンジの界面活性濃度の水は海水によるエアレーション過程を矛盾なくシミュレート可能である.残留気泡の合体,崩壊は,初期気泡径,界面活性濃度に強く依存した複雑な特徴を示す.

  • 仲座 栄三, 田中 聡, 本屋敷 涼, 宮里 信寿, 福森 匡泰, Carolyn SCHAAB
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     Galvin(1968)は,水理実験によって一様斜面上の砕波形態がspilling,plunging,collapsing,surgingの4つに大別されることを示した.Battjes(1974)は,それらの砕波形態や砕波帯内の諸物理現象がIribarren(1949)の示したパラメータで系統的に整理できることを示し,そのパラメータをsurf similarityと呼んだ.本論は,CADMAS-SURFによる数値計算結果によって,波の砕波形態が進行波の軌道流速と戻り流れとの相対的強弱によって決定されていることを示した上で,新たにresonance mode breakerの存在を位置付けている.また,砕波形態と先行波が派生させる戻り流れとの関連を概説した上で,砕波形態が砕波帯内の波の遡上や反射など諸水理現象に及ぼす影響及び,サーファーが砕ける波をサーフィンできる仕組みを定量的に明らかにしている.

  • 宇多 高明, 大木 康弘, 永沼 慎吾, 菊池 正悟, 大谷 靖郎, 三波 俊郎, 市村 康
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     一般利用者にとって目視で確認できない砕波帯内での深みや,沿岸流・離岸流の発生とも深く係る砕波帯内にある溝の発達状況をwebカメラ画像を用いて調べた.鉾田海岸の29, 30号ヘッドランド間に2台のwebカメラを設置して同時観測を行い,それらの画像データの解析により観測期間中における砕波帯内の微地形と流れの発生状況を水難事故の防止の観点から調べた.これにより,砕波帯内の微地形と流れの監視にwebカメラが有効利用できる可能性が明らかになった.

  • 藤木 峻, 森 信人, 川口 浩二
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,Gaussian Mixture Modelを用いて日本沿岸で観測された方向スペクトルの多峰性の解析を行った.方向スペクトルの多峰性および風波・うねりの出現率について実測データに基づいた定量的な評価を行い,その季節・海域特性について検討した.その結果,多峰性については,全波浪または高波浪いずれの条件においても単峰性の方向スペクトルが50%以上を占め,特に高波浪条件下の秋田では単峰性の風波が90%以上を占めることが分かった.風波・うねりの出現率については,冬季の東北・日本海側で見られた単峰性の風波の出現率の明瞭な増加は,八戸を始めとする太平洋側の地点では見られず,これらの地点では年間を通じてうねりの出現率が卓越するなど日本海側と太平洋側で異なる傾向を確認した.

  • 千綿 蒔, 志村 智也, 二宮 順一, 森 信人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     波浪に対する極値統計解析は,海岸構造物の設計条件の決定に用いられ,工学的に非常に重要である.その際,波浪を引き起こす気象擾乱の種類で区別しない.異なる気象擾乱によって極値分布の標本が構成されている場合,擾乱ごとに年々変動が異なるため,外力に依存した極値分布の不確実性が内在する.また,温暖化に伴う気候変動の影響では,台風と低気圧で将来変化は異なることも考えられ,極値統計解析の際に極端波浪をもたらす気象擾乱は考慮すべきである.本研究では,長期の波浪推算結果と台風及び爆弾低気圧データをもとに,気象擾乱別に年最大波高の極値統計解析を行うことで,極端波浪の統計的特性とその気象要因を把握した.また,1kmスケールの波浪推算による湾スケールでの極値統計解析により,地形要因の寄与についても検討を行った.

  • 北野 利一, 上野 玄太, 森 聡紫, 森 亮太
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     極大高波の確率波高の推定誤差を示すために,既往の研究では,信頼区間を求めてきた.気候モデルによる数値シミュレーションによる大多数アンサンブル標本が提供される現在には,その十分な標本サイズで,確率波高の経験分布さえも得られる場合もある.本研究では,確率波高の推定値の標本分布を数学関数で表した近似理論解を誘導する.なお,その背景となる極値理論は,順序統計量を用いたノンパラメトリック法と類似した素朴な方法によるものであるが,生起率の誤差変動と確率波高の誤差変動との関係を用いて構築されたものであり,極値統計解析で推定される確率波高の誤差が予想以上に大きいことを説明する上でも有用である.

