本研究は「後発国における制度の借用と移転」という分析視点から,中国の学位制度の歴史的変遷を考察する。清末から現代までの各時期において,中国が日本,欧米,ソ連などの外国モデルを借用し,それを自国の政治体制や社会文化的背景に基づいて変容させてきたプロセスを分析する。特に,参照モデルの変遷,政治体制の転換,そして「中国的特色」追求の国家意思がいかに複雑に絡み合いながら,制度の断絶,再編,そして独自性の模索というダイナミックな軌跡を辿ってきた点を解明する。本研究では,この特徴的なプロセスを詳細に明らかにすることで,後発国における制度形成および制度の移転研究に対して,理論的・実証的貢献を行う。
本研究は,社会構想大学院大学・実務家教員養成課程の修了生調査を利用して,同課程の学びとその成果,及び両者の関連について分析(同調査を活用した先行研究の調査を含む)を行い,以下の知見を得た。第一に,研究方法に関する主観的な学習達成度や,研究能力の向上実感が,相対的に低かった。第二に,実務家教員被採用率は,非常勤職,専任職の順に,21.1%,7.2%であった(日下田ほか 2024)。第三に,(1)実務家教員被採用経験に有意な直接効果を及ぼしているのは,教育指導力に関する向上実感であった。(2)実務家教員被採用経験を持つ人は,教育・研究倫理に関する主観的な学習達成度を低く見積もっていた。第四に,博士学位を持つ人は,専任の実務家教員に採用される可能性が有意に高かったが,非常勤の実務家教員に採用される可能性が高まる効果は検出されなかった。第五に,(1)実務家教員の被採用条件に,研究者教員が実務家教員に求める能力が表れており,(2)専任の実務家教員に限って博士学位を求めるという点に,大学教授職としての専門職性の維持と,大学教授職の多様化を求める政府への対応という,研究者教員の戦略が表れているとの解釈が示された。
多くの大学では機関別認証評価と内部質保証が行われている。それに対して詳細な外部ピアレビューである分野別質保証は教育効果がきわめて高い手法であるが,限られたプログラムでしか実施されていない。分野別質保証は社会ニーズにマッチした教育,国際通用性,個々の学生の学力向上をもたらす。特に地質学分野では,分野別質保証の認定を受けたプログラムが毎年多くの地質技術者を輩出するなど,教育の質とともに人材供給面でも成功している。各大学において,分野別質保証に参加するプログラムが増えて,厳格な審査を経験した教員がそれぞれの大学の質保証に協力することで,各大学の内部質保証が向上すると期待される。
大学改革支援・学位授与機構は2004年の国立大学の法人化以降,国立大学及び大学共同利用機関の教育研究活動の評価を中期目標期間終了時に実施している。また,毎回の評価終了後には,評価システムの検証を通じた改善へ向けて,評価を受けた法人を対象にアンケートを行なっている。本研究では,そのアンケートの中から法人の第1期から3期までの「達成度評価による効果・影響について」と「今後期待する法人評価の方向性について」の回答を抜粋し,2009年から2023年までの各評価後に実施された5回のアンケート調査を元に縦断的な比較分析を行った。これにより,法人評価に対する大学等の認識の推移について考察した。さらに,回答傾向は法人の置かれた状況,特に競争的な要因の強さにより影響を受けることが予想されることから,法人の所在する都道府県の学生の流入出の状況に着目し,回答傾向に違いが見られるかについても検討を行った。
近年,AIやグリーン経済への移行に伴い,新たなスキルへの需要が顕在化する中で,マイクロクレデンシャルへの関心が国内外で急速に高まっている。短期・特化型の学習成果を証明するこれらの資格は,多様化する学習機会を背景に,教育と職業の接続や国際的な相互運用性の観点から注目を集めている。特に近年は,ノンフォーマル学習の承認制度の進展とともに,各国の「資格枠組み」がマイクロクレデンシャルの質保証と通用性を支える基盤として重要視されている。本稿では,「資格枠組み」をめぐる国際的な政策動向と各国の取組を分析し,日本における制度設計の課題と今後の可能性を考察する。
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