大学改革・学位研究
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研究ノート・資料
  • ―私立大学等改革総合支援事業タイプ1を事例とした統計的因果推論を用いて―
    松宮 慎治
    原稿種別: 研究ノート・資料
    2024 年 26 巻 p. 1-14
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    本稿では,私立大学の補助金申請行動を社会学的新制度論によって解釈することを通じて,各種改革に応答する大学の“本音”と“建前”のありようの一部をデータから照射することを試みた。そのために,私立大学が補助金申請行動を選択するさいの認識について,私立大学等改革総合支援事業タイプ1を事例として,社会学的新制度論の嚮導概念である「脱連結」と「同型化」を援用し,申請行動とのギャップを統計的因果推論から実証した。結果からは,私立大学等改革総合支援事業タイプ1に対して,表向きは政策的要請に沿いつつ,実質的な活動は従来どおりとする「脱連結」は行われておらず,むしろ従来の活動に合致する場合に,申請行動を選択していることがわかった。また,政策的要請に黙従する「同型化」による申請行動もなされていなかった。よって,私立大学は相応に行動選択の余地をもっていると考えられる。ただし,政策的介入に対して身の丈に合う応答しかできないとすれば,各種補助金事業は大学間の相対的な位置を変更する機能をもちえず,かえって歴史的経路依存を維持・強化したり,組織の行為能力を超えるような取組みが受容されがたかったりする可能性がある。

論文
  • ―自主性と現実の狭間で―
    原田 健太郎, 島 一則
    原稿種別: 論文
    2024 年 26 巻 p. 15-29
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    2000年代以降に拡大した競争的資金は,個人を対象とするものから大学を単位とするものまで多様化している。その目的も,研究を支援するものから,グローバル化や教育力の向上,更には地域貢献機能の強化といった形で同じく多様化している。

    本稿では,これらの政府からの競争的資金の配分結果(現実)を通じて,政府により各国立大学の「自主性」のもとでの機能分化という形で,実質的な種別化を推し進められたプロセスについて検討する。すなわち,競争的資金の公募に採択される(もしくは採択されない)ことを通して,各大学が自大学の機能や役割についての自己学習とそれに基づく自己規定を行い,その結果として大学の機能分化が「自主的に」進行するとともに,2010年代には大きな抵抗もなく,実質的な国立大学の種別化が進められたプロセスを明らかにする。

研究ノート・資料
  • ―実務家教員養成課程修了生調査の結果から―
    日下田 岳史, 谷村 英洋, 小島 佐恵子, 橋本 鉱市
    原稿種別: 研究ノート・資料
    2024 年 26 巻 p. 31-49
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    博士学位を授与する大学院という既存の養成ルートを経ない実務家教員の登用は,古典的な専門職としての大学教員のあり方に変容を促す契機になりうるものである。そうした変容の兆候の有無を探るべく,本稿は,実務家教員を目指す人たちの属性と,その人たちが抱いている大学教員の仕事に対するイメージを,質問紙調査によって検討した。分析の結果,調査時点において実務家教員を目指す人たちの1つの典型像は,「バブル崩壊前に学生時代を過ごしてから就職し,長期不況に直面しながらも,社会的経済的地位の観点では一定の成果を挙げた高学歴の男性」というものであり,教育志向が強いということが明らかになった。大学教員の仕事に対するイメージは多岐に渡るが,本稿が持つ問題意識という観点から見て特筆するべき知見は,教育と研究の専門職である大学教員が持つべき教育能力が大学院において如何に育まれ,教育現場でどのように成長しているのかという問いが,実務家教員を目指す人たちから投げかけられているということである。

  • ―1900年代のNorth central associationにおける議論に着目して―
    吉田 翔太郎
    原稿種別: 研究ノート・資料
    2024 年 26 巻 p. 51-66
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    本研究の目的は,1900年代の地域別団体におけるカレッジのアクレディテーションをめぐる議論を明らかにすることにより,アメリカにおけるその起源に関する考察を加えることである。具体的には,アクレディテーションを最初に実施したとされる北中部協会(NCA)の年次総会報告書に基づき,諸大学団体の議論も参照しながら,実施に至る過程を明らかにした。その結果,NCAでは,中等学校と高等教育機関の中間的性格を持つ機関の関係者からカレッジのアクレディテーション実施が提言され,大学関係者は,諸大学団体における標準化の議論も参照しながら主体的に議論を行い,アクレディテーション実施のための基準を策定していったことが明らかになった。この知見は,NCAでは中等学校関係者から提言がなされ,当初大学関係者の動きが芳しくなかったという先行研究の見直しをはかり,アメリカにおけるアクレディテーションの起源の理解を拡張するものである。

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