  • 加藤 広之, 遠藤 次郎, 古市 尚基, 不動 雅之, 井上 真仁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     近年,台風の大型化や爆弾低気圧などによる漁港地域への被災が多く発生しているが,有意な有義波浪の増大はないとされている.本研究では,設計沖波を推算するには最大有義波高を用いることから,最大有義波高に着目し,日本沿岸における最大有義波高の経年変化を整理し,最大有義波高変化による漁港地域の設計沖波への影響と設計沖波の変化による構造物の安定性へ影響について検討を行った.その結果,近年,最大有義波高が多く発生しており,適切な時期に設計沖波を見直すことが漁港構造物の合理的な設計には必要であることを提案した.

  • 金 沫列, 原 知聡, 倉原 義之介, 西山 大和, 武田 将英, Tracey H. A. TOM , 川崎 浩司, 間瀬 肇
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     全球波浪予報初期値(JMA GWM)と再解析値(NOAA WW3とECMWF ERA5)の3種類の全球波浪値を入力変数として用いて,ニューラルネットワークの一種であるGMDHを用いた1週間先波浪予測モデルを開発し,日本沿岸の4ヶ所(常陸那珂,鹿島,秋田,留萌)における観測値との比較・検討を行った.観測有義波高と周期をGMDHモデルによる算定値と比較した結果,GMDHによる波浪算定値は,元の全球波浪値に比べてかなり改善されること,および全球波浪値の最適組合せは,対象とする場所毎に異なることがわかった.本研究で用いた1週間先波浪予測GMDHモデルを全球波浪予報値に適用すれば,日本沿岸の波浪予測に有効であることを示した.

  • 宇都宮 好博, 松藤 絵理子, 鈴木 善光, 吉永 泰祐, 内田 洋平, 窪田 和彦, 鈴木 隆宏
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     従来のアンサンブル気象予報の時空間分解能は粗く,波浪等の短期・中期予報に用いるには精度的に問題があった.しかし,2019年6月から空間分解能約5kmのMSM(メソモデル)の初期場に摂動を加えたメソアンサンブル気象予報が利用可能となる予定である.そこで本研究では,アンサンブル気象予報を波浪予報等の短期・中期予報に利用し,不確定性(予測幅)を考慮した波浪予報等の可能性について検討することを目的とした.主要な結論は以下のとおりである.(1)粗い格子点の気圧と風(成分風)を用いて,簡易的な台風判定及び台風中心位置・気圧推定が可能であり,(2)簡易経験式モデルの精度は有義波周期を除いて十分使用に耐え,(3)簡易経験式モデルを用いて,高潮や波浪が最も危険となるアンサンブルメンバーを特定することが可能である.

  • 増田 和輝, 二宮 順一, 斎藤 武久
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     富山湾沿岸に来襲する寄り回り波を予測するニューラルネットワーク(NN)モデルを構築し,2008年2月以降に発生した5m以上の高波を予測対象として精度検証と感度解析を行った.解析結果より入出力関係の影響度を定量的に評価した.3種類の感度解析手法を用いて,極端現象の予測を行う大規模ネットワークでの感度解析の適用性を検討した.解析の結果,感度解析は時系列を考慮できる手法が適切であることを示し,爆弾低気圧の経路に応じてNNの最適な学習条件と入出力関係の影響度が異なり,日本海周辺や日本列島上で発達する経路と太平洋海上で発達する経路でモデルの構成を変えて学習する必要であることが明らかになった.

  • Tracey H. A. TOM , 金 洙列, 武田 将英, 倉原 義之介, 原 知聡, 西山 大和, 川崎 浩司, 間瀬 肇
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     海洋工事は気象や海象の影響を受けやすく,作業船の運航ルートの設定や荒天時の作業可否の判断,避難港の利用にあたり,できるだけリードタイムの長い海象情報は重要である.本研究では,全球波浪予報値とニューラルネットワーク(NN)を利用した1週間波浪予測法を提案し,その基礎となる精度検証を行った.日本気象庁波浪モデルやアメリカ海洋大気庁波浪モデル,ヨーロッパ中期予報センター波浪モデルによる1週間先以上の全球波浪予報値が提供されているが,それらの日本沿岸における波浪予報値としての精度は良くない.そこで,NNを利用した非線形変換による精度の良い波浪予測法を目指し,その第一歩として,全球波浪解析値および予報初期値を用いてその可能性を調べたものである.

