土木学会論文集B2(海岸工学)
Online ISSN : 1883-8944
Print ISSN : 1884-2399
ISSN-L : 1883-8944
76 巻, 2 号
選択された号の論文の237件中101~150を表示しています
論文
  • 中道 誠, 山本 隼也, 今井 聡, 長井 貴裕, 寺村 彩可, 角田 保
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_601-I_606
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     三重県尾鷲湾内に位置する船津川と銚子川が合流する河口部では,河口砂州の発達に伴う河口閉塞が問題となっており,定期的な維持浚渫が実施されている.本研究では,当該地における望ましい河口閉塞対策の立案に向けて,河口砂州の動態とその要因を把握することを目的として,UAVによる現地観測等の実態分析を行うとともに,河口砂州のフラッシュ及び形成に関する波・流れ・地形変化の数値解析を実施した.これより,全国有数の多雨量かつ台風常襲地域である当該地に形成される河口砂州の変動特性を明らかにした.また,河口を閉塞させる砂州は,湾口方向からの高波浪が継続して作用することで形成されること,形成された河口砂州は,船津川と銚子川が背割堤下流で合流し掃流力が増加することでフラッシュされやすい状況にあることがわかった.

  • 大岡 朗, 鈴木 悟, 保竹 真幸, 宇多 高明, 五十嵐 竜行
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_607-I_612
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     沼川新放水路について維持流量の有無の条件を与えて縮尺1/50の平面模型実験により高波浪による函体内堆砂実験を行い,さらにフラッシュ時の放水機能について調べた.いずれの条件でも高波浪が作用すると吐口では堆砂が起き,吐口は砂で埋まったが,貯水槽の水位をT.P.+16.5m(模型上33cm)まで高めてフラッシュ放流を行ったところ,吐口に開口部が形成され,放水が可能であることが明らかになった.また,維持流量を与え続けると函体内に水が満たされているため,1, 2号吐口ともフラッシュが容易になった.

  • 片山 崇, 黒岩 正光, 山本 真二, 梶川 勇樹, 田島 大地
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_613-I_618
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     鳥取県中部の天神川は約20kmの北条海岸を形成する漂砂の供給源であり,同海岸の砂浜保全を適切に実施していくためには,天神川からの流出土砂量を把握することだけでなく,河口周辺の地形変化を把握することも重要である.本研究は出水と波浪によって起こる砂州の地形変化特性と河口周辺の土砂動態を現地調査によって検討したものである.調査結果より,河口砂州の消失は,出水だけでなく,長周期のうねり性の波も影響していたことが明らかとなった.さらに,河口砂州およびその周辺の地形測量結果より土砂変化量が明らかとなった.また,現地調査結果を補完するツールとして波と流れの相互干渉を考慮した3次元海浜変形モデルを構築し,適用性を検討した.

  • Duong Cong DIEN, Nguyen Xuan TINH, Hitoshi TANAKA, Nguyen Trung VIET
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_619-I_624
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     Thu Bon River delta is located at Quang Nam Province in the central region of Vietnam. Cua Dai coastal area has a long coastline from Son Tra Peninsula to An Hoa Cape. This nearly 100 km long coastline plays a significant role in the economic development of the Quang Nam Province. In recent years, coastal erosion along Cua Dai Beach has become severe. On November 05, 2017, The Damrey Typhoon attacked the central region of Vietnam causing an extreme rainfall and river flood in the Thu Bon river basin. About two months after the typhoon, a new island, or as called “Dinosaur Island” was formed at the Cua Dai River mouth. The formation and development of this new island cause a big problem for navigation transportation. Therefore, this study aims to investigate the causing mechanism and the development of the new island. As a result, the formation of the island is due to two processes; shallower sand terrace area due to the river sediment deposition after the flood and the sediment accumulation due to the wave actions. The area of the new island is increasing and it tends to move to the north direction. Besides, the area of the north and south attachment bars are also increasing from the time of new island formation. These findings are really useful information for the local river and coastal authorities to find the best countermeasure solutions to overcome the current situation.

  • Nguyen Trong HIEP , 田中 仁, Nguyen Xuan TINH
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_625-I_630
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     東日本大震災津波の際,太平洋側に位置する河口において大きな地形変化が生じた.その後,9年以上の時間が経過した現在においても依然として津波の痕跡を地形に留めている河川が見られる.本論文に取り上げた北上川においては,河口砂州の形成箇所が河道を上流に約1km遡った箇所に変化し,また,その規模においても津波前と大きな差違が見られる.そこで,空中写真・衛星画像をもとに北上川河口地形の津波後の回復過程を明らかにするとともに,地形回復に寄与する河道内での波浪変形過程,およびそれに伴う土砂の移動過程について検討を行った.さらに,その成果をもとに河道内に形成される河口砂州の形状を再現するためのモデルを構築した.得られたモデル係数は他所で得られている値と比較的近いものであることが判明した.

  • 宇多 高明, 芹沢 真澄, 大中 晋, 市川 真吾
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_631-I_636
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     PhilippineのManilaの北約150 kmに位置するLingayen湾湾奥のSanto Tomas付近の凸状海岸線を選び,そこに造られた突堤群の周辺,および湾奥に形成された砂嘴周辺での汀線変化を衛星画像により調べるとともに,2018年2月23日には現地踏査を行った.これによりHigh-angle waveの条件下で突堤が設置された場合,突堤を超えて砂嘴が発達することを明らかにした.また,突堤下手側での砂嘴の伸長により内側にlagoonを有するbarrier islandが発達することをBGモデルにより予測可能とした.さらに湾奥に形成された砂嘴周辺での汀線変化より,沿岸漂砂量がほぼ20万m3/yrであることを明らかにした.

