大学改革・学位研究
Online ISSN : 2758-3716
Print ISSN : 2758-3708
24 巻
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巻頭言
招待論文
  • 奈良 信雄
    原稿種別: 招待論文
    2023 年 24 巻 p. 1-12
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    2010年のアメリカECFMGによる通告を機に,2015年に日本医学教育評価機構(JACME)が発足し,全82医学部の参加を受けて医学部教育の評価を実施している。2017年には,JACMEは世界医学教育連盟から国際的に通用する評価機関としての認証を受け,わが国の医学部教育が国際的に通用するための教育の質改善・向上を目指している。2022年6月1日現在で63医学部の認定を行っており,その過程で日本の医学部教育における特色や優れた点をさらに発展させて他医学部の参考になるように支援し,課題には改善を求めて医学部教育の改善・向上を促している。その結果,臨床実習の改善を始め,わが国の医学部教育の質向上が図られてきている。

    本稿では,JACMEが発足した経緯をとりまとめ,医学教育分野別評価のもたらした効果を検討した。

  • ―制度改革への組織対応―
    山本 清
    原稿種別: 招待論文
    2023 年 24 巻 p. 13-28
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    国は国立大学の改革として法人化以降,財政制約の下,重点支援による類型化,成果志向の運営費交付金配分や指定国立大学法人制度の導入,さらには複数の大学を擁する国立大学機構の創設などを実施してきた。これらの動きは,制度論では,政府論理,ビジネス論理及びアカデミック論理を国立大学法人の組織論理に適用するものと理解できる。特に,ビジネス論理が政府論理に支えられる形式で法人のガバナンスや経営に適用されるようになり,3つの組織原理が相互に補完・依存する関係になっておりハイブリッド化が進んでいる。大学ファンドによる国際卓越研究大学も国の財政負担を少なくして基金を創設して運用益を支援するものであり,ビジネス論理による政府論理の適用であり,アカデミックの活動を改善しようとする。しかしながら,3つの組織論理は競合するものであり,より個別化を推進する方策が成功するか検証することが必要である。

  • 奥野 武俊, 中田 晃
    原稿種別: 招待論文
    2023 年 24 巻 p. 29-43
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    一般財団法人大学教育質保証・評価センターは,2019年8月21日に大学を評価対象とする機関別認証評価機関として文部科学大臣により認証され,最初の2か年度において合計12大学の評価に取組んできた。本稿では,認証評価制度が始まってからすでに三巡目の評価が取組まれていた時機に,一つの大学団体が,重要な受審先の評価事業の廃止への動きを危機と捉え,受審大学の立場から大学の質保証や認証評価の課題に取り組んだ経緯を振り返る。そのうえで,周回遅れで設立に至った新たな認証評価機関の評価の姿を概括し,新たに見えつつある認証評価制度の可能性について展望する。

研究ノート・資料
  • ―高等教育での目標管理と大学統制―
    竹中 亨
    原稿種別: 研究ノート・資料
    2023 年 24 巻 p. 45-63
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/31
    [早期公開] 公開日: 2023/01/11
    ジャーナル フリー

    業績協定はドイツでは,2000年前後に高等教育で規制緩和が実施された後,広く用いられるようになった。業績協定は,大学が追求すべき業務目標を教育省との間で契約として約定し,事後に達否を検証して,結果をその後の資源配分に反映させるものである。その点で,わが国の国立大学の中期目標・中期計画と類似したものである。

    本来は,目標管理のツールたる業績協定は成果連動の資源配分の一環をなす。但し,高等教育では,その特性のために厳密な成果測定は困難なため,業績協定は資源配分面の影響力は小さい。しかしこの制約にもかかわらず,ドイツでは業績協定が広く用いられている。それは,業績協定に学内外の対話と経営戦略化の役割が期待されているからである。これは,ポストNPMの大学統治に向けてわが国にも大きな示唆を与える。

  • ―戦後日本の「学長のリーダーシップ」に関する政策文書の分析―
    齋藤 崇德
    原稿種別: 研究ノート・資料
    2023 年 24 巻 p. 65-80
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,「リーダー主義」論を概観するとともに,「リーダー主義」の日本における展開を歴史的に跡付けることで戦後日本の大学経営の政策に関する新たな視点を提示することにある。近年,学長のリーダーシップについての議論が盛んであるが,本稿ではその実態ではなく,その言説に着目し,学長のリーダーシップがどう位置づけられてきたのかを分析する。このことによって実際のリーダーシップとリーダーシップ論との乖離を前提としながら,近年のリーダーシップ概念の混乱を整理し,もって戦後日本の大学経営に関する理念が持つ特質の一端を明らかにする。このため西ヨーロッパで発展してきた「リーダー主義」の議論を参照し,戦後日本の歴史を分析する。結果として,三八答申から四六答申にかけて確立した学長のリーダーシップについての三つの命題がその後も継続したことが明らかになった。ただし,その文脈は歴史的に変化してきた。このことはリーダーシップの歴史・社会的な相対性を意味している。

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