  • 荒木 裕次, 森 信人, 安田 誠宏
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     近年気候変動による影響評価研究が精力的に進められており,高潮や波浪の海象予測のニーズは高まっているが,力学モデルで高潮や波浪の長時間積分を行うには計算コストの問題がある.本研究では,深層学習(CNN: Convolutional Neural Network)を用いて空間的に気象情報を入力し,風速や波高といった海象の時系列を予測した.説明変数の組み合わせや気象場の入力範囲等の物理的要因と,ハイパーパラメータのようなCNNの計算条件を変化させ,これらが結果に及ぼす影響についても比較した.伊勢湾と太平洋上の点を対象に行った風速の予測では,瞬時値の気圧場を入力することで精度よく予測できた.伊勢湾と鳥取を対象に行った波高の予測では,うねりを伴うため風速の時刻歴を入力することで精度良く予測できた.過去の気象情報の時系列を入力して,学習期間 (学習データ数) を増やすことで,高い波高も予測できた.

  • Tracey H. A. TOM, Ai IKEMOTO, Hajime MASE, Koji KAWASAKI, Masahide TA ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     Numerical wave prediction models require a large amount of computational power to timely complete the required calculations. Artificial Neural Networks (NN) have been introduced to perform predictions at a lesser computational cost and increased processing speed. Deep learning and specifically Convolutional Neural Networks (CNNs) have become accepted for various image recognition applications. Motivation for the examination of wave prediction by deep learning came from the success of CNNs in vision applications and the similarity of meteorological weather grid data to visual images. This study investigates a deep learning technique using the Japan Meteorological Agency’s Grid Point Value Mesoscale Model to predict wave height and period along Japanese coasts of the Sea of Japan. In particular, this study uses the Xception deep learning architecture with depthwise separable convolution to obtain improved wave height and period prediction over artificial neural networks, and gets overall success results.

  • 犬飼 直之, 高橋 直紀, 斎藤 秀俊, 安倍 淳, 木村 隆彦, 新西 道浩, 油布 健太郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2017年8月に福岡県古賀海岸で,海象が急激に悪化し水辺付近で遊んでいた児童を含む4名が溺死する事故が発生した.本研究では現地調査を行い,目撃者や救助活動者から事故状況及び地形情報を把握した.次に,波浪統計情報より海域の卓越波向と地形の関係を把握し,急激に波高が増大した原因を考察すると共に,このような海象となる天気図パターンを考察した.最後に,事故発生時のビーチ内の波浪挙動を数値実験より把握した.その結果,低気圧が現場海域の南方を東方へ通過,又は東方を北方へ通過時に事故発生時のような急激な波高増加が発生する可能性がある事を示した.周辺海域の卓越波向時には古賀海岸は半島の陰部に位置し波高は減衰する事を確認した.またビーチ内では突堤の影響で水位上昇と速い流速の沖向の流れが発生した事を確認した.

  • 齋田 倫範, 澤井 拓朗, 田井 明, 橋本 彰博
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     干潟域は,周辺海域の水環境を考える上で重要な領域である.本研究では,博多湾内に位置する今津干潟周辺において観測された周期30~60分の水位変動と博多湾の振動特性の関係を明らかにすることを目的として,数値計算による検討を行った.その結果,周期35~60分前後の長周期波の入射によって,今津干潟内で共振が生じうることが確認された.一方,長周期波の入射による博多湾の湾水振動として,大別して4種類の振動形態が確認され,周期約60分および約35分の湾水振動が生起した場合に,今津干潟沖で水位変動が大きくなることが確認された.また,風による博多湾の湾水振動では,北東風や南西風の場合に周期約60分の湾水振動が顕著に現れることが確認された.