  • Takaaki UDA, Chun-Hung PAO, Yu-Hsiang LIN
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_637-I_642
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     Along the coastline north of Tainan in Taiwan southward longshore sand transport prevails because of oblique wave incidence from the north, and a barrier island system has developed along the coastline. In this area, the angle of incident waves to the direction normal to the shoreline is large; thus, the formation of a barrier island and a sand spit can be observed. These beach changes due to prevailing southward longshore sand transport were investigated using satellite images and topographic survey data, and the rate of southward longshore sand transport in the long-term between 1983 and 2017 was estimated to be 6.7×105 m3/yr from the comparison of shoreline changes.

  • Nguyen Xuan TINH, Chaminda SAMARASURIYA, Hitoshi TANAKA
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_643-I_648
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     Kalutara is a major city in Kalutara District, Western Province in Sri Lanka. It is located in approximately 40km south of the capital Colombo. This area is very famous for the Kalutara Bodhiya Temple and a long sand spit formed at the entrance of the Kalu River. These two places are the symbols of Kalutara city and very attractive destinations both for domestic and international tourists. However, very recently, the sand spit has collapsed due to the impacts of the flood on May 26, 2017. Until present, the sand spit morphology has not recovered yet. The disappearance of the sand spit causes a big socio-economic problem not only to the salinity intrusion further upstream of the Kalu River but also reduce the tourist attraction. Therefore, this study aims to figure out the long-term and short-term sand spit morphological evolutions after the flood of the in Kalutara. This is vital importance before making any countermeasure plans to restore the former sand spit in Kalutara, Sri Lanka.

  • 村田 祐太, 由比 政年, 楳田 真也
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_649-I_654
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     石川海岸に発達する多段砂州の組織的変動と波浪伝達特性の相互関係解明のための基礎検討として,長期地形観測データを対象にブジネスク数値モデルを用いた体系的数値解析を行い,砂州配置変化が波浪伝達特性に及ぼす影響を検討した.まず,既往の水理実験結果との比較からモデルの適用性を検証した.次に,異なる波高の波が同一砂州地形に入射した場合を比較し,多段砂州の存在が入射波高の影響を緩和する形で波浪伝達に作用することを示した.続いて,同一波高の波が異なる砂州地形に入射した場合,岸沖方向波高分布に顕著な変動が生じることを示した.さらに,年最大規模の入射波浪を考えた場合,その波高が年によらず一定と仮定しても,最沖砂州背後域への伝達波高は,砂州配置の組織的変動に規定される形で周期的に変化し得ることを明らかにした.

  • 趙 容桓, 中山 遼哉, 菊 雅美, 中村 友昭, 水谷 法美
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_655-I_660
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,七里御浜井田海岸を対象に,UAV-SfM/MVS測量から作成したオルソモザイクを用いてネットワークカメラの画像解析の改良を行うとともに,ネットワークカメラの画像から抽出した水際線の位置とUAV-SfM/MVS測量により得たDEMを組み合わせた地形変化特性の検討を行った.その結果,ネットワークカメラ画像から得られた水際線の位置は,DEMとの比較により標高1~2mの範囲にあり,実際の汀線より陸側に位置することが判明した.また,ネットワークカメラの画像や画像から得られた水際線の位置情報の活用によりUAV-SfM/MVS測量間も含めた連続的な地形変化特性の検討が可能であることを示し,両者を組み合わせた評価手法の有用性を明らかにした.

  • 柿沼 太郎, 五十嵐 陸, 村上 佳広
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_661-I_666
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     薄板状浮体と流体の相互干渉問題を対象とした数値モデルを適用し,超大型浮体構造物が有する津波高さの低減効果に関して検討した.津波が超大型浮体構造物に入射すると,分裂して浮体波が生成され,これに伴い津波高さが低減される.津波高さの最終的な低減率は,浮体の曲げ剛性率及び全長が大きいほど,また,入射する津波の波長が短いほど,大きくなった.また,岸沖方向に2基の浮体を設置する場合,沖側の浮体を通過後,重合により津波高さが最大になった地点に沖側端が位置するよう岸側の浮体を設置した場合に,津波低減効果が大きくなった.ただし,岸沖方向に浮体を複数基設置する場合,各浮体の浮体長を入射波波長に対して十分長くする必要がある.更に,浮体背後に回折がある場合も,周辺に向かう波が存在するため,最終的な津波高さの低減効果が確認された.

  • 古市 尚基, 遠藤 次郎, 門 安曇, 大村 智宏, 加藤 広之, 岩瀬 浩之, 中山 哲嚴, 山﨑 将志
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_667-I_672
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     津波流れに対する防波堤マウンド上被覆ブロックの所要質量算定にはイスバッシュ式が用いられる.本研究はイスバッシュ式内における力学的仮定の検証を目的として,マウンド上ブロックに作用する津波流体力に係る数値的検討を行った.ブロック周辺の流速や圧力について水理模型実験と整合する計算結果を得たとともに,(1) 流体力がブロック面に局所的に作用しブロックが回転しつつ移動することの一因となる,(2) 下流側法面上端部やマウンド水平面の前端および後端部のブロックは,被る流体力が大きく不安定化し易い,(3) 同等の断面平均流速でも水位によって作用流体力が変化することが示唆された.本研究は所要質量算定式をモーメントの枠組みで導出することの妥当性,およびその際に抗力のみならず揚力の影響を考慮することの重要性を指摘するものである.

