2000年代以降に拡大した競争的資金は,個人を対象とするものから大学を単位とするものまで多様化している。その目的も,研究を支援するものから,グローバル化や教育力の向上,更には地域貢献機能の強化といった形で同じく多様化している。
本稿では,これらの政府からの競争的資金の配分結果(現実)を通じて,政府により各国立大学の「自主性」のもとでの機能分化という形で,実質的な種別化を推し進められたプロセスについて検討する。すなわち,競争的資金の公募に採択される(もしくは採択されない)ことを通して,各大学が自大学の機能や役割についての自己学習とそれに基づく自己規定を行い,その結果として大学の機能分化が「自主的に」進行するとともに,2010年代には大きな抵抗もなく,実質的な国立大学の種別化が進められたプロセスを明らかにする。
抄録全体を表示