  • 横堀 聖人, 田島 芳満
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     1991年にSamoa Faleoloを襲ったサイクロンValの事例について,複雑なリーフ形状が浸水特性に与える影響を明らかにすることを目的とした.現地調査を行い,リーフ海域の水位変動データを解析した結果,数分単位の特定の長周期成分の発達が確認された.続いて,外洋の波浪推算で求まったFaleoloの沖合における波浪条件を入力条件として,リーフ上での波・流れ場を数値モデルを用いて再現した.その結果,実際の浸水被害状況と矛盾しない結果が得られ,リーフ上での水位上昇にはリーフエッジでの砕波に伴うwave setupの影響が大きいことが確認された.またリーフ上での共振現象やリーフギャップにおける強い沖向き流れの影響により,長周期変動成分を含めた最大水位は沿岸方向に大きく変動し,局所的に増幅した水位が浸水特性に大きく影響を及ぼしていることが推察された.

  • 山城 徹, 深田 茉子, 齋田 倫範, 浅野 敏之, 城本 一義
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     九州西岸域で振幅の大きい副振動を発生させる危険度の高い海洋長波の監視に向けて,2012年と2018年の冬から春先にかけて九州西方沖で観測された水位データを解析した.長崎では21~43分,崎津では8~44分,上甑島では10~24分,枕崎で16分の周期帯で副振動が発生していた.これらの地点で副振動を発生させる危険度の高い海洋長波の監視地点として,長崎と上甑島の場合は福江島と女島,枕崎の場合は宇治島と中之島が有効であることを示唆した.

  • 石川 仁憲, 佐藤 嘉亮, 島田 良, 小峯 力
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     わが国の海水浴場における溺水事故の約40%が離岸流に起因する.事故防止のためには,利用者が離岸流を認識し,危険回避できることが求められる.また,広い海水浴場で,数万人の利用者に対し数十人のライフセーバーにより監視救助活動を行っている現状において,離岸流により流されている利用者の早期発見救助が求められる.これらの課題に対し,筆者らは海岸に設置したカメラの画像からAIにより離岸流発生を自動検知し,海岸利用者やライフセーバーにリアルタイムで通知して事故防止と迅速な救助につなげるシステムを開発した.本研究では,AIによる離岸流の発生検知の確からしさについて,現地観測,画像解析,数値計算により調べた.その結果,検証期間における離岸流発生検知の正確度は,画像解析に対して78%,数値計算に対して63%であった.

  • 宇多 高明, 大谷 靖郎, 永沼 慎吾, 菊池 正悟, 大木 康弘, 中村 明日人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2018年8月20日,鹿島灘に面した柏熊地区と勝下地区で海浜流の現地観測を行った,小型GPSを取り付けたフロートを砕波帯に投入し,その移動状況を観測するとともに,ドローンにより染料の拡散状況を撮影した.観測区域のうち勝下地区には両端にヘッドランドが設置されているため,これにより海浜流が強く制約される条件を有する.観測によれば,いずれの地区でも北向きの沿岸流が卓越し,この沿岸流は勝下地区の29号堤により遮られ,流速が1m/sに及ぶ強い離岸流となって沖向きに流出した.その後,この流れは29号堤の沖端をかすめるようにして北向きの流れとなり,29号堤の沖端から北側に流れの剥離域を形成したことが分かった.

  • Nguyen Van KHANH, Akio OKAYASU, Tsuyoshi IKEYA, Daisuke INAZU, Van Pha ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     In recent years, in Vietnamese Mekong Delta (VMD) riverbank erosion and collapse have been excessively occurring in many rivers, especially in small rivers, and threatening people living near the riverbank not only their properties but also their future, even their lives. Erosion and collapse are predicted to increase significantly under the influence of tidal range, sea level rise (SLR), and land subsidence. To confront with erosion and riverbank collapse, small rivers should be intensively studied together with large rivers as most recent studies. However, making a research on small rivers in VMD will be very difficult because of the lack of hydraulic data. The main objective of this study is to demonstrate how to conduct a practical flow modelling for a small tidal river in case of only time-series water level at the mouth available. The results of this study are concentrated in three important points. First, a new searching method for convenient interpolation methods was proposed to reproduce the river bathymetry with sparse depth samples. Second, it was found that Riemann boundary condition is very helpful in case of lack of upstream discharge data but need to be modified to be compatible with 2D flow model. Finally, it was demonstrated that flow model of a river can be easily simulated in long period by applying downstream tidal data and Riemann condition. This research will be helpful for other studies with similar field conditions in the future.