  • 織田 幸伸, 本田 隆英, 橋本 貴之
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_673-I_678
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     津波による漂流物の衝突力については,既にいくつかの評価式が実験結果に基づき提案されている.しかしこれらの水理実験は,陸上部に置かれた漂流物が,津波により押し流される条件を対象としており,浮遊状態から漂流する船舶などの漂流物については,適用性が確認されていない.そこで本研究では,防潮堤を対象にした水理実験を実施し,漂流物の衝突頻度,堤体に生ずるひずみエネルギーの特性について検討した.また既往の評価式との比較の観点から,衝突エネルギーを衝突力に変換する手法を導出し,あわせて衝突力の評価式について検討した.

  • 榊原 繁樹, 砂原 俊之, 阿部 郁男, 久保 雅義, 津金 正典
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_679-I_684
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     東北地方太平洋沖地震に伴いS港で津波高さ9m超の来襲により荷役係留中に被災した9万DWT級大型石炭船をモデルに,段波津波が船体の横方向から作用する場合の固定模型船の波力や模型係留船の船体運動及び係留力に関する実験的検討を行った.また係留船に作用する水平波力となるSway津波波力の推定を試みた.津波が船体の横方向から作用する場合,津波高さに伴う排水量に匹敵する程の大きな波力及び係留力となることがわかった.また模型係留船の船体運動及び係留力の計測値から算出したSway波力と固定模型船のSway波力計測値の比較により,津波来襲時の衝撃的な波力など両者が類似することがわかった.

  • 村瀬 史弥, 渡部 真史, 平石 晃士, 有川 太郎
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_685-I_690
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     陸上に設置した漂流物が遡上波先端部により漂流し被衝突体に衝突させる水理実験を行い,先に被衝突体に衝突した遡上波先端部でのクッション機能による漂流物の衝突速度の低減効果を調べた.水平床の端に被衝突体として壁体を設置し,水塊の厚さに影響を及ぼすよう漂流物の初期条件を異なる条件下で実施し,水塊の厚さが大きくなる要因を追究した.また,遡上波と壁体により反射した水塊が混在する条件下で,水塊が衝突確率・衝突速度に与える影響を検討した.その結果,「反射した水塊による漂流速度の低減率」と「反射波厚さ」から衝突速度を評価可能にした.また,数値シミュレーションを用い算定手法の妥当性を示し,壁体直前の反射波中における漂流速度低減の理論式を用いて,本条件下において衝突速度を定量的に評価可能であることを示した.

  • 野田 智也, 山中 悠資, 田島 芳満, 小関 健斗
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_691-I_696
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     津波による防波堤の倒壊要因のひとつとして,被覆ブロックの飛散後に発生するマウンドの変形とケーソンの滑動が挙げられることから,ブロックの安定性の確保は粘り強い防波堤の設計において重要である.津波に対するブロックの安定重量の算定には,定常流による抗力を外力とするイスバッシュ式が用いられることが多く,津波来襲時の強い非定常性や,引き波にともなうブロックの干出や急激な水位上昇による影響は十分に考慮されていない.本研究では断面水槽を用いた水理模型実験を実施し,防波堤マウンドの干出を含む異なる初期水深条件で段波が作用した際のブロック周辺での水理特性を分析した.その結果,津波来襲時の水深がブロックの安定性に大きく影響すること,またブロックには抗力と同等以上の揚圧力が作用していることなどが明らかとなった.

  • 有光 剛, 川崎 浩司, 二村 昌樹
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_697-I_702
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     沿岸域に位置する発電所では,津波で輸送される土砂に対する取水施設の通水性の確保が求められる.取水施設は複雑な形状の構造物のため,津波による土砂の影響を数値解析で評価する場合,3次元モデルを適用する必要がある.本研究では,著者らが開発した3次元津波移動床モデルを用いて,取水施設を模擬した水理模型実験の再現解析を実施した.浮遊砂濃度の実験結果との比較から,3次元津波移動床モデルは津波により輸送される浮遊砂の動的挙動を精度よく再現できることを確認した.また,浮遊砂の輸送には取水ポンプが影響を及ぼす点,取水施設内の浮遊砂濃度は3次元性を有する点が明らかとなった.

  • 加藤 広之, 古市 尚基, 門 安曇, 岩瀬 浩之, 山﨑 将志
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_703-I_708
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     津波の流れに対するマウンド被覆ブロックの所要質量算定方法としては通常Isbash式が用いられているが,所要質量が流速の6乗に比例するため,津波の流速が大きくなると所要質量が極めて大きくなることが指摘されている.加藤らは定常流による被覆ブロックの安定実験から仮想高さΔを導入した流速の3乗式を提案している.本研究では定常流による水理実験により,津波に対する被覆ブロックの安定質量について,法勾配,被覆ブロックの大きさ,縦横比,厚さを変更した水理模型実験を実施し,Isbash式と加藤らの提案式による質量算定方法について比較を行い,質量算定法の適用性に関する検討を行った.

  • 宮本 龍, Anawat SUPPASRI , 今村 文彦
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_709-I_714
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     建物の地震被害を対象とした被害関数では建築年代が考慮されたものが多いが,津波被害についての検討事例は少ない.本研究では,津波被害関数に与える建築年代の影響について,東日本大震災の建物津波被害データを統計分析し,影響の定量化を行った.基となる建物津波被害データについては,2011年東北地方太平洋沖地震での建物津波被害データを使用し,一般化線形混合モデルによるロジスティック関数を採用した被害関数を推定した.その結果,建築年代が新しい場合に被害が低減される傾向が確認され,建築基準法改正などと関連が推定された.津波被害の推定の際,評価対象建物の建築年代が判明している場合,本被害関数を利用し,建築年代を考慮しない場合よりも信頼性と予測性能の高い津波被害推定が可能である.