  • 渡辺 一也, 堀井 優介
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     近年では地球温暖化の影響による局地的な集中豪雨などの異常気象の増加に伴い,波高の増加や渇水を引き起こすと予想されており,河口地形変化による塩害の発生が危惧されている.特に,日本海側に面する河川では季節的な変動を繰り返しており,塩水侵入現象にも大きな影響を与えている.そのため,河口水理特性について把握することは非常に重要である.

     本研究では砂州の伸長が顕著である米代川を対象とし,現地観測,データ解析から河口水理特性についての検討を行った.その結果,河口幅の変化量ΔBと最大流量Q,最大波高Hの関係からΔBは,最大で約20m以上,前の週から砂州が大きくなり,閉塞する場合には約10m程度の河口閉塞が生じていることが分かった.また,変化率αから米代川では河川流量が500m3/s以下での河口幅の変動が多いことが明らかとなった.

  • 岡田 信瑛, 内山 雄介
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     1993〜2017年の25年分の全球3次元海洋診断データARMOR3Dに対してwinding angle法に基づく渦抽出・追跡アルゴリズムを適用し,日本沿岸の黒潮域周辺における切離中規模渦の挙動を解析した.黒潮流軸と渦の距離や相対渦度履歴を用いて,黒潮続流から切離する中規模渦およびその後黒潮に再衝突する渦を自動抽出することに成功した.切離渦の発生に対しては北太平洋規模の中期的な気候モードに対応した黒潮続流の強度や安定性の影響を強く受けること,Rossby波として西方伝播した切離渦は,黒潮に再衝突した際には黒潮流軸に作用し,沿岸域を含む広範囲で海洋構造を変化させることなどが示された.

  • 金子 祐, Neriezza OLAP , 梅田 雄太, 横山 勝英
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     感潮域に分派地点を有する荒川・隅田川において塩分,水位および分派地点の通過流量モニタリング結果から塩水遡上特性および塩水遡上が分派に与える影響を検討し,以下の結論を得た.

     (1)荒川では小潮時に弱混合,大潮時に強混合で遡上していることが確認され,潮位差が小さい期間が継続することで遡上距離が延伸していくと推察された.(2)両河川の塩水遡上と地形の特徴を考察することで蛇行や川幅,河床高などの地形要因が塩水遡上を抑制することが示唆された.(3)平常時の大潮の分派特性として,下げ潮において荒川から隅田川への分派量はわずかであることが確認された.その結果,単位幅流量の違いが塩水遡上に影響を与えることが分かった.これらから塩水遡上や分派量には流量と地形の要因が相互に関連していることが示唆された.

  • 木村 和久, 増永 英治, 小硲 大地, 内山 雄介
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,領域海洋循環モデルROMSを用いた伊豆諸島周辺海域の流動再解析値に対してLagrange粒子追跡計算を実施し,黒潮や渦,潮汐が複合的に影響する海域における物質輸送および拡散の評価を行った.潮汐による物質拡散への影響を調べた結果,2日間スケールでは潮汐が物質の拡散に大きく寄与していたが,2日間以上の長い時間スケールでは潮汐が大スケールの移流の効果を抑制し,物質の輸送を抑制させていた.また,粒子の移動速度の周波数スペクトルは,潮汐により日および半日周期にピークを示し,潮汐より高周波数側のスペクトルは潮汐を考慮したモデルの方が高く,低い周波数では潮汐を考慮していないモデルの方が高い値を示した.よって潮汐はサブメソスケール渦などの高周波数の運動を促進させ,長い時間スケールの大きな渦運動を抑制させている可能性があることが明らかとなった.

  • 増永 英治, 浅岡 大輝, 小室 俊輔, 松本 俊一, 小野 正人, 番場 泰彰
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では霞ヶ浦を形成する湖の一つである北浦において近年開発された曳航式装置YODA Profilerを用いて調査を行い,沿岸地形と風応力が形成する密度構造及び混合状態を計測した.調査から風応力と地形が影響する複雑かつ小スケールな水温(密度)構造を直接観測することに成功した.風応力により傾圧的な内部波構造を形成していることが明らかとなり,風向方向の傾圧構造はWedderburn Numberで概ね説明することができた.一方風向に対し垂直方向の密度構造は,複雑な湾・岬スケールが空間的な風応力に対する影響に空間的な変化を与え,岸方向の傾圧的な波状構造を形成していた.観測された複雑な密度や混合構造は植物プランクトンや溶存酸素等の生態系パラメータの分布に直接影響を与えていた.

  • 川崎 浩司, 二村 昌樹, 村上 智一, 下川 信也, 尼子 順子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では非構造格子に基づく海洋流動モデルFVCOMを用いて,伊勢湾湾奥部を対象とする高潮浸水計算を実施した.台風条件は,①1959年伊勢湾台風,②IPCCのA1Bシナリオに基づく将来気候下の可能最大級台風の2つである.伊勢湾台風による高潮計算では,名古屋港の潮位偏差を良好に再現できることを検証した.また,伊勢湾台風を契機に整備された海岸構造物により,伊勢湾台風規模の高潮はほぼ防護できることを確認した.次に,将来気候下の可能最大級台風による高潮浸水計算を実施し,浸水過程および高潮防護施設の減災効果について検討した.また,構造格子モデルによる既往の計算結果との比較から,構造物の取り扱いなど非構造格子モデルの特徴について確認した.

  • 二村 昌樹, 川崎 浩司, 村上 智一, 下川 信也, 飯塚 聡
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2018年9月の台風21号により,大阪湾沿岸部では人工島や埋立地を中心に高潮・高波による浸水被害が発生した.将来的には地球温暖化により海水面の上昇や台風の強大化が危惧されており,可能最大級台風による浸水域の予測や防潮施設による減災効果の評価は重要であると考えられる.本研究では,高潮浸水解析用に改良した津波シミュレータT-STOCを用いて,名古屋港周辺を対象地域とする現在/将来気候下の可能最大級台風の高潮浸水解析を実施した.その結果,名古屋港においては伊勢湾台風を約2m上回る潮位となり,海抜ゼロメートル地帯を中心に広範囲で浸水が生じた.また,防潮扉の開閉を考慮した解析を実施した結果,防潮扉の閉鎖により堤内地の浸水開始時刻は遅くなるが,一方で高潮潮位が防潮壁を上回る場合は,浸水開始以降の避難時間の猶予は短くなるという知見が得られた.

  • 早川 雄飛, 水戸 佳祐, 八木澤 一城, 大谷 茂央, 金 洙列
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     北海道沿岸では,気候変動の影響等により爆弾低気圧が来襲する頻度が増加しており,高潮による浸水リスクの増加が懸念される.本研究では,高潮推算の実施時の留意点を把握するため,2014年12月に来襲した爆弾低気圧による高潮の再現計算を高潮・波浪結合モデル(SuWAT)を用いて行い,根室市の浸水実態を評価した.その結果,地盤が低い箇所に加え,根室港の岸壁からも浸水している様子が確認され,港湾や漁港の岸壁の高さを適切に設定することが重要であると考えられた.次に,道内の各検潮所において既往最大潮位偏差を示した擾乱に対し,高潮と波浪の追算実験を行い,SuWATを用いて道内各地の浸水リスクを評価する際の留意点を検討した.その結果,海峡部など地形条件が特殊な場合,風速制限を地域毎に設定する必要があることを明らかにした.

  • 吉野 純, 板垣 侑理恵, 小林 智尚
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,渦位逆変換法に基づく「温帯低気圧ボーガス」を新たに開発し,多数の初期値に基づいて気象モデルにより温帯低気圧(2014年12月の爆弾低気圧)の進路アンサンブル実験を行い,北海道東岸の根室と花咲に着目して高潮モデルにより可能最大高潮を評価した.温帯低気圧ボーガスの利用により,初期の下層低気圧の位置をずらした多数の初期値を作成することが可能となった.進路アンサンブル実験の結果より,潮位上昇の半分は温帯低気圧の中心付近の気圧の吸い上げ効果で説明できるが,遠浅な海岸にある根室では風の吹き寄せ効果も作用して約1.5mの可能最大高潮となった.一方で,急深な海岸にある花咲でもエクマン輸送の効果も作用して約1.1mの可能最大高潮となった.遠浅な海岸の根室でも急深な海岸の花咲でも温帯低気圧の微妙な進路の違いが高潮の形成に大きく影響していることが明らかとなった.