  • 高木 利光, 松島 三郎, 座波 健仁
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_715-I_720
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     人工リーフは水面下の構造物であることから景観に配慮した海岸保全施設として一時広く普及した.しかし,波浪は低減できるものの,天端上での砕波によって誘発される流れのため背後の土砂の安定性に対しては効果が発揮しずらいことが,その後の事例等で明らかとなってきた.そのことから人工リーフの構造改善のためクレスト型人工リーフなど,様々な改善が試みられているが必ずしも効果が発現されていない.ここでは,クレスト型人工リーフをもとに更なる改善案を提案するとともに,その効果をここで提案した数値解析手法により検証した.その数値解析手法は,数値波動水槽による断面二次元波浪変形計算によって得られたクレスト上を越流する流量をブシネスクモデルの境界条件として与え,平面的な波浪・流況場を計算する方法である.

  • 中道 誠, 岩佐 隆広, 髙山 靖史, 山本 隼也, 久保 宜之, 岡林 福好, 中山 雅登, 新谷 大吾, 岡﨑 聡
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_721-I_726
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     高知海岸南国工区では,人工リーフが有する漂砂制御機能を増強させるため,既設人工リーフの天端上に消波ブロックを設置して離岸堤化する極めて例が少ない構造への改良を計画している.そのため,本研究では,今後の施設設計に当たり整備効果及び安定性の高い施設の平面形状を決定することを目的として,平面実験と波浪・流況解析を実施した.これより,既設人工リーフを消波ブロックにより離岸堤に改良する場合の高知海岸南国工区の地形及び計画波浪の条件下における整備効果及び施設安定性を明らかにした.また,離岸堤化部に開口部を設けた場合,主波向である東寄りでは開口部の端部で被災する恐れがあること,人工リーフ改良(離岸堤化)の構造は,離岸堤化部に開口部を設けない方が整備効果及び施設の安定性が高く優位であることがわかった.

  • 鈴木 樹, 細山田 得三
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_727-I_732
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     本研究では2次元水路において定常越流実験を実施し,越流水の落水位置を変更してブロックに作用する流体力の影響を調べた.また,粒子法による数値実験で実験の流況を再現して被覆ブロックの被災状況と被覆ブロックに作用する流体力の関係について明らかにした.その結果,天端ブロックに関しては被災と流体力の関連性について転倒モーメントによって定量的に説明することができ,法面ブロックに関してはブロックに直接越流水が打ち込まなくとも,マウンド上の高速流や巨大渦の影響によって被災する可能性が大きいことが示された.

  • 東 良慶, 村田 誠, 松下 紘資, 平石 哲也
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_733-I_738
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     海洋構造物の性能設計において,消波ブロック形状についてはほとんど考慮されておらず,より正確な性能照査を行うためには,消波ブロックの形状特性を評価する必要がある.本研究では3種類の消波ブロックを対象とし,開水路流れにおける傾斜堤模型周辺流れのPIV計測を実施した.これにより,ブロック形状の違いが周辺流体のエネルギー減衰に及ぼす影響を評価し,波高伝達率の算定式への反映を検討した.

     その結果,消波ブロック形状の違いにより,傾斜堤通過後の流速分布,乱れ強度(速度変動成分)分布,レイノルズ応力分布に特性の違いが生じることを示した.これらの特性を反映した形状係数Ksを波高伝達率の算定式に適用した結果,計算値と実験値との間に高い相関を有することが示された.

  • Dilan RATHNAYAKA, Yoshimitsu TAJIMA
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_739-I_744
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     Submerged breakwaters have become an appealing alternative for conventional shore protection structures due to their lower impact on the coastal landscape. These structures however cause more complicated wave-induced circulation currents and, as a result, often fail to meet the expected coastal protective functions. Although previous studies have applied two-dimensional-horizontal (2DH) nearshore current models and quasi-three-dimensional (Q3D) models with different wave-breaking and surface roller models for prediction of the circulation currents around submerged breakwaters, most of these models have failed to reproduce the observed circulation current patterns accurately. The objective of this study is therefore to investigate the applicability of multilayer nonlinear dispersive model to predict circulation current patterns under different incident wave conditions. The recently developed SWASH model was applied to a unique set of laboratory experiments, and the effect of the multilayer model was investigated. According to the experimental observations both near-bottom and near-surface mean current patterns are highly sensitive to the incident wavelength. The two-layer mode was able to reasonably capture the variation in current patterns for different wave periods, while the one-layer mode significantly underestimated the current velocities and failed to represent the dependency of the circulation current patterns on incident wavelengths.

  • 中條 壮大, 小塚 泉, 重松 孝昌
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_745-I_750
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     構造物近傍で強せん断流が生じ,外部流が貫入するような没水した多孔質体(多孔質潜堤)周辺および内部の流動について屈折率整合法による可視化計測を行った.長周期の波浪に対して波周期の異なる条件で実験を行い,潜堤上端や法肩部における強せん断流の発達過程を微視的な流動場から明らかにした.

     上部流れに比べると潜堤の内部流れは1オーダー程度小さくなる.しかし,波周期と対応した周期的流れが潜堤内部流動の水平方向および鉛直方向成分に観察された.また水平方向成分については上部流れと一定の位相差が存在することに加え,波周期よりも短く周期的な変動が観察された.せん断速度分布から不透視の流動計測では観察することのできない,潜堤上端部における強せん断流場の鉛直構造を定量的に明らかにし,波周期の違いによって上端部のせん断力の分布傾向には差が生じるが,内部で生じるせん断速度の無次元量についてはほぼ同程度と見なせることが明らかとなった.