  • 畑田 佳男, 稲垣 孝一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     観測資料から推定した海上風と気圧の平面分布を入力として1時間間隔で得られた東京湾における94気象擾乱時の波高および高潮偏差の推算結果から,各ストーム中に発生した両ピーク時刻の対応を調査した.このためまず推算値と観測値のピーク発生時刻の比較からその推算精度を検討した.ついで10地点における波高と高潮偏差のピーク時刻の差の頻度分布の比較から地点によるピーク発生時刻の違いを検討した.これによれば東岸では高潮偏差が波高より早く,西岸では波高が高潮偏差より早くピークをとる傾向にある.同時に湾口近傍地点では波高と高潮偏差のピーク時刻の差が大きくなる傾向にある.また波高と高潮偏差の同時生起頻度は伊勢湾における6年より短い4年に1度程度と推定される.

  • 信岡 尚道, 海老根 尚之
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     東日本の太平洋沿岸では温帯低気圧が著しく発達し高潮災害を引き起こす場合がある.本研究は再現期間が1000年ほどの最大クラスの高潮を推定することができる確率的低気圧モデルの構築について検討を行ったものである.この構築のために全ての実績低気圧トラックデータを用いると総じて低気圧が発達しがたくなる.他方、強い低気圧のみを資料として構築した確率的低気圧モデルでシミュレーションした低気圧は実績低気圧を上回る強さになり,またそのシミュレーションした低気圧トラックから高潮を算定しても,実績低気圧トラックから算定した高潮より高くなることが確かめられた.また,実績低気圧と確率的低気圧モデルトラックから算定されたそれぞれの高潮を用いた極値統計解析の結果は良好な関係を示した.

  • 羽賀 拓人, 藤原 和弘, 関 克己, 有川 太郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     高潮の即時的な予測を高精度かつ短時間で行う場合,準三次元モデルと三次元モデルの併用が必要となり,モデルの適用範囲・条件を明確にすることが重要となる.しかし,島嶼部では地形の特徴上,高潮災害が発生する可能性が低い為そのような推算手法に関する検討例が少ない.本研究では,2017年に発生したHurricane Irmaを対象に,準三次元モデルと三次元モデルを用いて高潮計算を行い,モデルの適用性について検討を行った.さらに,Barbuda島周辺ではハリケーン通過に伴う三次元流速場に着目した検討も行った.結果,島嶼部での高潮推算を行う場合,三次元モデルを用いることが必要なケースがあることが示された.またそれは,風の吹き寄せ効果による潮位変動が発生するケースであり,三次元モデルを用いると,その変動を適切に再現することが可能であることが示された.

  • 片岡 智哉, 二瓶 泰雄
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,2018年台風21号高潮時に発生した兵庫県高橋川の河川氾濫の実態を調べるため,現地で河道内と氾濫域の痕跡調査を実施するとともに,高橋川の氾濫過程を把握するための平面2次元氾濫流解析を行った.その結果,高橋川では高潮による水位上昇が主要因となり,河川氾濫に至ったことが明らかとなった.その主な氾濫源は堤防高より低い橋梁からの越流であり,特に橋桁上端高の低い深江橋で比較的大きな越流が発生した.越流後,約30分で氾濫域全域に広がり,0.11km2の範囲が浸水し,最大浸水深は0.62mであった.一方,最高潮位時刻の31分前に降雨に伴う洪水の水位ピークが見られたが,高潮発生時には洪水の影響は少なく,今次災害への寄与は小さかった.

  • 馬場 康之, 久保 輝広, 森 信人, 渡部 靖憲, 山田 朋人, 猿渡 亜由未, 大塚 淳一, 内山 雄介, 二宮 順一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2018年8月後半から9月にかけて,四国から紀伊半島付近に3個の台風(20号,21号,24号)が接近した.和歌山県田辺湾の湾口に位置する田辺中島高潮観測塔では,台風21号,24号の接近時に高波浪が観測され,海面上10mに設置された計測機器が被災するなどした.台風21号接近時には有義波高は最大9.60m,24号の際には波高計が被災したため台風通過後のデータが欠測となったが,台風接近前の最大値は11.09mに達した.いずれの場合も高波浪となった期間の前半はうねり成分が卓越し,観測塔付近の風向が190度を超えて吹送距離が長くなった後には風波成分が発達し,風波成分とうねり成分が重畳して高波浪状態が継続される状況が確認された.

  • 金 洙列, 森 信人, 竹見 哲也, 澁谷 容子, 安田 誠宏, 中條 壮大, 志村 智也, 二宮 順一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2018年台風21号は神戸港に上陸して,第2室戸台風による最大高潮偏差と最大有義波高を超える2.78mの最大高潮偏差と4.72mの有義波高を記録した.本研究では,高潮・波浪結合モデルSuWATと経験的台風モデルおよびメソ気象モデルWRFの気象場を用いて,大阪湾における高潮偏差と波浪場を再現することを目的とする.経験的台風モデルとSuWATを用いて異なる台風半径を推定し,3種類の風速制限を波浪依存海面抵抗係数に適用することで,最大高潮偏差は観測値と比べて0.3m以下,最大有義波高は0.5m以下の誤差で推算することができた.さらに,これらの推算方法による結果は,WRFの気象場を用いた推定高潮偏差と推定有義波高の推算により検証された.

  • 森 信人, 竹見 哲也, 金 洙列, 澁谷 容子, 安田 誠宏, 中條 壮大, 二宮 順一, 志村 智也
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     高解像度の気象と高潮・波浪の数値モデルを用いて,2018年台風21号を対象に,最大風速,最大高潮偏差および最大波高を予測ターゲットに疑似予測の数値実験を実施した.台風の中心気圧および最大風速は,予測時間長さが短くなるに従い精度が上がり,最低中心気圧は3日前予測から,最大風速は2.5日前からほぼ解析値と同じ値を取る.4日前予測では,イベントのピーク出現時間は12時間程度遅く評価されていたが,2日前予測ではほぼ問題ない精度が得られた.高潮の予測と再現実験の差は両者ともに最大で0.5m程度であり,2日前から量的に信頼性の高い予測値が得られることがわかった.

  • 小園 裕司, 桜庭 雅明, 野島 和也
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2018年台風21号によって近畿地方で台風及び高潮浸水被害が発生した.また,関西国際空港の連絡橋に走錨した船舶が衝突するなど,強風と高潮による漂流物被害も生じた.そのため高潮時においては,風による影響を踏まえる必要があると考えられる.本研究では,高潮時における風の影響を考慮した船舶の高潮漂流計算モデルを開発した.さらに,同台風による高潮の再現計算と船舶の高潮漂流計算を実施した.その結果,大阪湾周辺における気象状況,潮位変化は概ね一致することを確認した.さらに,漂流計算の風や錨鎖による作用についてケーススタディを実施したところ,船舶の挙動を概ね再現した.このことから,本モデルは,船舶の高潮漂流の挙動を予測する際に有用であることを示した.

  • 井上 史也, 越前谷 渉, 久松 力人, 堀江 啓
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     2018年台風21号についてWRFによる再現実験と紀伊半島を海と仮定した仮想実験を実施し,神戸市で高潮が発生した際の風速場に対する陸地の形状の影響について調査した.再現実験では神戸市においてアメダスの観測に見られる高潮を引き起こすような風速場が概ね再現された.一方,ベストトラックに傾度風近似を仮定した場合は西風が卓越し,アメダスの観測の特徴と大きく異なる.仮想実験では,神戸市付近における30分間平均風速の最大値は再現実験と比べ6%小さく,紀伊半島により神戸市付近で風速が増大したことが示唆された.これらの結果は精緻な高潮リスクの評価には台風の物理学的なシミュレーションにより陸地の形状の影響を考慮した風速場の再現が必要であることを示唆している.

feedback
Top