  • 山村 雄司, 重松 孝昌, 中條 壮大
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_751-I_756
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     一方向定常流中に楕円体をその迎角を変えて設置して水理実験を行い,PTV手法を用いて楕円体周りの流れの詳細を計測した.楕円体の迎角によって後流域内の渦の形態が異なることが明らかとなった.後流域内において流速場は著しく変化し,強い乱れが生じている領域やほとんど乱れが生じていない領域が明確に存在すること,周期的な流速変動が生じている領域や組織的な変動は見られるものの周期性が明瞭でなくなる領域が存在することが明らかになった.また,これらは楕円体の迎角によっても変化することが明らかになった.乱れ強度は,水平方向成分と鉛直方向成分とでは分布形態に違いが見られ,せん断速度の分布域は水平成分乱れ強度のそれと概ね合致していることも確認された.

  • 岩佐 隆広, 二階堂 竜司, 平間 史泰, 田所 壮也, 飯島 直己, 西藤 浩二, 吉川 契太郎, 中津 隆文, 熊谷 直哉, 水野 雄三 ...
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_757-I_762
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     所定の波浪低減・海浜安定効果を満足したうえで,漁業への影響を抑制する沖合消波施設として,岸に近く設置地盤高の高い箇所への高天端の人工リーフの設置が有効と考えられる.しかし,高天端人工リーフの知見は限られており,その水理特性の解明は不十分である.本検討では高天端人工リーフを対象に平面実験を実施するとともに,既往知見と比較することで,その水理特性を分析した.その結果,水位上昇量は,天端高の影響が大きく天端幅の影響が小さいこと,堤長Lr/開口幅Wrを同一としてもWrが小さい場合は水位上昇量が大きくなること,浅い地点に設置する場合は施設沖側の地形で砕波が生じるため既往知見よりも水位上昇量が小さくなる可能性が示された.また,設置地盤高が高い場合,地形と施設による砕波が生じる複雑な条件となるため,波高伝達率は各知見の差異が大きいことがわかった.

  • 宮里 信寿, 仲座 栄三, 田中 聡, 福森 匡泰, Carolyn SHAAB
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_763-I_768
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     人工リーフの多くは,その内部を捨て石などで満たされている場合が多く,波や流れに対してほぼ不透過として作用している.そのため,その規模の大きさなども相まって潮流や沿岸流に及ぼす影響も大きいことが指摘されている.したがって,人工リーフの波の減勢効果を保持した上で,内部構造に流水機能を持たせて潮流や沿岸流などに強い影響を及ぼさないような構造を持つ人工リーフの開発が期待される.そうした構造を有する人工リーフの開発はこれまでいくつか行われいるが,未だ十分とは言えない.本論は,著者らが独自に開発している消波ブロックを人工リーフに適用し,1/5スケールの大型水槽実験及びCADMAS-SURFによる数値計算によって,その消波特性,反射率や水位上昇量特性を明らかにしている.

  • 岩田 伸隆, 加藤 史訓, 片野 明良, 大竹 剛史, 大崎 佑也
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_769-I_774
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     人工リーフの設計の手引きでは,堤長,開口幅,離岸距離の比により分類される4つの海浜流パターンが示されているが,パターンを定めた際の実験条件と既設人工リーフの諸元との乖離から,現地で想定した海浜流が発生せず海浜安定化が図られていない可能性がある.本検討は,既設人工リーフの諸元と設置前後の汀線変化の関係,海浜流パターンの発生条件,開口幅と堤脚での波長との関係を波浪変形計算,海浜流計算により整理し,人工リーフの平面配置に関して検討した.その結果,(1)堤長,開口幅といった人工リーフの平面配置の検討時には,堤脚での波長を考慮する必要があること,(2)人工リーフの設計の手引きで推奨される海浜流パターン1となる配置は海浜安定化効果があること,(3)海浜流パターン1が発生する条件等が明らかとなった.

  • 松下 紘資, 平石 哲也, 河村 裕之, 瀬口 均, 間瀬 肇
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_775-I_780
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     海上空港施設など制限表面のために護岸の嵩上げが難しい場合,天端高をそのままに天端幅を広げ,消波工と護岸の間に切欠きを設けることがある.このような特殊な形状の消波工を有する直立壁に作用する波圧特性について,不完全被覆断面の研究は多いが,切欠きの付いた消波工を有する直立壁を対象とした研究はほとんどない.本研究では,天端の後端に三角形状の切欠きのある消波工を有する直立壁に作用する波圧特性を明らかにすることを目的として,全断面被覆と2層被覆の2種類の被覆形式の水理模型実験を実施した.検討の結果,被覆形式の違いが波圧に及ぼす影響は小さいこと,消波工に切欠きがある場合の波圧は切欠きがない場合に比べて,全断面被覆で13%,2層被覆で9%程度大きくなることを明らかにした.

  • 安藤 圭, 鈴木 高二朗, 森 信人
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_781-I_786
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     津波による被災の一形態として部材破壊が挙げられるが,作用時間の極短い衝撃的な波圧に対する設計時の考え方は確立されていない.本研究では,大規模実験を実施して得られた結果を,提案した設計法に適用し,実務での利用を念頭に置いた衝撃荷重評価をする.さらに,孤立波の衝撃波圧のパラメータの推定法を提案する.その結果,規則波実験の結果から,鉄筋の降伏等の変状が発生した場合としなかった場合のそれぞれの累積分布関数を導出してワイブル分布で近似し,実務での評価基準を示した.そして,その近似曲線に孤立波実験の結果を当てはめ,整合しないデータがないことを確認した.さらに,孤立波による衝撃波圧について,4つのパラメータの推定法を提案した.

  • 岡本 大史, 大久保 寛, 笠原 宏紹, 渡部 真史, 有川 太郎
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_787-I_792
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     揚圧力や衝撃波圧の物理的メカニズムの解明について,多くの水理模型実験による研究がなされてきたが,近年では,計算技術の発達に伴い,数値計算を用いた検討が行われつつある.しかし,揚圧力のような空気の影響が大きい現象に対する数値計算の検討事例は,計算の複雑性から計算時間が膨大となるため,少ない.本研究では,桟橋を対象として水理模型実験を行い,気液二相三次元数値シミュレーションを用いた計算との比較を行うことで,非圧縮性流体を対象とした再現計算の精度と実務への応用可能性についての検討を行った.結果,時系列比較と定量的評価から,実験値を十分に再現することに対しては課題が残るが,水塊の運動量の変化を捉えることは概ね可能であった.今後,圧縮性の効果や計算コスト削減の検討が必要である.

  • 太田 隆夫, 金 洙列, 中原 修一郎
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_793-I_798
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,消波ブロック被覆堤を対象として,消波工の断面変形のモデルを用い,波浪推算の結果より設定した偶発波浪相当の波を実験において作用させて防波堤前面での波圧を計測し,断面変形と偶発波浪が作用波圧・波力に及ぼす影響を評価した.また,防波堤の滑動安定性を向上させる対策として腹付工を設置した場合を対象に,実験結果に基づいて許容し得る消波工の変形量を検討した.消波工の断面変形が大きくなると,防波堤鉛直面に作用する波圧・波力が大幅に増加し,最大の水平波力は初期断面時に比べて約5.6倍となった.腹付工を設置した実物の防波堤において,設計波では防波堤天端高の20%程度の沈下を伴う消波工断面変形に対して安定性を保持できるが,偶発波浪相当ではわずかな変形しか許容できない可能性のあることが示された.

  • 田中 敦, 鈴木 高二朗
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_799-I_804
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     複雑な形状を持つ構造物で,かつ,構造物の振動が問題となるような現象では,波圧の発生過程に影響する因子が多いこと,さらに波力に対する構造物の振動特性を明らかにする必要があることから,設計公式だけでは振動現象を明らかにするのが困難であり,水理模型実験や現地観測等が必要となる.本検討では,このような振動現象の解明にあたって実験や現地観測により時系列データを収集し,深層学習を用いることで,特定の構造物毎の波力や構造物の振動を予測することが可能かを検討することとした.波圧や振動の実験データを教師データとして深層学習モデルを構築し,実験データと比較した結果,構造物前面の水位から堤体に作用する波圧を推定できることが明らかとなった.また振動加速度も一部推定できる可能性があることが分かった.

  • 橋本 貴之, 本田 隆英, 織田 幸伸, 伊藤 一教
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_805-I_810
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     一般にモノパイル式洋上風力発電施設の杭基礎に働く波力は,非砕波の場合にモリソン式が用いられるが,砕波の場合にはモリソン式に衝撃波力成分を付加して計算されるため,過大評価となる場合がある.本研究では,大径の杭に働く波力を数値解析により直接評価し,水理実験の再現解析からその精度を確認するとともに,現行の指針による波力評価式の適用性について検証した.また,荒天時には波が杭基礎に衝突し,打ち上がった水塊が風車の羽やその他の付帯設備に衝突するリスクが考えられる.そこで,波の打上げ高の特性についても,水理実験および数値解析により検討した.

  • 高橋 研也, 佐貫 宏, 菅原 弘貴, 高土居 剛, 中村 友邦, 熊田 広幸, 千葉 直樹, 寺嶋 修平, 田中 仁
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_811-I_816
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     2016年1月に発生した南岸低気圧による時化で,太平洋側のA港には設計波クラスの波浪が来襲し,消波ブロック1層被覆式傾斜堤である防波堤の港内側被覆ブロックが被災した.本研究では,A港防波堤の現状の健全性について現況調査,水理模型実験および数値解析を通して評価をおこなった.

     その結果,港内側被覆ブロックの被災時潮位はH.W.L.以上であり,越波水塊の水脈が港内側水面に落水して空気塊を巻き込みながら激しい横渦を形成し,噴流となって港内側被覆ブロックに作用して移動するという被災特性を明らかにした.L.W.L.以浅の整積部は被災しなかった一方で,以深の乱積部上端に被災が集中し,KD値は防波堤前面における設計値の約6倍となった.乱積部上端に大きな揚圧力と法先方向流体力が同時に作用し被災したと考えられる.

  • 辻本 剛三, 山本 航, 外村 隆臣
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_817-I_822
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     浮島のように浮遊している植生群としてヘチマロンを用いた.ヘチマロンの設置形態を変化させ波浪減衰機能と岸沖断面地形変化について実験と解析,数値モデルで検討した.設置長さBと波長LのB/Lの増大と伴に波浪減衰が顕著となった.設置間隔を設けることで見かけ上のBを大きくするでき,修正された直立透水堤の透過率の解が適用できる.侵食型波浪下において,沿岸砂州の形成がより汀線近くになり,汀線の後退を著しく改善することができる.また,堆積型波浪下においては堆積機能を阻害することはない.

     境界適合座標系,Macrosopicモデル,k-ε乱流モデルを結合した数値モデルにおいて,浮体植生周辺の流動場,波浪変形,乱流諸量を算出した.実験結果との比較において反射率はほぼ同程度であり,透過率は過少となった.

  • 三井 順, 久保田 真一, 松本 朗
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_823-I_828
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     SPH法に基づく流体解析コードであるDualSPHysicsを用いて,孤立波作用時の消波ブロック群の挙動に関するシミュレーションを行い,水理実験との比較によりその適用性を検討した.水位に関しては,鉛直2次元解析から3次元解析へと接続する際に,接続地点における水粒子軌跡に合わせて造波板を動かすことにより,孤立波の伝播を精度良く解析できることが確認された.消波ブロックの移動に関しては,SPH法の境界条件にDBCを適用する場合,ブロックを構成する壁粒子と流体粒子との間に隙間が生じることにより,ブロック間の空隙に水粒子が入り込まず,ブロックに作用する流体力が正しく計算されないという問題が生じた.その対策として,生じる隙間の分だけ物体形状を縮小して壁粒子を作成することが有効であることが示された.

  • 倉原 義之介, 小泉 博之, 西山 大和, 原 知聡, Ain Natasha Balqis , 武田 将英
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_829-I_834
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     鋼板セル据付け時の起重機船および鋼板セルの動揺を現地計測し,動揺特性を考究した.起重機船はRTK-GPS,鋼板セルは自動追尾式トータルステーションを用いて,それぞれの位置を直接計測した.これにより,従来の加速度と角度の計測では難しかった数分間の長周期成分を含む動揺を計測することが出来た.着底前の大部分が水中に没した鋼板セルは,2分程度の長い周期で1~2m程度水平方向に動揺していることが分かった.計測した長周期の動揺が鋼板セル据付けの作業性に大きな影響を持つことが示唆された.また,鋼板セルのように一部が水中にある吊荷の固有周期が,水中での浮力と付加質量を考慮することで概ね計算できることを示した.起重機船ジブトップと鋼板セルの振り子運動の固有周期が鋼板セルの動揺に大きく関係することを示した.

  • 平山 克也, 濱野 有貴, 西受 由裕, 関 克己
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_835-I_840
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     船舶が頻繁に往来する航路に面した岸壁等でより実態に近い荷役稼働率を算定するためには,港外から伝播した常時波からなる港内波浪場に,航跡波が重畳する影響を考慮する必要があると思われる.本研究では,著者らが開発した航跡波造波モデルを備えたブシネスクモデルを用いて,港湾域における1年間のAISデータから抽出した代表19船舶諸元(1765隻中1608隻)及び代表航路(入港時,出港時)に基づき航跡波を算定し,別途算定した対象岸壁前面での当該1年間の港内波の出現頻度に反映させることにより,延べ8480回寄港した船舶による航跡波を考慮した荷役稼働率を算定した.

     当該岸壁を利用する鉱石運搬船50,000DWTに対し標準解析法により算定した荷役稼働率は,航跡波を考慮しない場合に比べ,数%低下することが確認された.

  • 加藤 史訓, 福原 直樹
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_841-I_846
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     海岸堤防・護岸の高さは設計波に対する必要高を設計高潮位に加えて設定されていることから,高潮・高波時に波が堤防等に打ちあがっている高さを予測することは越波による浸水被害の軽減に資する.このため,国土交通省では,海岸の地形・施設形状データと気象庁の潮位・波浪予測値を用いて,全国約100地点のうちあげ高を予測するシステムを試験運用しているが,うちあげ高の常時観測を行っている箇所がないため,うちあげ高予測の現地検証は限られた地点・期間しか行われていなかった

     2019年台風19号による周期の長い高波が観測された駿河湾及び相模湾を対象に,うちあげ高の現地観測結果を用いてうちあげ高予測の検証を行った.その結果,海底勾配に応じてうちあげ高算定式を選択することにより,台風接近時のうちあげ高を精度良く予測できることが確認された.

  • 山城 賢, 山田 翔喜, 古賀 健太郎, 児玉 充由, 上久保 祐志, 横田 雅紀
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_847-I_852
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,海岸構造物での越波にともない発生する飛沫(越波飛沫)の発生過程を解明することを目的に,断面2次元造波風洞水路を用いた可視化実験を行った.水路内に直立護岸の模型を設置し,不規則波と風を同時に作用させて,不規則波中の特定の個別波による越波飛沫の発生状況を可視化して高速度カメラで撮影した.対象とした波は不規則波中の打上げ高と越波量が異なる4つの個別波で,それぞれ風速が異なる3ケースについて計測した.撮影した画像から,打ち上がった水塊が風によって膜のように広がり,最終的に破裂して小さな飛沫が多数発生すること,打上げ高が高く風速が大きいほど,多数の微小な飛沫が発生し広い範囲に飛散することなど,越波飛沫の発生過程に関する多くの知見を得た.

  • 徳永 正吾, 黒澤 一真, 渡部 真史, 有川 太郎
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_853-I_858
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,台風時における船舶の漂流予測精度向上を目的とし,2019年台風15, 19号時に東京湾に所在していた船舶の規模と移動距離の関係性を整理し,数値解析による衝突船舶の規模,移動距離,風場から停泊位置を変えた場合の検討を行った.AISデータ分析からは,船舶規模が小さいほど漂流距離が長い傾向がみられた.一方で数値解析においては概ねの漂流方向,衝突地点は再現できたものの,漂流の時々刻々の軌跡については再現に至らなかった.平均風速,風向きについては計算上再現されていることから,局所的な風が影響していると推測され,漂流予測精度向上のためには,地形の影響等による局所的な風場の再現性の確保が重要と考えられる.また,停泊位置を変えた場合の検討では,当時の漂流距離,風場を考慮すると衝突は免れる結果となった.

  • 工代 健太, 佐々 真志, 梁 順普, 高田 康平
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_859-I_864
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     吸い出しによる空洞陥没を地表面の変位観測により予知する手法の検討を目的に,地盤内の空洞の位置及び規模と地表面変位の大きさ及び範囲の関係性について大型吸い出し可視化実験により研究した.その結果,サクションが異なる裏埋砂ごとに地盤内の空洞と地表面変位の発達過程に密接な相関関係があることを明らかにした.また,地下水位が高く空洞近傍でサクションが低下する時点で地表面変位の範囲内で陥没が生じることを示した.フィルター材を用いた吸い出し抑止法の確立に向け,様々な粒度の裏埋砂に対し,フィルター材との中央粒径比を変化させた系統的な要素試験及び大型実験を行った.その結果,裏埋砂とフィルター材の均等係数が共に3以上の場合,中央粒径比25以下で強い水理外力下においても十分な吸い出し抑止効果を発揮することを実証した.

  • 村岡 宏紀, 中村 友昭, 趙 容桓, 水谷 法美
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_865-I_870
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     消波ブロック被覆堤の被災要因の一つであるマウンド下部の砂地盤の侵食現象に関して,1/55.8スケールの小型実験と1/4スケールの大規模実験の異なる2つのスケールの水理実験を対象とした数値解析を実施し,侵食現象の時間縮尺に与えるスケールの影響を検討した.水理実験結果との比較より,小型実験では水位変動と平均流の観点から,大規模実験では流速変動の観点から,数値解析の再現性を確認した.また,小型実験では,マウンド内部の平均流がマウンド全域で沖向きになるまでと,防波堤周辺の波動場が定常状態に至るまでに要する時間が長くなり,大規模実験と比べて砂地盤の侵食を過小評価したこと,またそのために砂地盤の侵食が大規模実験と同程度の深さに至るまでに要する時間が,Froude則で換算した時間よりも長くなった可能性が示唆された.

  • 五十里 洋行, 後藤 仁志, 丹羽 元樹, 藤原 聖史
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_871-I_876
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     大規模な津波が海岸堤防を越流すると,被覆ブロックの孔部からフィルター材や堤体材料が吸い出され,最終的に堤防裏法の全面的な崩壊に繋がり得ることが既往の水理実験によって報告されている.しかし,非常に複雑な底面境界上の高速流であることから,ブロック周辺の流れ場を詳細に計測された例はない.本研究では,粒子法を用いて3D数値シミュレーションを実施し,本現象における流れ場の特徴を計算結果から明らかにする.また,球に置換したフィルター材の運動を個別要素法で解き,フィルター材の吸出し過程を模擬するとともに,吸出しの発生要因を計算結果に基づいて考察する.計算は,被覆ブロックの配列を変えた開孔率の異なる2ケースで行い,ブロックの配列がフィルター材の吸出しに及ぼす影響についても検討する.

  • 酒井 大樹, 辻本 剛三, 金澤 剛, 神田 泰成
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_877-I_882
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     施工途中の捨石堤に台風等による高波浪が作用し,被災することが現場で問題となっている.しかし,施工中の捨石堤に着目した研究は十分ではなく,捨石堤の被災過程や変形特性については不明瞭な点が多い.そこで本研究では,施工途中の捨石堤の被災変形特性について検討した.天端高の低下は,天端幅が広いケースで緩やかになり,沖側への被災は波が作用してから1時間(現地換算)でピークを迎えた.統計学において分布形状の非対称性を示す歪度で捨石堤形状の評価したところ,波形勾配H1/3/L > 0.03では常に岸側に歪んだ形状となることがわかった.捨石堤の変形形状に関しては,天端幅と波長の比である相対天端幅WT/L ≒ 0.025で歪度が正となり,WT/L > 0.075で歪度が負となることがわかった.本研究結果は,現地において施工中に被災を受けた捨石堤の被災メカニズムを把握するための一助となることを期待する.

  • 小山 宏人, 前田 健一, 鈴木 悠真, 安江 絵翔, 丹羽 俊介
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_883-I_888
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     洋上風力施設の基礎として期待されるスカートサクション基礎の貫入制御には,浸透流による基礎貫入時挙動のメカニズムを理解することが重要である.本研究では,小型模型実験を実施し,基礎の沈下現象を観察した.また,地盤内の浸透流が引き起こす支持力低減作用の理解のため,三次元浸透流解析を実施し考察を行った.実験結果より,サクションに起因する貫入力で貫入量を定量化し,効率的な貫入制御ができることが明らかとなった.一方で,自重による初期貫入量が不十分だと地盤の弱部から局所的に噴砂が発生し基礎の貫入を困難にした.浸透流解析結果から,基礎貫入は基礎先端近傍地盤の流動化と密接な関係があり,基礎を回り込む浸透流を制御することが重要であることが明確になった.

  • 福原 直樹, 加藤 史訓, 南部 卓也, 五十嵐 雄介
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_889-I_894
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     高潮や降雨の発生直後は,堤体下の地下水位が上昇し,地震に対する液状化リスクは高まることになる.そのため,河川堤防においては地下水位計による連続観測を推奨しているが,海岸堤防においては,維持管理費等の制約から地下水位計による連続観測は困難な状況にある.

     本研究では,高潮や降雨の発生直後における海岸堤防の液状化リスクの把握を目的とし,海岸堤防下の地下水位に影響を及ぼす因子を検討するとともに,短期間の地下水位観測値と入手が容易な雨量等の観測値を基に簡易に海岸堤防下の地下水位を推定する手法について検討を行った.その結果,地下水位に影響する主因子として天文潮位,潮位偏差及び降雨が示唆され,それらを説明変数として作成した地下水位推定式は,液状化リスクの評価に対して十分な精度を有していることが確認された.

  • 安達 昭宏, 中川 耕三, 北澤 健二, 山本 修司
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_895-I_900
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/04
    ジャーナル フリー

     摩擦増大用アスファルトマットは,防波堤などの重力式構造物の底面に設置して滑動抵抗力を増大することで,工費と工期の縮減に寄与する材料である.しかしながら,供用中は不可視部分となるため調査が難しく,今後の設計耐用期間の評価が難しい.本研究は,海水中におけるアスファルトマットの物性変化の有無を調査するため,昭和44年から,供試体を海水中に浸漬して試験を行ってきており,今回暴露開始から50年経過した試験を実施したものである.その結果,供試体の経年変化は生じておらず,摩擦増大用アスファルトマットは海水中で50年以上の長期耐久性があることを確認した.

feedback
Top